JAXA・宇宙航空研究開発機構など200の研究機関へのサイバー攻撃にかかわったとして、20日、中国共産党員の30代の男性が書類送検された。男性は2016~2017年、日本国内のレンタルサーバーを偽名で契約、不正に取得したIPアドレスを中国のハッカー集団「Tick」に転売した疑いがもたれている。
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そして、その背後にいるのが、日本や韓国へのサイバー攻撃を担うとされる中国人民解放軍の「61419部隊」だといい、警視庁公安部は「Tickはほぼニアリーイコールで人民解放軍と思ってもらっていい」としている。こうした疑惑に対し、中国外務省は「十分な証拠を示すべきで、勝手に推測すべきではない」と反発した。
中国によるサイバー攻撃については、アメリカのブリンケン国務長官が先月、「わが国に対するサイバー攻撃、我が国の同盟国に対する経済的恫喝も議題とする」と懸念を示している。
今回の報道について、戦略科学者の中川コージ氏は「Tickに限らず、人民解放軍は半分軍隊、半分民間企業のような組織を大量に使いながら諜報活動を行っている。書類送検された男性は中国共産党員だったということだが、もし人民解放軍もしくは武装警察の人間だとすれば大きな問題だが、そうでないとすれば常態的な活動だと思う」と指摘する。
「もともと米中の間でも常にアタックとアクティブディフェンスが行われているので、今回のサイバー攻撃が特段新しいというわけではない。どちらかと言えば、なぜ今、日本でこのような発表があったのか、ということを考える必要があると思う。日米首脳会談で中国に対しては一蓮托生でやっていくというような話が出たり、訪中したケリー特使が“G2構造”にうまく持っていけなかったりする中、中国は福島第一原発の処理水に関するプロパガンダなどで日本を叩いている。それに対する報復というか、情報戦をしなければならないという事情もあったのではないか」。
また、株式会社BLUE代表取締役の篠田佳奈氏は「中川さんのお話にもあったとおり、この事件そのものは数年前のことだし、留学生を使ったケースも、昔からあったと聞いている。また、諜報活動ということであれば直ちに戦争行為ではない。エビデンスも状況証拠だけしかないので、不正アクセスについての抗議はできるが、なかなか難しい」と話す。
「そもそも何をサイバー攻撃とみなすかというコンセンサスがなく、まさに議論をしているところだ。そして、戦争をしないため、振り上げた拳をどうやって下げるのか、下げさせるのか、そのための国際法の整備も必要だ。アメリカやイスラエル、そして中国やロシアも広い意味では“有事”の最中なので、セキュリティのための投資や兵員も増やすことができる。その点、日本ではそうでないし、そもそも憲法では戦争をしないと謳っている以上、大手を振ってそこにリソースをつぎ込むことは難しい。そういう中で、オリンピックという起爆剤を使って、頑張って体制を作ったと思っている。
一方で、海外からは人材を増やしたはいいが、雇用先がないという問題も聞こえてくる。日本の場合、安全に対して非常に敏感な国民性もあるので、民間のリソースをフル活用してきたし、世界的に見ても非常に優秀なプロジェクトもあった。今もISPのNTTとセキュリティ企業のFFRIが協力して教育のための企業を立ち上げ、雇用を生み、サイバー上での環境を保とうとしている。そういう動きは非常に日本的だと思うし、それによって防げることもたくさんあると思う。攻撃だけがアクティブなものではない」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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