子宮頸がんは「誤解と偏見の病気」 空白の世代にも無料でワクチン打てる“バックアップ”を
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 先月31日、厚生労働省の田村大臣はHPVワクチンの勧奨について「有識者による審議会で議論を再開する」と発表した。具体的な再開時期の明言は避けたものの「積極勧奨をどうするかは、私に与えられた大きな宿題だと思っている」とした上で「しっかり積極勧奨に向けて、評価いただけるのかを専門家に議論・審議をいただきたい」と語った。

【映像】「対象年齢を過ぎても“HPVワクチン”は打つべきか?」医師の答えは(15分30秒ごろ~)

 HPVワクチンは、子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐため、日本では2009年に承認された。2013年4月より、小学6年生から高校1年生相当の女子を対象に定期接種が始まり、現在も対象者は希望すれば原則無料で受けられる。

 しかし、接種後に全身の痛みなど、重い症状を訴える人が相次ぎ、厚生労働省は2013年から積極的な勧奨を差し控えている。その後、厚生労働省が「副反応と疑われた多様な症状とワクチン接種の因果関係は示されない」と判断したが、世界でワクチン接種が進む中、前述の背景から日本のHPVワクチン接種率は1%未満にとどまっている。

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 日本では、年間で約1万人がかかり、そのうち約2800人が命を落とす子宮頸がん。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」副代表の木下喬弘医師は、子宮頸がんについて「誤解と偏見の多い病気だ」と話す。

「子宮頸がんは、性交渉におけるHPVの感染がきっかけで起こるがんです。よって『性交渉が多い人の病気』といった患者への偏見、誹謗中傷も多い。『性交渉が多い人の病気』はまったくの誤解で、性交渉を経験した8割以上が一度はHPVに感染します。みなさんの8割以上が感染して、その中の一部の人が、数年~数十年後にがんになります。現状、目に現れてないだけで、これから5年経つと世界的には子宮頸がん患者が減っているのに、日本だけ増えていくような事態が起こるでしょう。日本だけが取り残されている現状を強く危惧しています」(木下氏)

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 番組の取材に応えてくれた患者に「勇気を出して声を上げて、出演してくださった当事者の方に感謝したい」と敬意を示した木下氏。HPVワクチンにおける副反応については「ワクチンが原因で起きる症状ではないと考えられている。まったく同じ症状が、HPVワクチンを打っていない人にもみられた。それなのに、多くの人の知識が、アップデートされていない」と語った。

 木下氏の説明に、先月17日『ニュースの未来』(光文社新書)を上梓したノンフィクションライターの石戸諭氏も「ワクチンと副反応との間に科学的な因果関係は示されていない。あらゆる調査を見てもHPVワクチンはかなり良くできているワクチン」と言及。その上で、子宮頸がんワクチンで「副反応が起きた」という当事者を取材した石戸氏は「最大の問題は客観的にはありえないが、当事者にとって主観的には事実であること。副反応を訴えた当事者やその親御さんたちにとっては、『ワクチンを打ったあとに、体に変化があった』ことがすべてだ」と話す。

「問題が大きくなった理由は、HPVワクチンへの不信感だけではない。表面的な言葉だけをまとめると《ワクチン不信》とまとめられるようなことでも、よくよく話を聞いてみると違う。これはひとつの事例だが、体調が悪いと病院に行っても門前払い、診せる病院によってはまともに対応してもらえず『思春期のメンタルの問題だから精神科へ』と言われ、精神科に行くと『これは、うちじゃないですね』といった感じで、誰にも診てもらえなかったという経験がある。彼らは制度の狭間に落ちてしまった。ワクチンだけではく、医療への不信感が根強く残っている」(石戸氏)

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 また、石戸氏はこれらの不信感を拭うために「知識のアップデートはすぐにできないが、行動できることはある」といい、「積極勧奨の再開は今すぐやってほしいし、大賛成だからこそ、勧奨再開後に副反応問題ばかりがクローズアップされないためにも、問題はどこかで起きるという前提で動く必要がある。副反応問題については専用の窓口を設置して、いざ副反応が出たとしても『きちんと対応し、診てくれる病院がちゃんとありますよ』と接種の意義と同時に強くアナウンスする必要があると思う。備えを強調することは接種率を上げるためにも重要」と語った。

 スタジオでMCの柴田阿弥アナウンサーが「対象年齢を過ぎても、HPVワクチンは打つべきか?」と聞くと木下氏は「HPVには約200種類の型がある。それぞれに型番号があって、そのうちの16番・18番の2つが代表的な子宮頸がんのハイリスクHPVだ。ワクチンはすでにかかっているウイルスの排除できないが、4価のHPVワクチンは4つの型を対象としているため、たとえそのうちの1つにかかっていても、残り3つは予防できる。これまでの研究からHPVワクチンは26歳以下のすべての女性に勧められているが、27歳以上でも新しいパートナーができる可能性がある人は接種を検討してほしい」と回答。

「毎年約1万人が子宮頸がんになって、約2800人が亡くなる。9価にしても男子にしても、定期接種化しないなんてありえないし、この議論をはやく進めていく必要がある。医療従事者は積極勧奨の再開をずっと求め続けてきた。簡単にいうと製薬会社が日本に配分しても、打つ人がいないから捨てられ続けてきた。来年も接種率が低いままだと、製薬会社からワクチンが供給されなくなる可能性すらある。そうなると、近い未来、子宮頸がんワクチンを打ちたい人が出てきても、打てない状況になる」(木下氏)

 日本では対象年齢内であれば無料でHPVワクチンの定期接種が受けられるが、対象年齢を超えてしまった場合、施設や種類によって値段が異なるものの、原則自己負担が必要だ。稀に補償している自治体もあるが、高価なワクチンにもかかわらず、これまでの背景から“接種の機会”に恵まれなかった世代も多い。これに石戸氏は「打てる機会はあったが、積極的に知らされることがなかった『空白の世代』も無料もしくは低価格で打てるようなバックアップがあるといい」と費用負担に関してケアを求めた上で、接種率を上げるには、今までとは違う新しいアプローチが必要だと語った。(『ABEMAヒルズ』より)

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