「多少は恨まれることもあるだろう。しかし変えなければこの国がダメになる」平井卓也デジタル改革担当大臣が訴えるデジタル庁の意義、そして“デジ道”
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 9月1日の発足に向けて内閣官房IT総合戦略室が準備を進める「デジタル庁」。Zホールディングスも入居する「東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー」(千代田区)で、民間から採用した人材も含む同室の350人以上が業務をスタートさせている。

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 その頭指揮を執っているのが、平井卓也デジタル改革担当大臣(63)だ。14日の『ABEMA Prime』では、作業の進捗状況や批判を浴びた“干す”発言の真意、そして目標に掲げる『デジ道』について生直撃した。

■「国に力を貸そう、という民間の人材が揃ってきた」

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 デジタル庁創設を目玉政策の一つに掲げた菅政権が発足してから10カ月。平井大臣は「ヒト、モノ、カネ、そのためのデジタル改革関連6法案を国会で通したが、これが一番大変だった。今もバタバタしていてちょっとカオス状態(笑)。しかし予想以上に多くの方が協力してくれた。特にリクルーターたちが頑張ってくれて、国に力を貸そう、という民間の人材が揃ってきた」と話す。

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 「政府も含め、役所は外に丸投げばかりして、デジタル化のための人材を育ててこなかった。また、またこれまでの役所の仕事というのは“間違いなく&確実に”を続けていれば良かったが、デジタル庁は発想の転換をして、ある程度のものは内製化したい、思い切った改革をしたいということで、そのためのメンバーを国中から集めている。アプリを作ることのできるスタッフや、障害のある方にも使いやすいシステムでなければダメだということで、UI/UXのエンジニアもいる。

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 中でも民間人材から登用する“事務方トップ”の「デジタル監」の人選が注目されているが、「これは9月1日にスタートする法律で、総理が申し出て内閣が任命するポジションだと定められているので、それまでは言えない(笑)。ただ、兼職はできないので、仮にIT企業の社長だった場合、完全に辞めてこちらの仕事に徹していただかなければならないということになる」と答えた。

 そして発足後に待ち構える“チャレンジ”が、「既存のシステムを全てクラウドベースのシステムに作り変えて、データを移行すること」だという。

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「システムの規模も内容も更新時期も、人材リソースもそれぞれ違う。しかしバラバラにベンダーに頼んで作っていたからこそ横の連携もできないし、新しいことをやろうとする度に大改修が必要になっていた。それをデジタル庁では“レゴブロッグ型”に変えてしまおうとしている。もちろん国にも地方にも合意してもらわないといけないし、動いているシステムを止めるわけにもいかない。そういうところに細かく対応しながら、最後はデジタル庁が作ったガバメントクラウド環境に乗ってもらう、あるいはアプリを使ってもらうという方向で調整している。

 今年1月に我々IT総合戦略室が河野大臣の下で作ったVRS(=ワクチン接種記録システム)がまさにそれで、国のクラウド環境の中に自治体がデータベースを置くことにした。最初は“今さら新しいものを作られても手間が増えるだけだ”と厚労省からも自治体からも猛反対され、入力にも協力してもらえなかった。接種券がバラバラだったりしていて大変なこともあったが、今となっては接種済の人数を正確に把握するためにはVRSが頼りになっている。作ってよかった。9月以降はこのシステムもデジタル庁が管理し、来年からはマイナポータルで自分のワクチン接種記録を見られるようにしようということも考えている。母子手帳などで管理している情報なども含め、2022年以降につながるようにしようと思っている」。

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 デジタル庁の人材採用にも関わっているという慶應義塾大学特別招聘教授でKADOKAWA社長の夏野剛氏は「既存のソースコードなどを読み込み、そこにどう改良を加えるかという分析をしているぐらいなら、最初からフルスクラッチで作った方がいいということだが、これまでのシステムでやってきた人たちにとっては自分たちの“歴史の否定”にもなってしまうから、なかなかできない。これはデジタル庁を作る上での英断だ」と評価した。

■「多少は恨まれることもあるだろう。しかし変えなければこの国がダメになる」

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 一方、東京オリンピック・パラリンピックに伴う訪日外国人の顔認証システムに関し、IT総合戦略室の幹部との会議で「オリンピックであんまりぐちぐち言ったら完全に干すから」「脅しといたほうがいいよ」などと発言したことが報じられ、波紋を呼んでもいる。

