被害女性の実名や職業を報じる意味、報道機関は検討したのか? 立川ホテル死傷事件の報道にEXITらが問題提起
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 東京・立川市のホテルで男女が刺され死傷した事件。殺人未遂容疑で逮捕された男性が19歳であることから報道では氏名が伏せられている一方、死亡した女性について一部の報道機関が放送やネット記事で実名や職業(派遣型風俗店勤務)を報じていることに疑問の声が上がっている。

・【映像】スタジオでの議論の様子(1分28秒~)

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 被害者について性別と年齢以外の情報を報じている報道機関の中には、実名と職業の両方を報じているパターンと、実名だけ、あるいは職業だけ報じているパターンに分かれている。しかし、これらの報道はネットで簡単に見比べることができるため、“片方だけだから”という配慮はほとんど意味をなさず、ネット上には既に複数の“まとめサイト”が立ち上げられ、被害者と思われる女性の写真などがSNSで拡散する事態となっている。

 性風俗産業で働く人々を支援する「SWASH」は事件発生の翌日、「性風俗で働いていることを家族・友人に隠している人が多い」「過去にも性風俗関係者が被害に遭った際にプライバシー侵害・誹謗中傷などの人権侵害が発生」「今回の事件の被害者・風俗店関係者の氏名を原則非公開としプライバシー保護を警察・マスコミ各社で徹底してほしい」との要望を公表している。

 3日の『ABEMA Prime』では、この問題について出演者たちが議論した。

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 まず、EXIT兼近大樹は少年法が5月に改正されたばかりであったことを踏まえ「加害者については19歳なので、来年(4月の施行後)であれば実名報道が適用されていたかもしれない。ただ、実名報道が始まったからといって、同じような事件はまた起きてしまうと僕は思っている。そして、被害者の名前や職業は絶対に出してはいけない、という意見についても違うなというのが正直ある。今回、女性が風俗店勤務だったということが報じられているが、そのことを理由にして出さない方が職業差別になるということもあると思うし、僕は出していいと思う。そのことで、“こういう職業ではこういう事件が起こるかもしれない”ということを知るきっかけにもなると思うからだ。ただ、名前に関しては要らなかったんじゃないか」とコメント。

 これを受け、相方のりんたろー。も「守られるべき権利は被害者にあるはずだし、ご家族の気持ちもある。一方で報じる権利、知る権利もあるので、何をどのくらい守るのか。正解を出すのは常に難しいと思うが、“こういう職業にはこういう危険が伴う”ということを伝えなきゃいけないという意味があるのなら、今回は職業だけを報じるということで良かったのではないか」と応じた。

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 また、リディラバ代表の安部敏樹氏は「シチュエーションごとに分けて考えないといけないといけない問題だが、こういう議論になると、必ずネットという新興メディアの問題のように扱われてしまうというところがある。しかし本質的にはオールドメディア、報道機関の課題だ」と指摘した。

 「そもそも報道機関は警察が出した一次情報を受け取って報道している。その時点では、警察という権力を監視する意味からも、実名も含めた情報を取ってくる必要があると思う。ただ、報じる時には“何のために伝えるんだっけ”と考えて情報を取捨選択することが必要なはずだ。今回の場合、実名を報じた報道機関は、そのことによって何をしたかったのだろうか。背景には、“うちが報じなくても他が報じてしまうから”という理屈もあるのかもしれない。それなら報道機関の間でガイドラインを作り、守らなかった場合は他の報道機関がきちんとそのことを批判する、視聴者や読者にも批判される、ということをやらなければならない」。

 フリーアナウンサーの柴田阿弥も「被害者に関する報道については、座間9人殺害事件や京都アニメーション放火殺人事件のときにも議論になったはずだ。一部の情報だけだったとしても、ネットを使ってすり合わせが出来てしまうし、そうした情報が一度拡散してしまえば、回収することはできない。被害者や家族を二重に苦しめることになれば、報道にも加害性が出てくる。報道機関はそのことを踏まえて、そもそも何のために名前や顔写真を出すのか、もう一度考えなくてはならないと思う」と報道機関に自覚を求めた。

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 一方、お笑いタレントのパックンは「“ガイドラインを作っても守らない報道機関が必ず出てくるから”と言うかもしれないが、だからといって皆が低いところに水準を合わせる必要はない。そうではなくて、報道倫理に基づいて、“それはガイドライン違反だよ”と連携して言っていくことが大切だ。ただし、事件によって報じる“大義”は変わる。“どこかである女性がある男性に殺されました”と言うだけでは人々は気にしてくれないし、実名や顔写真が報じられるからこそみんなが関心を持ち、問題を解決しようと思ってくれることもある。今回の報道でも、風営法などが変わっていくことにつながり、風俗業界で働くみなさんが守られるような形になるのなら、報じた意義はあると思う」とコメントした。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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