「政治的な活動をしているのは、本当の貧困に気づけない、裕福な家庭の出身者ばかり」若者の投票率が上がらない背景に、“意識高い層”との分断?
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 「誰にいれたらいいかわからない。適当に投票するなら行かない方がいいかな」「1票じゃ何も変わらないということもありますし、誰が当選しても自分の生活には影響がないと思っているので」。

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 今秋までに予定されている衆議院の総選挙。しかし20代の投票率は2017年の前回は33.85%と、“政治的無関心”が続いている。そんな中にあって、10代、20代の投票率が大きく上昇したのが、今年3月に行われた千葉県知事選挙だ。

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 「一番投票率が低い県になったこともあって、対策をしなくちゃと思って」。そう話す社会人1年目の瀧澤千花氏がプロジェクトリーダーを務める「VOTE FOR CHIBA」では、Instagramに“教科書”として情報を掲載、「投票証明書」を協力店舗で定時すると“選挙割”が受けられるキャンペーンなどを通じて投票を呼び掛ける啓発活動を実施した。

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 「ポスターとかCMで“投票に行こう!みんなの未来のために!”って言われるよりも響くし、共感もできるし。なんとなく自分ごとにできるんじゃないかなと思って」。

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 実際、今年1月に投開票が行われた北九州市議会議員選挙(小倉北区)では、InstagramやYouTubeを通じて若年層や子育て世代に政策を訴えた無所属の新人・大石仁人氏(35)が2位以下に1500票ほどの差をつけトップ当選を果たしている。

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 元高校教師でもあり、選挙活動ではかつての教え子などに支えられたという大石氏。「学校現場では政治の話がタブー視されているところがある。段階的に政治や政党のことを学ぶ機会が必要だと思うし、僕の仲のいい社会科教師はYahoo!ニュースのトップに掲載された記事を元に考えさせたり議論させたりした結果、その生徒たちが関心を持ち出したと話していた。そうした取組をした上で、若者の投票の価値を上げる施策を打っていく必要があると思う」と話す。

■「政治的な活動をしているのは、お金に余裕のある家庭の出身者ばかり」

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 瀧澤氏もメンバーの「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條子氏は「行政の出す解りにくい資料を綺麗なグラフィックで見せてあげるというのはもちろんだが、マスメディアが報道する内容だけだと、どうしても“自分たちにとってはどうでもいいこと”になってしまいがち。私たちは“U-30の争点”と呼んでいるが、若い世代が気になっているジェンダー、気候変動、LGBTQなどの課題について候補者にアンケートを取り、こういうテーマで選んでも良いんだよ、と訴えている」と話す。

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 一方、元経産官僚の宇佐美典也氏は「環境やジェンダーなど、いわば“意識高い”テーマに関心を持っている若者ははっきりいって少ない。100%にアプローチすることを訴えなければ構造は変わらない。つまり、カネの話をしないと駄目だ。この30年間、給料は上がんないのに税金は上がり続けている。もっと若者にカネをくれ、そして社会保険料は下げろ、というような運動を露骨にやらなければならない。もっと言えば、若者が都会に集まった結果、地方では実質的に一票の格差が2倍、3倍くらいまでになってしまっている。憲法改正にも関わってくるが、そういう具体的な要望で高齢者の喉元に刃を突きつけるようなことをしていかないと変わらない」と指摘。

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 実業家のハヤカワ五味氏も「私の周りにも政治的な活動や起業をしている学生や元学生はいっぱいいるが、ほとんどの場合、お金に余裕のある家庭の出身だ。なぜなら、裕福でなければそのようなことを考える余裕もないし、逆に明日のご飯がヤバいような状況だったら、選挙に行くよりもバイトに行ってしまうだろう。私はその現状の方が問題だと思う。また、裕福な人たちが怖いのは、本当に貧困に気付けないことだ。本当に投票率を上げようというのなら、一部のハイソな人に向けた話だけでなく、もう少し明日のお金についてどうするのか、というリアルな問題に踏み込んで、自分ごとだと思えるようにしなければならないと思う」と応じた。

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 ドワンゴ社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「まさに日本はフローの格差よりもストックの格差の方が大きく、東京で資産のある家庭に生まれた学生と、地方から出てきてアパートで一人暮らしをしている学生とでは、同じ教え子でも生活のレベルが全く違う。その差は、会社に入って倍の給料をもらったとしても埋まらない」とコメントした。

■「若者が一つになれるイシューを作っていくことも必要ではないか」

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 さらに夏野氏は「かつては日本でも学生運動があり、日米安保反対などのイシューで若者が団結した。ただ、今の時代はイシューが多すぎて、ワンポイントで結束するというのが難しい。何か一つになれるイシューを作っていくことも必要だと思う。欧米でグレタさんが若い世代にあれだけ支持されているのも、エネルギーや環境のことを忘れて経済に集中してきた結果、この先を生きる若い世代にツケが回ってくる、ということで結束したのだと思う。日本の政治も、選挙の時にそういう争点を作り出せるといいが、やはり選挙期間中になるとメディアが候補者の政策の比較などもほとんどやらなくなる。これではかえって公平性を損なっていると思う」とコメント。

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 能條氏も「欧米では反資本主義や社会主義の動きが出てきていて、若い世代の投票率が上がっている。自分たちが不利な状況にある、若い世代の声が大事にされないとか、将来世代のことが考えられていないという感覚が根本にあるのではないか」と話した。

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る政策が現に行われているのに、それに気付いていないまま何十年も経ってしまうこと。これは私自身の課題でもあるが、まさに若者の間にも分断があって、そこに気付いている人たちが気付けていない人たちに“俺たちはこんなにヤバい”というのが伝えきれていないということだ。

 私もずっと“意識高い系”で、“知らない方が悪い”と思っていたが、そうではない。みんなが結集できる簡単な論点を作れなかった自分にも問題があるのではないかなと思い始めた。繰り返すが、日本では民主主義の基礎的な権利であるはずの一票に格差があり、若者は自分たちの票の価値が軽視された制度の中で生きているということ。だからこそ若者に有利な選挙制度を実現するための制度提案、憲法改正が必要だと思っている」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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