”ルールが難しいし、怖くてTweetできない”なぜ日本のネット選挙は盛り上がらない?
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 「完全にネットですね」(会社経営、34)、「一番目にしているのはフェイスブックで、投票前には自分で検索して決めるかな」(団体職員、34)、「候補者の面白いツイートが回ってきて、みたいなのはある。政治に対しての理解度が高くないので、そういう意味では面白いものが入り口になることは大いにあると思う」(フリーター、33)

 6年前に解禁となった、SNSなどを使った選挙運動、いわゆる「ネット選挙」。明るい選挙推進委員会の調べによると、一昨年の衆院選ではネットで情報を得た人の8割が「投票の参考にしていた」と回答しており、候補者たちも手探りだった2014年の衆院選では候補者全体の53%にとどまっていたTwitterアカウントの開設も、今回の参院選では80%にまで上昇している。

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 選挙・政治情報サイト「選挙ドットコム」運営会社の高畑卓氏は「街頭演説いつやります、誰々が応援に来ますって言われても、そこに行けないからネットで見ているわけで、ちょっとズレている。一方、街頭演説をライブ配信したり、動画としてアップしたりという動きも増えてきた」と話す。同社では、ネット上に溢れる候補者発信の情報をわかりやすくまとめし、各候補者が何に重点を置いているのかが直感的にわかるよう試みている。

 実際、TwitterやFacebookでの情報発信やスケジュール告知などにとどまらず、あたかもPVのように編集した動画をInstagramやYouTubeにアップしたり、選挙戦の"オフショット"を紹介したりするなど、ビジュアルにこだわった候補者側の発信も増えてきた。また、スマホを意識し、自身の政策を画像一枚にまとめたり、縦型動画をアップしたりするなど、それぞれに工夫を凝らしている。

■”電子メールはNG、SNSのメッセンジャーはOK”…政党優位なネット選挙

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 一方、有権者の側については、電子メールで特定の人物への投票を促す行為や、政党からのメールを転送することは公職選挙法で禁じられている。ジャーナリストの堀潤氏は「メールでは駄目だからということで、SNSのメッセンジャーで送られてくることがある」と明かす。

 この点について、東京工業大学の西田亮介准教授は「現行の公職選挙法で定義されている"電子メール"とは、送信メールサーバー、いわゆるSMTPサーバーを経由しているもの、また携帯電話のSMSだと定義されている。一方、メッセンジャーサービスやダイレクトメッセージの機能はウェブサービスの1つだと考えられており、SMTPサーバーも経由しないので、これについては特段制限がない。おそらく一般のユーザーの体感とは合致していないことだとは思うが、総務省の見解は電子メールを使った選挙運動は密室の空間になり、不正の温床になりやすいからというものだ」と説明する。

 「ただでさえ日本の選挙は"政党優位"と言われてきた中、電子メールや広告でも政党優位になっているということがポイントだと思う。本来はインターネットによって選挙が市民中心のものに変わることが期待されていた。ところが蓋を開けてみると、やはりネット選挙運動も政党優位の作りになっていて、我々有権者や候補者本人ができることよりも政党ができることの方が多い。もちろん資金力だけで有権者の政治的選択が決定されるとは思わないが、現実には資金力のある政党が有力な代理店やPRファームを雇い、まさに効果的な訴求の仕方を工夫、試行錯誤している状況だ」。

■選挙以外でもSNS活用”自民党×ViViは総合的なキャンペーンの一部だったのがポイント”

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 そんな政党も、参院選に向けて様々な取り組みを展開している。議論を巻き起こした自民党の『#自民党2019』でファッション誌ViViとのコラボを始め、公明党はオリジナルアニメ『未婚のひとり親支援』、立憲民主党はツイッターでのリプ返しや『CMにかける予算がない』などの赤裸々トーク、国民民主党は戦国時代風ショートムービー公開、共産党は3Dキャラが歌って政策紹介・TikTokで議員がダンス、日本維新の会は公式LINEを活用し『維新クイズ』や川柳募集、社民もTikTokアカウントを開設している。また、「NHKから国民を守る党」の政見放送の動画は再生回数が200万回を超え大きな注目を集めている。

 西田氏は自民党の取り組みについて「"ファッション雑誌ViViとコラボ"と表現されるが、これはミスリーディングで、実は総合的なキャンペーンだったということが重要だ。つまりファイナルファンタジーのクリエイターが手がけた侍の広告が街頭に掲示されたり、若者とコラボしたような動画が流されたりするなど、男性・女性・年齢別などのセグメントごとに効果的だと考えられる手法を組み合わせている。それぞれがベストな取り組みではなかったかもしれないが、他党のアプローチと比べれば、それなりに妥当なものになっているといえるだろう。自民党はその規模感も他党と比べて卓越している。ただ、大半の人はに良くも悪くも選挙や政治関心がないし、SNSが情報発信のツールにはなっていても、選挙に関する情報収集のツールにはなっていないと思う。一方、インターネットを使った選挙運動は他の選挙運動と比べて規制が少ないので、まだまだ掘りがいはある。今後、政党などが若い人たちに見られているYouTuberにプロモーションを依頼するということも考えられる」との見方を示した。

■”Tweetする前にルールを確認しないといけないから、みんな怖くてやらない”

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 そのYouTubeで選挙を"ラフ"に語った動画がバズっているのが、YouTuberのほな氏だ。普段は政治の話をすることはないといい、アップする動画も音楽の話がメインだという。「選挙期間中だから、政治についてやってみたらバズるかなと思ってやっただけ。私たち世代の若者は難しい言葉の難しい政見放送を見ても興味が湧かないし、そもそも見に行かない。だから若者の目線で、若者の言葉で、若者の立場から若者に向けて話すことに意味があったと思う。学生の時は投票に行っていなかったが、社会人になっても政治のことを知らなかったら恥ずかしいとは思う」と話す。

 その上で「ViViは私たちの世代にとってはドンピシャで、ローラさんや水原希子さんなど、かっこいい、自分の意思をはっきり言えるような女性が出ているイメージ。だからあのような政治的な発信についてはいい気がしないというか、若者へのすり寄りがすごい」と感想を述べた。

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 華僑マーケターの陳暁夏代氏は「アメリカでは、いわゆるアイコンと呼ばれている芸能人たちが、誰を応援しているかということを大々的に発信する。それがかっこいいことだし、ポリティックなものに関与していることが自分のアイデンティティにもなると考えられている。日本も同じ民主主義国家であるはずなのに、ViViに出ている人たちが発信すると嫌だと思ってしまうのはすごく矛盾していると思う。一方で、選挙の期間になると団扇は駄目だとか、17歳以下の子がTwitterで選挙活動をするのは駄目だとか、難しいし、明らかに実態とそぐわない決まりがある。Twitterで"私は誰々を支持している。投票してくれ"と書こうとしたときに、OKかNGか事前に確認しないといけないとなると、みんな怖くてやらないし、内容に批判を受けるのも目に見えているから、関与したくない、面倒くさいと思ってしまう」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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