ボブ・ディランさん提訴の背景に、過去の性被害を救済するニューヨーク州の「児童被害者法」、弁護士「日本でも特別法を設けるべき」
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 「今でも重い心の痛みや苦しみが残っている」。ノーベル文学賞も受賞した世界的ミュージシャン、ボブ・ディランさん(80)が少女に対して性的虐待を行ったとして提訴された。

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 訴状によれば、J.C.と名乗る原告の女性(68)は56年前、当時12歳だったディランさんと親しい関係になり、およそ6週間にわたり薬物やアルコールを伴った性的虐待を受けたと主張。原告側の弁護士はCNNの取材に対し「多大な調査と徹底検証を経て提訴した。女性がホテルで彼と一緒にいたことは間違いない」としている。これに対し、ディランさんの代理人は「訴えの内容は真実ではない。裁判で反論する」として争う姿勢を見せている。

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 18日の『ABEMA Prime』に出演した安藤美姫さんは「裁判もまだなので事実かどうかはわからないが、仮に事実だとすると、当時の彼女は若かったし、すごく怖かったと思う。同じ女性という立場としては、時代も変わってきたし、彼女の中では今がタイミングだということで声を上げたのかもしれないなと思う。もちろん時効という制度はあるが、気持ちの面では、いつまで時間がかかるかわからない」と推し量る。

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 女性が訴え出た背景には、18歳以下で受けた性的暴行について、時効後でも民事訴訟が可能とする米ニューヨーク州の時限法「児童被害者法」が施行されたこともあるとみられている。

 性暴力被害の裁判を多く手掛けてきた小竹広子弁護士は「特に子どもの頃に受けた性被害は訴えにくいというところに着目し、どんなに昔のことであっても一気に救済しようということで作られた、非常に画期的で興味深い法律だ。当初は2019年8月13日からの1年間だったが、コロナ禍に伴い期間を延長し、2021年の8月14日までの2年間に限っては訴えることができることになっていた」と話す。

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 また、長い年月が経過していることでの立証の難しさについては「誰かが見ていた、映像があったといったことがない限り、昨日の事件であっても立証の柱は被害者の証言で、加害者の証言とどちらが信用できるか、ということが判断の中心になってくる。閉鎖された空間、1対1で起こることなので、その意味では難しさは変わらない。私が実務家としてやってきた実感からすると、実は証言だけで簡単に嘘が通るようなことはない。やはり色々な客観的な事実や証拠、例えば部屋の構造など、客観的な事実に合致しているか、あるいは周囲の人間関係、ストーリーが自然で説得力があって、迫真的であるかといったことから、聞いた側は判断できるものだ」。

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 一方で、声を上げたり、裁判を起こしたりすることが当時を思い出すことに繋がり、再び精神的な苦痛を抱えてしまう可能性も考えられる。

 小竹弁護士は「性被害を受けるというのは非常に大きなショックで、直後は心が混乱し、バラバラになってしまう。しかも非常に近しい人が加害者である場合も多い。だからまずはその人との関係も守りながら、なんとか生き抜かなければいけない、という状況になる。そうした辛いことから離れられて初めて、被害を被害として認識できるようになると思う。加えて、“精神病なんだ”など、非常に傷つくことを言われることもあるので、我々もご相談を受けたときには“相手方からどういった反論がなされるか分からない”と伝えることにしている」と明かした。 

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 また、小竹弁護士は「児童被害者法」について、「日本ではなかなかこういう大胆なことはできない」と指摘。その上で「日本には児童だからといって特別なルールはなく、被害者が加害者と損害を知ってから3年間ということになっている。もちろん裁判の中では、損害を知ることができない年齢だったんだという主張もするが、やはりそれぞれのステージですごく時間がかかるものなので、各国で特別法が設けられてきている。日本だけそれがなくていいのかなと感じている。時効というものの存在意義はなくはないが、被害の性質からしても、やはり日本でも成人してから30年などの期間に延ばすのがいいのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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