「お風呂が沸きました」ノーリツの音声とメロディーが“音商標”登録 審査基準が厳しいとの指摘も、重要な“バランス”
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(3枚)

 お風呂が沸いたことを知らせるメロディーと、「お風呂が沸きました」という音声。株式会社ノーリツの販売する給湯器から流れるこの音声とメロディーの組み合わせが今年3月、クラシック音楽を含む音声としては初めて“音商標”として商標登録された。

【映像】「お風呂が沸きました」の音声とメロディー

 目が不自由な人のお風呂沸かしの不便さを解消するために、1997年からノーリツが給湯器のリモコンに搭載したこのメロディー。2017年の出願から4年越しでの商標登録となった。

 企業のブランド戦略の多様化を支援するため登録が始まった、音楽、音声、自然音等からなる聴覚で認識される商標“音商標”。2015年から登録が開始され、これまでには飲料メーカー・伊藤園の「おーいお茶」や、製薬会社・大正製薬の「ファイトーイッパーツ」など、2019年までに666件が出願され、289件が登録されている。

「お風呂が沸きました」ノーリツの音声とメロディーが“音商標”登録 審査基準が厳しいとの指摘も、重要な“バランス”
拡大する

 企業の戦略において大きな役割を果たす”音商標”。大きな期待がかけられる一方で、厳格な審査基準により登録が難しくなっているとの指摘も。マツモトキヨシホールディングスが2017年に出願した「マツモトキヨシ」というフレーズを含む自社のCMメロディーが、他人の氏名を含む商標は登録できないという理由から拒絶。去年10月、マツモトキヨシホールディングスはこの状況を不服として知財高裁に提訴した。

 そもそも、なぜ企業は商標登録にこだわるのか。著作権などに詳しい弁理士の栗原潔氏は、企業が商標登録を行うのは「保険的な意味合いが強い」と話す。

 「商標登録をすると独占使用できる、簡単に言うとパクリを防げる。パクられてから後で慌てていてもしょうがない。事前に取得しておくことでパクリを防ぐ保険的な意味合いがあって、会社として大事だと思うのであれば取得しておくことに意味がある。これは防衛的な意味でも非常に重要」(栗原氏、以下同)

 その上で、マツモトキヨシのように同姓同名が多く存在する名前が含まれている商標の登録は「事実上不可能だ」との見解を示す。

「お風呂が沸きました」ノーリツの音声とメロディーが“音商標”登録 審査基準が厳しいとの指摘も、重要な“バランス”
拡大する

 「『ファイトーイッパーツ』とか『おーい、お茶』は言葉として単独で機能しているので、音商標としてもそのままほぼ問題なく登録される。『マツモトキヨシ』というあのCMのメロディーが特許庁で拒絶されて、いま裁判で争っているところ。音商標であるか以前に、同姓同名の名前を含む可能性がある商標は登録されないという規定が商標法にある。CMのメロディーを出願されているわけだが、『マツモトキヨシ』って同姓同名がいっぱいいる、その人の許可がないと登録できないという、特許庁の厳しい運用が課されて拒絶になってしまった。ちょっと“無理ゲー”というか、事実上不可能だ」

 今後もますます数が増え続けると思われる商標登録。栗原氏は「大事なことはバランスを取り、全ての人にとって不利にならないようにすることだ」と話す。

 「ある程度の規模の企業で防衛的な出願にも予算を使えるところは、今後も出願を続けていくと思う。安易に『はい、商標登録』という形で安請け合いしていると、かえって不公平になってしまうので、その辺でハードルが高いのはしょうがない。知財制度はバランスの問題なので、特定の人に有利とか不利にならないように、そのバランスの一つがこういう形で現れるというふうに思う」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

慶大生が“性的同意ハンドブック”作成
慶大生が“性的同意ハンドブック”作成
この記事の写真をみる(3枚)