藤井聡太王位・棋聖、最年少三冠に王手 快進撃を支える「将棋体力」と「2種類のソフト」
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 将棋藤井聡太王位・棋聖(19)が新たな記録、最年少三冠達成に王手をかけた。8月9日に行われた叡王戦五番勝負第3局に勝利し、シリーズ成績は2勝1敗に。22日に行われる第4局に勝利すれば、羽生善治九段(50)が持つ22歳3カ月を大幅に更新する、10代で初の三冠を達成する。その棋力の高さは他の棋士も認めるところだが、お~いお茶杯王位戦七番勝負も並行して戦い、長時間に及ぶ順位戦もタイトル戦の合間で行われるなど、ハードなスケジュールの中で激闘を繰り返している。この戦いを支えているものについて、勝又清和七段(52)は、「将棋体力」と「2種類のソフト」が鍵になっていると指摘した。

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 まずは「将棋体力」について。字の通り、将棋を指すことに対する体力だが、スポーツアスリートのように速く走れる、力が強いといったものでもない。いかに長時間の対局で集中力を持続し、頭をうまく回転させられるかで、日頃の研究の成果がフルに発揮できるかが決まる。勝又七段は羽生九段や森内俊之九段(50)、佐藤康光九段(51)といったレジェンドたちを例に出しながら、藤井王位・棋聖について説明した。

 勝又七段 藤井王位・棋聖は将棋の体力が図抜けている。私は「羽生世代」とほぼ同い年なんですが、羽生九段や森内九段、佐藤康光九段は体力が化け物です。羽生九段が(対局時に休憩で)控室で横になっているのは見たことがない。森内九段も昔、マラソンで1位になるくらい。佐藤九段もえらく元気。藤井王位・棋聖は、順位戦も夜中の1時までやって、2日後の対局でも平気でこなす。

 1日の対局で、体重が数キロ減るとも言われる将棋。時に「頭脳スポーツ」とも表現されるが、まさに体を動かすスポーツ並みにエネルギー消耗は激しい。持ち時間がいくらあっても、それだけ長く考えるには「将棋体力」がいる。持ち時間各6時間、両者合わせて12時間超にも及ぶ対局に耐えられるアマチュアなど、プロの棋戦に参加できるようなごく一部のアマチュアエリートぐらいなものだろう。プロでさえピークを過ぎ、年齢を重ねれば長時間対局がきつくなる。戦える体を持つことは、それだけ勝負の世界で重要なことだ。

 もう一つ、勝又七段が口にしたのが、藤井王位・棋聖の研究法についてだ。以前から自作のパソコンに将棋ソフト(AI)を入れ、日々の研究に活かしていることは広く知られているところ。ただ、インタビューをした際に興味深いことを聞いたという。

 勝又七段 昨年の11月ぐらいに、グラフィックボード(パソコンの部品の一種)を買って、ディープラーニング系の将棋ソフトを導入したそうです。これまでのものと違った評価値を出す将棋ソフトで検討している。相掛かりで片方は互角なところを、ディープラーニング系は+200とか、はっきり数値をつけてくるのがおもしろいと。相掛かりを採用したのも、それと言っていました。

 藤井王位・棋聖は、ある時期から居飛車の戦型の一つ「相掛かり」を用いるようになった。それまでは角換わり、矢倉などを用いていたが、ここに相掛かりが加わるようになったことで、さらに戦型の幅が増えたとプロ将棋界の中でも話題になった。この理由に、新たな将棋ソフトの導入があったことで、ファンからも「むちゃくちゃ面白い」「19歳なんだし、まだ進化中」といった声が見られた。将棋ソフトが誕生するまで、棋士は多くの棋士の棋譜から学び、新たな戦い方を模索してきた。ただ藤井王位・棋聖は、最先端の将棋ソフトを1つで満足することなく、2つ目を取り入れて、自分の力とした。将棋の高みに近づく術があるなら、迷うことなく貪欲に使う。それで結果が出たなら、その研究を止めるはずもない。

 現在、8つあるタイトルは藤井王位・棋聖を含めて4人が分け合う形になっているが、開催中の王位戦、叡王戦という「ダブルタイトル戦」に加え挑戦者決定三番勝負に進出している竜王戦でも挑戦、さらに奪取となれば、この冬までに四冠まで伸ばすことも可能だ。心身ともにピークどころか、まだ成長途中の19歳。どこまで強くなるか、まるで先が見えない。

ABEMA/将棋チャンネルより)

第3局終了の瞬間
第3局終了の瞬間
対局者の昼食メニュー
対局者の昼食メニュー
第34期竜王戦 挑戦者決定三番勝負第一局 藤井聡太王位・棋聖 対 永瀬拓矢王座
第34期竜王戦 挑戦者決定三番勝負第一局 藤井聡太王位・棋聖 対 永瀬拓矢王座

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