“宇宙ごみ”除去 先導する日本のスタートアップに脚光「先駆者として市場開拓を」
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 22日に打ち上げ予定だった、宇宙飛行士・星出彰彦さんが搭乗するスペースX社の新型宇宙船。星出さんが搭乗予定のクルードラゴンは既に発射台にあるが、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、緊急脱出時の波の高さに懸念があるとして、日本時間の23日午後6時49分に打ち上げを延期。現地では打ち上げに適した天気になると見られ、国際宇宙ステーションにおける星出さんの今後の活躍が期待されている。

 一方、宇宙空間では、長年抱えてきた深刻な問題がある。宇宙利用に伴い、年々増え続けているスペースデブリ(宇宙ごみ)だ。実際に軌道上に宇宙のごみが散らばっていることで、人工衛星同士が衝突したり、ロケットが衝突したりという問題がすでに起きている。

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 NASAによると、現在地球周辺の軌道上には、直径10cm以上のスペースデブリが3万4000個以上あるといわれ、長年問題が指摘されているものの、解決に向けた大きな動きが進んでいない。遠い宇宙の話だが、このまま放置すると人工衛星を活用している天気予報や通信、GPSなど、今では生活に欠かせないシステムに影響を及ぼす可能性がある。

【映像】希望が空へ…“宇宙ごみ”回収用の衛星「ELSA-d」打ち上げの瞬間(2分ごろ~)

 アストロスケールは、そんなスペースデブリ除去サービスの開発に取り組む日本のスタートアップ企業だ。今年3月には、スペースデブリ回収用の衛星「ELSA-d」を打ち上げ、実現に向けた検証を開始。衛星を使って、一体どのように宇宙ごみを回収するのだろうか。

 アストロスケールのマーケティング部・倉石英典さんは取材に対し「捕獲したごみは大気圏で焼却する」と話す。

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「衛星は『模擬デブリ』とそれを捕獲する『サービサー』を一対で打ち上げ、それを宇宙空間で着脱、外します。模擬デブリをサービサーが探しに行って、捕獲する。その後、軌道から外して、最終的には大気圏で焼却する。これが一連の動きだ。想定としては、これから打ち上がる衛星にプレートをつけて、衛星の役割が終わったとき、プレートにめがけてうちの衛星(サービサー)が捕まえに行って、一緒に落として焼却する。これからの衛星がデブリ化しないような仕組みを今回実証している」

 さらに、実際に回転しながら移動するスペースデブリを想定し、その回転を計算し、捕獲する実証実験にも挑戦するという。イメージ映像では簡単に見える作業だが、現場は宇宙空間。およそ秒速7kmという、とてつもないスピードで移動する物体を捕らえる難しいミッションだ。

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 しかし、倉石さんは「宇宙でやるのは発表会みたいなものだ」と自信を明かす。

世界初の今まで開発できなかった技術を今回実証する。もう地球上でシミュレーションを何度も重ねて開発していて、宇宙に持って行って実証実験をやるのは、発表会みたいなもの。非常に高い成功率に自信を持っている」

 アストロスケールが目指すのは持続可能な宇宙、そして先駆者としての市場の開拓だという。倉石さんは「これからいろいろなビジネスの機会を広げていきたい」と意欲を示す。

「使わなくなった衛星を改修する事業モデルの次は、JAXAと一緒に実際の宇宙ゴミを回収するサービスを提供したい。軌道上サービスと呼んでいるのですが、たとえば、軌道上にあがっている衛星に対して、いわゆるロードサービス、高速道路におけるJAF(日本自動車連盟)のようなサービスを提供できないか考えています」

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 年々深刻化する宇宙ごみ問題に、アメリカ国防総省も「宇宙ごみを除去する企業には“トン単位”で報酬を支払っても構わない」と明言。『WIRED』日本版編集長・松島倫明氏は「アストロスケールの取り組みを紹介したこの『WIRED』の記事は、もともとは米国版『WIRED』がオリジナル。海外でも注目されている証拠だ」という。

「今、宇宙はすごく混んでいて、まさに“3密”の状態。民間企業のスペースXやブルーオリジンなどによって民間の宇宙旅行が始まろうとしている時代だ。さらには、これから衛星インターネットのための人工衛星を何万という単位で打ち上げようとしていて、地球の周回軌道はますます混むなかで、アストロスケールの技術は世界的に注目されている」

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 宇宙利用が民間にも進み、ますます増えると言われているスペースデブリ。松島氏は「これまで人類は、何も考えずに宇宙にごみを捨て続けてきた。このまま本当に捨て放題でいいのか、人類がようやく気付いた」と述べ、「高速で飛ぶ物体を捕獲して回収する技術は、宇宙ごみの問題だけではなく、より高度な技術にも応用が可能だ」と実用化への期待を明かした。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】“宇宙ごみ捕獲”に挑むベンチャー企業
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