混乱相次ぐワクチン予約「先着順よりも“抽選制”を」 経済学の専門家が分析
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 新型コロナウイルスのワクチン接種が全国で続々と始まっている。11日、河野大臣は予約の電話が繋がりにくくなっていることに触れ、「電話一件当たり平均して15分ぐらい時間がかかっている」と報告。電話をかける際には手元に接種券を用意するなどして通話時間が短くなるよう、協力を呼びかけた。

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 また、NTTをはじめ、通信各社は接種予約の電話が混み合った場合、予約受付番号への通話を制限するとしている。

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 一部で混乱が起きているワクチン接種の予約方法について、慶応大学経済学部の栗野教授は「電話やネット申し込みによる早い者勝ちではなく、接種会場や日時を第3希望までとった上での抽選による予約が望ましい」と指摘。コロナ禍に起きた、ある出来事が教訓になると語る。

「1年前に電機メーカーのシャープがマスクの販売を始めた。まずは先着順で、ネットで購入を受け付けたが、アクセスが殺到してサーバーがダウンした。それからシャープは抽選に変えた。これが典型的な例になっている」(以下、慶応義塾大学経済学部・栗野盛光教授)

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 供給量に対し、希望者が殺到しているワクチン接種の予約はマスクが品薄で手に入らなかった時期と重なる。栗野教授によると、この需要と供給がワクチンの予約を考える上で重要だという。

「抽選の場合には、ある一定期間、予約の申し込みを受け付ける。その申し込み期間が終わったら抽選をして、予約枠を割り当てるというパターン。申込期間中に予約した人は、同様に扱われるので、早く申し込むメリットがなくなる。なのでアクセスが基本分散されるはず」

 栗野教授が研究を続けてきたマーケットデザインの考察から導き出された1つの答え。マーケットデザインとは、それぞれをプレーヤーに見立て、その行動を分析したうえで、どのような制度設計が最適かを現実の世界に当てはめるものだ。

「数理的なモデル、ゲーム理論を使う。人々がどのように行動するかデータを入れて、最適に行動したとき、どのようなことが起きるのか。先着順、抽選で何が起きるのか。人々を集めてきて、被験者実験をした」

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 実験の結果、短時間に人が殺到する先着順では予約の代行業者が横行し、そのほかの人が予約できない事態が発生。一方、抽選では代行業者が入り込めず、申し込んだ人すべてが公平になるという結論に至ったという。

 実際、先着順で混乱が起きた自治体では、抽選制へと切り替えるケースも出てきている。しかし、対応やシステムの変更など、難しい点はないのだろうか。

「抽選は、それほど複雑な手順ではない。プログラミングのコードはそれほど難しくない。ウェブのフォームを変えるのも難しくない。簡単だと思う」

■悪質代行業者や詐欺の危険も? 抽選制のメリットとデメリット

 すでに先着順で受け付けている地域では、ワクチンの予約代行業者が横行している。中には福島・会津若松市では26日、存在しない「日本赤十字会」を名乗り、80代女性に「ワクチン接種の予約を2000円で代行する」といった電話が寄せられている。これらは詐欺の可能性もあり、もし電話がかかってきた場合、注意が必要だ。

 一方、抽選制でワクチンの予約を受け付けた場合、栗野教授は「業者を使っても自分で申し込んでも予約が取れる確率は同じで、代行業者は儲からない」と話している。申し込み後すぐには決まらず、発表まで待つ欠点はあるが、悪質な代行業者の排除が可能だ。

 どのようなやり方でワクチン接種の予約を受け付けるか、自治体の判断が問われている。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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