「ゲームは“精神的アヘン”」中国国営メディアが猛批判も…大手IT企業が難を逃れた理由
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 “精神的アヘン”が数千億元規模の産業に成長している――。

【映像】「小学生の“課金”は禁止」オンラインゲームに熱中する子どもたち

 中国国営の新華社系列メディア「経済参考報」が報じた内容に注目が集まっている。“精神的アヘン”とは一体何を指すのだろうか。記事を読むと、中国の大手IT企業テンセントの大ヒットゲーム「王者栄耀」のタイトルを挙げ、名指しで批判していた。1日8時間ゲームに熱中する学生の例などを紹介し、長時間オンラインゲームで遊ぶことの悪影響を伝えた。

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 国営メディアがなぜ大手IT企業を批判したのだろうか。この背景について、ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、中国経済に詳しいジャーナリスト・浦上早苗さんを取材。浦上さんによると「これ自体は新しいことではない」という。

「国営メディアの社説は、半分“国の意見”を代弁するものです。記事の大半は『オンラインゲームが子供に与える影響はよくない』と書いているだけなので、これ自体は新しいことではありません。今回は記事の一行目に『政府の二つの軽減政策にも書いてあるように~』と出てきたので、国の政策との明確なつながりが意識されている」(浦上早苗さん・以下同)

 中国政府は7月、小中学校の宿題量や学習塾に関する規制を発表。「子供の教育にかける時間や費用の負担が少子化に繋がっている」といった指摘もあり、これを解決する狙いがあるという。

「(宿題・塾規制などが書かれた)この意見書はものすごく長くて、そこの中に1~2行ほど、ICT端末、具体的にゲーム機とは書いていませんが、スマートフォンなども想定して、それらと適度な付き合いをさせたいのだと思います」

 実は中国では2年前、18歳未満に対して「午後10時から翌朝午前8時までゲームのサービスを提供してはいけない」といった通達が、全てのオンラインゲーム会社に対して出されていた。また、未成年者がゲームで遊べるのは1日当たり1時間半までといった規制も行っている。

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 国営メディアが厳しくゲームを批判した今回の報道を受け、中国のゲーム関連企業の株価は急落。すぐにテンセントは声明を発表し、平日1時間半の規制を1時間までに、12歳以下の課金を禁止するなど、新たな措置を講じるとしている。

 報道と株価の関係、そして政府が行うテンセントへの対応ついて、浦上さんは「他の企業ほどひどいことにはならないだろう」と分析する。

「まず、去年アリババの子会社のアントグループが上場直前に中止しています。今年は7月初めにDiDi(大手配車サービス)などが上場した瞬間、調査が入りました。それもあって『やっぱり中国株は政治リスクがものすごく大きいよね』と認識されてきました。中国政府はこれまで多くの規制をしてきているので、具体的なアクションがなくても、株価が反応してしまうのは、(過去を)連想して先取りした結果でしょう

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 その上で浦上さんは、テンセント社のCEOである馬化騰(ポニー・マー)氏に言及する。

「テンセントのCEOは全国人民代表大会(中国の立法府)の代表なんです。アリババなどに比べれば、政府との関係は良好です。割と率先して、IT業界の正常化に取り組むタイプの企業で、声明を出すのも早かった。そういった部分で、今まで難を逃れている。他の企業ほど、ひどいことにはならないはずです」 (『ABEMAヒルズ』より)

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