先月23日、映像を映画会社に無断で編集し、YouTubeに「ファスト映画」として配信した容疑で投稿者の3人が宮城県警に逮捕された。宮城県警によると、ファスト映画の投稿による逮捕は国内初だという。

【映像】「ファスト映画」約15%が“違法”を認識して視聴(アンケート結果あり)

 「ファスト映画」は、映画の劇中画像などを使用し、結末までを10分程度に編集した動画のこと。著作権法に触れる「違法動画」だ。

『ラブひな』原作者・赤松健氏、動画サイトの“ファスト映画”や“ファスト漫画”にも警鐘「漫画村と同じように…」
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 1日に日本トレンドリサーチが発表した「WEB上の動画」に関する調査では「ファスト映画を視聴したことはあるか?」という質問に、9.3%が「ある」と回答。そのうち、「ファスト映画を違法と認識して視聴したか?」の質問には、「認識して視聴した」が15.6%、「認識していなかった」が84.4%という結果だった。また、なぜ違法だと認識していながら視聴したのか、その理由として「どうしても見たい作品があった」「公式に動画がなかった」「手軽に観ることができるから」「ダウンロードしないから良いと思った」といった回答が並んだ。

 この調査結果に、漫画『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』の原作者で、公益社団法人「日本漫画家協会」の常務理事を務める漫画家・赤松健氏は「アニメでも公式の映像をそのまま使っている“ファストアニメ”は違法だ」と話す。

「ファスト映画がYouTube上で流行っていますが、映画そのものを無断で短く編集して配信するのは、著作権違反になります。アニメでも、公式の映像をそのまま使ってYouTubeで配信すれば違法で、著作権法上の『引用』範囲以外はアウトです。ただ、中田敦彦さんやサラタメさんといったYouTuberがやっているような、文章の書籍の要約に関しては、本文をそのまま掲載して配信しない限り、問題ありません。その違いを理解しておかないといけません」(以下、赤松健氏)

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 「ファスト映画」では、作品内のトリックや結末といった重要な部分を晒してしまう“ネタバレ”も問題視されている。しかし、赤松氏によると「ネタバレは法的には問題ない」という。

「クリエイターとしての話は別ですが、ネタバレに関しては著作権法上問題はありません。作品を楽しむマナーとしての問題です。ただ、クリエイターの立場からすると、ネタバレを無闇に拡散されるのは困りますね。例えば、ミステリー漫画で『犯人はこのキャラクター』とネタバレされてしまうと、漫画家としては困ってしまいます」

 また、赤松氏は「ファスト映画が著作権侵害である事実は変わらない」とした上で「例えば二次創作の場合は、もし著作権侵害っぽくても“親告罪”。被害者による告訴がなければ公訴を提起(起訴)することができない」と指摘する。

「もちろん作者がOKなら、勝手に検察官が起訴することはありません。グレーな配信から人気に火がつくきっかけになるケースも考えられ、権利者それぞれの判断に任せられています。また日本はどちらかと言うとネタバレに対するマナーは良い方で、ブログや感想ツイートでも事前に『ネタバレあり』といった注意書きをする人が多いです。今年3月に公開されたアニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では、上映開始前から公式からネタバレ自粛を促すような動きがありましたが、逆にファンが全くネタバレしなさすぎて、とうとう公式が『今後はぜひ、皆様からのご感想を聞かせてください!』と“そろそろいいですよ”と呼びかけたケースもあります」

 一方、昨今の出版業界では漫画をコピーし、動画として無断配信する「ファスト漫画」的な行為が問題になっている。これについて、赤松氏は「完全に著作権侵害だ」と断言。「今どんどん出版社が削除申請をしているが、あまりに悪質な場合は『漫画村』の元運営者と同じように捕まるだろう」と予測した。

 逮捕された元運営者に懲役3年の実刑判決が下った海賊版の漫画ビューアサイトの「漫画村」。軽はずみな気持ちでクリエイターの権利を侵害しないために、閲覧者側にも節度ある行動が求められている。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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