採算が厳しいローカル線は廃止するしかないのか? いすみ鉄道の経営再建を手掛けた鳥塚亮氏に聞く
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 今月2日、広島県をはじめとした中国5県の知事が発起人となり、全国23道県知事から赤羽国土交通大臣に「地方の鉄道ネットワークを守る緊急提言」が提出された。

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 中国地方にはコロナ禍によって一層厳しさを増し、廃線の不安が高まっているJR芸備線がある。遡ること半年前、JR西日本の長谷川一明社長が「これまでの内部補助によって成立してきたローカル線の維持が非常に難しくなる」と指摘していた。

 これに対し知事らの提言では「廃止や著しく利便性を欠いた減便は、通学、通勤、通院など中山間地域における生活を困難にし、地域そのものの衰退を加速することが強く危惧される」として、鉄道事業者が簡単に廃線にしないよう、手続きの見直しや支援を求めている。

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 提言を受け、赤羽大臣は「地方の鉄道ネットワークは地域住民の皆様方の重要な足であるし、これからの観光事業にとってもキーとなるアクセスであることから、今後とも、ローカル線の利用促進や、持続的な事業の運営について、関係自治体および鉄道事業者と連携協力して取り組んでまいりたい」と述べた。

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 第三セクターのいすみ鉄道(千葉県)の経営を再建、現在はえちごトキめき鉄道(新潟県、通称“トキ鉄”)の社長を務める鳥塚亮氏は「昔の話をするのは恐縮だが、国鉄が民営化してJRになった際、全路線をちゃんとやるという約束のもと、本州の東日本、西日本、東海には新幹線を持たせたり、北海道、四国、九州には莫大なお金をつぎ込んだりした。あれから35年が経ってほとぼりが冷めたからということなのかもしれないし、世の中や会社のスタイルが変わったことも確かだ。株式会社としては、株主の方を向かなければならないということもあるだろう」と話す。

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 「鉄道路線にはそれぞれの役割があって、JR芸備線に関しては貨物や特急が走るというわけではないので、国というよりは地域の課題にはなってくる。ただ、自治体が急に鉄道事業者と話をしようとしても、例えばどのくらいのコストを負担するのが妥当なのかなど、全く理論武装ができてないという課題もある。一方で本州の場合、2019年までほぼ毎年、黒字でやってきた。だからコロナで赤字になったからといって廃止するというのはおかしいと思うし、国としても“違うんじゃないか”と警鐘を鳴らそうという意味もあると思う」。

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少子高齢化や過疎化に伴い、ローカル線は廃止するしか方法はないのだろうか。鳥塚氏は「戦前に作られて100年近くが経った路線の場合、やはり敷設当初の役割は終了している。だからといって廃止してしまえば、地域はどうなるのか、という話になる。鉄道単体の収支、つまり1日500円のお客さんが何人乗れば経営が成り立つのかというだけではなく、時代に合わせた使い方をするべきではないか」と話す。

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 「魅力的な列車を走らせれば人が乗りに来て、地域を潤すこともできる。私はいすみ鉄道時代、そのようなことをやってきた。例えば私は“ムーミン列車”を走らせた。それによって鉄道単体ではなかなか黒字にはならないが、地域にいらした方々がご飯食べたり、お土産を買ったりすることで、地域の東京や大阪に帰って、いすみの野菜や米、お酒の宣伝をしてくれる。

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そのようにして地域に利益を与えられる存在になれるのが鉄道だと私は思う。えちごトキめき鉄道についても、ただ単に地域の足ということだけではなく、どうすれば地域にとって必要な存在に鉄道がなれるのか、ということを考えてきた。ただしJRさんは国鉄時代からそういう経営方針ではないので、お客さんが乗らなくなれば本数を減らし、最終的には廃止ということでやってきたことだ。

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 それでも芸備線について言えば、備後落合から庄原市から北に向かって行くと木次線が、新見から北に向かっていくところには伯備線が走っている。この4県にまたがってぐるっと回れるコンパクトな観光ルートを開発することはできるかもしれない。確かに人口が減っていく以上、全ての路線が残れるわけではない。それは鉄道だけではなく自治体も同様だ。そして新しいものを作るというのも難しいので、今あるものをいかに有効活用していくのかということが問われる。逆に言えば、先人が築いてきた鉄道を上手に使えないような地域は何をやっても残らないと思う」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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