多くの自然災害に見舞われた平成時代の日本。各地で多くの人の命が奪われたのと同時に、生き残った人々の生活も奪われていった。一方、災害を経験する中で日本のトイレは独自の進化を遂げていた。
多くの現場を取材してきたリポーターの所太郎は「平成という時代を振り返ってみると、10年と経たずにに様々な災害が日本を襲った時代だった。被災なさった皆さんは避難所に避難するわけだが、必ず設置されているのが仮設トイレだ」と話す。
平成７年（1995年）に起きた阪神淡路大震災のときにも現地入りした所は、被災地で起きた"トイレパニック"について「当時、神戸市内にはバキュームカーが19台しかなく、トイレから溢れてしまって、追いつかなかった」、日本トイレ研究所の加藤篤代表理事も「とにかくトイレが足りない。無かった」と振り返る。
また平成16年（2004年）の新潟県中越地震では、「エコノミークラス症候群」の問題がクローズアップされた。「若い女性に話を聞くと、トイレに行きにくいということだった。食べる量を減らす、水分をとるのも減らす。違う意味でストレスが溜まったたり、体調を崩したりということで、亡くなった方もいた」（所）、「お年寄りなども夜間に真っ暗な中、外のトイレに行きたくない。そうすると水を飲むのを控えてしまい、脱水になり、エコノミークラス症候群に、という問題が起きた」（加藤氏）。
平成23年（2011年）の東日本大震災でも、"災害弱者への配慮"が指摘された。「障害者や高齢者、女性もトイレに行くことは死活問題。だが、なかなか行けない。そこが大きく問題視された」（加藤氏）。
そして平成28年（2016年）の熊本地震では、"我慢から快適へ"と言われるようになった。「熊本地震では、震災関連死の方が多かった。これからは我慢している場合ではなく、快適で、行きたくなるようなトイレを整備すべきだということで、国土交通省が"快適トイレ宣言"をした」（加藤氏）。
そこで導入された"1つ星"の仮設トイレについて加藤氏は「やはりトイレには照明が大事。夜間はLEDライト、昼間は自然光を取り入れる半透明の屋根になっている。鏡も付いているし、身の回りのものを持ってトイレに入ったりするので、フックも大事。これは10kgまでOKだ」と説明した。
さらに"2つ星"の仮設トイレ（約100万円）については「鉄でできているのでかなり頑丈だ。男女どちらが入れるのかも明快に分かるし、両方用もある。防犯も大事なので、容易に外から開かないようダブルロックになっていて、照明も２個ある。そしてトイレに必要なのが臭気対策だ。窓があって換気ができる。アンモニアもシャットアウトしている。虫が出ないように専用の薬剤を便槽に入れている。手を洗った水を無駄にしないよう、トイレの流し水に使える設計にもなっている」。
作家の乙武洋匡氏が、車椅子の人への対策について尋ねると、加藤氏は「車椅子でも使えるトイレもどんどん開発されている。自治体でも備えには不可欠だと思う」と回答。「我慢は平成で終わりにしたい。なぜなら命に関わるからだ。これからは行きたくなるようなトイレだ。さらにアンモニアで発電し、発電所になる仮設トイレも出てくるかもしれない。そういう風に変えていく」と力を込めた。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
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