アメリカでトランスジェンダーのスパ利用をめぐる論争…サリー楓氏「日常的に起きる問題として語られることに違和感。あくまでもケーススタディとして議論を」
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 アメリカでトランスジェンダーのスパ利用をめぐる論争が巻き起こっている。発端となったのは先月24日にInstagramにアップされた、米ロサンゼルスのスパ「Wi Spa」の女性更衣室に全裸のトランスジェンダー女性がいると従業員を非難する様子だとする動画だ。

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 投稿したと女性とされる人物は「彼(トランスジェンダー女性)は女性じゃない。目にしたもののせいで、女性たちは相当気分を害している。なのにあなた(従業員)は何もしなかった。むしろ彼の味方をした」と主張。「性的アイデンティティが女性だと主張する客に出入りを禁止することは違法になる」と説明する従業員に、「Wi Spaは自称女性という男性が男性器がついているのに女性サウナに入っていくことに合意すると、あなたはそういっているのか」と詰め寄っている。

 この動画が拡散するや、英語圏のSNSにはトランスジェンダーに対する批判が投稿され、スパ周辺では抗議行動に発展し、けが人も出たという。さらに動画とは無関係の人物が誤解をもとに脅迫を受けるなど、混乱が広がっている。一方で当時、本当にトランジェンダーの女性がいたのかどうかは不明で、現地メディアがロス市警関係者による「該当する人物はいなかった」とのコメントも報じるなど、一連のトラブルについてデマ・ねつ造の可能性も指摘されている。

■裸になる空間では証明する手立てがない…

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「時系列に整理・解説した記事を翻訳したものを友人にシェアしてもらった」と話すアイドルの和田彩花氏は「事の真偽はわからないし、デマが拡散されていくことで苦しむ方がいるということを前提に議論しなければならないと思った。もちろん男性の身体をした方が入ってくることびっくりする方もいるかもしれないが、トランスジェンダーの方は同じ女性であるにも関わらず不当な立場に置かれてしまいがちだし、生活していく上での不安や恐怖は、私たちが生きていて感じる以上のものだと思う。そこを包摂していく、守っていくために意識を変えていかなければならないと思う。とはいえ、LGBTQにあまり触れたことの方にもそういう意識を、というのは難しいことだとも思う」とコメント。

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 慶應義塾大学特別招聘教授でKADOKAWA社長の夏野剛氏は「身体が男性のままの方が女性のところに入っていくというのは、やはり常識とは異なっているし、混乱が生じる。また、それを装う悪い奴もいるだろう。こういう場所ではないところでトランスジェンダーの方を差別するということがあってはいけないが、裸になる空間では、その人がトランスジェンダーかどうかを証明する手立てがない。限られた空間での話だし、現実的に考えてそれが当たり前になるということは未来永劫、ないのではないか」とした。

■「日常的に起きる可能性のある問題であるかのように語られることには違和感」

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 ドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』にも出演しているトランスジェンダーのサリー氏(モデル・建築家)は「今回のニュースに関しては色々な情報が出ているし、どれが一次情報で、確定した情報なのかが分からない。また、どこを切り取るかで捉え方も全く異なってくる」と指摘。その上で「店側にはルールを明示すること、利用者側は自分のアクセス権を解釈すること、その両方が求められると思う」と話す。

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 「ジェンダーなどの多様性に配慮しながら公共空間へのアクセス性をいかに担保していくか、というのが論点だと思うが、そもそもスパや浴場という空間はプライバシーを確保しにくく、本人が望む性別、形態で利用することが難しい施設だ。LGBTフレンドリーを掲げていたり、ルールを設けるなど、お店側がどのようなアクセス権を付与しているかによっても変わってくるものの、例えば女性が生理が多いときには利用を控えるなどして利用者全体の配慮する、というのも一般的なモラル、対応としてあると思う。

 トランスジェンダーの方は、そのことで普段からセクシュアルハラスメントを受けていることが少なくない。私自身、カミングアウトすると“おっぱい触らせて”みたいなことを平然と言われてしまうことがある。そうだとしたら、自分がその施設に行った時、周りがどのような反応をするかということも想像が付くはずだし、そこは本人のモラルが求められるところだと思う。トランスジェンダーの場合、一定期間クリニックに通ってカウンセリングを受けると、WHOの証明書が発行される。何か不利益を被った時、“こういった診断を受けている”と提出する場合があるからで、外出時に携帯している方も多いと思う。ただ、浴場のように裸になる場所で手術を受けていない方が入るのは許されないと思う。

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 ただし、舞台になったスパというのは日本の銭湯とは少し異なる営業形態の店でもあるし、同様のことは起こらないか、起こっても確率は低いのではないか。それを日常的に起きる可能性のある問題であるかのように語られることには違和感を覚えるし、恐怖も感じる。あくまでもケーススタディとして、もし同様のことが起こったらどういうふうに対応すればいいのか、それを考えていくことが重要なのではないか」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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