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 会見で平井大臣は「不徳の致すところもある。言葉遣いに関して言えば、本音が出た。今までの調達のやり方に大きな問題があるので、そこをみんなで変えようという気になってもらわないと。そこを変えるのがデジタル庁の一番大きな仕事なので」と釈明。これについては2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は自身のTwitterで「業者と戦う意志のある人がいないとデジタル庁も食い物にされて終わるので、戦う意志のある人は必要だと思う」とコメントしている。

 この問題について平井大臣は「IT総合戦略室の全体の責任者が私だが、実は決裁ルートには入っていなかった。だからこのシステムについても国会で質問されるまで知らなかった。73億円と聞いて“高いな”“すごいものなんだろう”と思っていたが、海外からの観客を入れないことになったために用途がグッと狭まった。そこで“見せてよ”と言って、減額の交渉から参入した」と説明。

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 その上で「この20年間、システム費に国は年間約8000億、地方自治体は約5000億を使ってきた。問題は、その6割が新しい価値を創造するためではなく、一度納められたものの維持管理に使われてきたということだ。やはり東京タワーのように組み立てられているので、政策が変わった、診療報酬が変わった、介護保険が変わったという、その度に大改修が必要になっていた。

 僕はそれではお金がもったいないと戦ってきたし、デジタル庁もこの構造を根本から変えようとしてる。だから多少は恨まれることもあるだろう。しかし、ここを変えてもっとイノベーティブな発注にしなければ、この国がダメになるという危機感がある。国だけでも10年間で5兆円の維持管理費がかかることになるし、地方自治体だって財政が厳しい。しかもそれは皆さんの世代の負担になってくるということだ。今までのやり方を変えればベンダーの競争力にも繋がるし、社員の給料も上がることになる」。

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 夏野氏も「僕らはアプリを作っているからすぐに分かるが、73億と聞いて、そんなのありえないよと思った。相場が分からなかったのだろう」と指摘する。

 「日本の場合、カスタマイズされたもの、オリジナルなものをベンダーに発注するということが伝統的に行われてきたため、他のベンダーではシステムをいじれなくなってしまい、アップデートや機能追加で高い見積もりを出されてしまうことにもつながる。これを“ベンダーロックイン”と呼んでいる。だから“1円入札”といって、最初は1円でもいいから受注し、後々のメンテナンス、補修代で元を取ろうとするようなことも起きてくる。そして取引規模が大きいので、民間企業のシステム部長などに対してベンダーがゴルフや銀座のクラブで接待をするということも行われてきた。

 加えて日本の組織では、そうしたシステム部長に事業責任を負わない、コーディングもできない生え抜きの人間が就任し、発注側の責任者になってしまっていた。だからパッケージやクラウドの製品が揃ってきている中にあっても、個別にゼロから作る方向に行ってしまう。しかし欧米ではCIOのポジションは手口を全て分かっているベンダー側の人を中途採用で採ってくるので、そんなメチャクチャなことにはならない」。

■「デジタルを意識することなく、困っている人がいると分かったらプッシュ型」

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 番組には、視聴者から「高齢者などの“IT弱者はどうなるのか”」との質問も寄せられた。

 平井氏は「それが“デジ道”だ。デジタル化というのは、要するに“道”だ。アメリカは格差を容認し“置いていくけど経済は元気だ”、中国は“全員を監視しているから安全だ”。日本はどっちもやりたくない。“誰一人取り残さない”とか、“人にやさしいデジタル化”と言うと綺麗事に聞こえるかもしれないが、日本はそれを本気で考えている。

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 スマートフォンとかパソコンが使えなかったら何も恩恵がないということではない。困っている人がいたらほっとけないということをデジタル化の前提にして、別に無理にデジタルを使わなくても、知らないうちに便利になっている社会にする。例えば6月には地方税の状況がわかるので、自治体と情報連携してコロナ禍で困窮する子育て世帯に振り込んじゃえということを、今月から始めている。今までであれば役所に行って所得証明と申請書を出していたが、それでは不親切だ。デジタルを意識することなく、困っている人がいると分かったらプッシュ型。これをあらゆる分野でやっていくというのが大事だ」と説明した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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