結愛ちゃん虐待死で求刑18年 雄大被告に7回面会した心理学者の法廷証言を読み解く
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 東京・目黒区で船戸結愛ちゃんを虐待死させた罪などで起訴された船戸雄大被告の裁判で7日、検察側は雄大被告に懲役18年を求刑した。

 その時、雄大被告は特に表情を変えることなく、下をうつむいたまま話を聞いていたという。しかし最後、裁判長から「何か話すことはありますか?」と聞かれると、涙を流しながら「本当に本当に申し訳ございませんでした」と述べ、この日の裁判を終えたということだ。

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 懲役18年の求刑について、一連の裁判を取材しているテレビ朝日社会部の古賀康之記者は「優里被告の求刑11年と比べると重いが、保護責任者遺棄致死に加えて傷害や大麻取締法違反の起訴内容もある。優里被告と比べても今回の事案に主導的な立場だったこと、5歳児を何度も殴ったことなどが考慮されたと思われる」と説明。同種の事案の中で求刑18年は重い方だという。

 また、雄大被告の供述からは自己保身が感じられる場面もあったといい、「4日の被告人質問では、言い切ると言質を取られる可能性もあるので、やや言葉を選びながら『~思っています』『~だと思います』と繰り返す場面が気になった」「雄大被告が述べるとおり結愛ちゃんと真摯に向き合おうとしたところもあったと思うが、優里被告との間の息子に対しては観光に行ったり十分な食事を与えていたりしていた。雄大被告は躾が行き過ぎたと主張しているが、息子との差を考えると疑問が残る」との見方を示した。

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 雄大被告と7回面会した弁護側の証人、山梨県立大学人間福祉学部学部長の西沢哲氏は、雄大被告について「自己肯定感が低く他者が自分をどう見ているかに過敏。両親が不仲で父親に対して強い怒りがあり、引っ越しも多かった。会社の中でも不適合感があり、人生の方向性を見失った。自分がどういう人生を歩みたいのかわからなくなり、意味を理想の家族にすることにしたのではないか」と証言している。

 また、結愛ちゃんへの虐待が始まったことについては、「(結愛ちゃんへの)無力感が高まっていき、自分の存在感のなさや無力感が強まった。冷酷な犯行に見えるが、実はやろうとしていることがどんどん悪い方向に行く典型例」と述べている。

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 こうした西沢氏の証言に、臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、「周囲に認められた感覚がなく自己肯定感の低さが極まると、人は自分で自分を肯定するしかなくなり、とにかく『自分の行動が正しいんだ』という発想で周りの人と接していく。その心理が子育てにも反映されたということだと思う。虐待の加害者は二面性や複雑性、不安定性をはらんでいることが多く、外面的なことと内面的なもののギャップもあったりする。裁判での言動や護送時の様子なども踏まえると雄大被告自身も自分がなぜこういうことをしてしまったのかが分かっていない可能性がある」とコメント。

 また、人をいかに愛するかという“愛着”の観点から、「“安定型”“不安定型”“回避型”の3パターンがある。子どもの虐待の背景には大人の側の愛着形成不全があることが知られていて、恐らく雄大被告自身があまり親からの愛情をうまく受け取れていなかったのだと思う。公判の記録から類推すると、父親が子どもにあまり関心を示さない回避型、そして両親が不仲だったことから、母親が不安定型だったとすると、雄大被告は基本的に子どもに愛情をうまく示せず、また優しいときと厳しいときのギャップが激しかったのではないかと感じる。それが虐待という形で顕在化したのでは」と説明した。

 藤井氏によると、“安定型”の人はおよそ5~6割だという。「“不安定型”“回避型”の愛着パターンを持っていたとしても、まずそこに気付いて客観的に自分を見つめ改善したり、その後大人になる過程で出会う人によって新しい愛着のパターンが築かれるというのはあり得ることだと思う。雄大被告は残念ながらそういう環境がなかったということが推測される」とした。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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