大阪で小学6年生の女の子を誘拐したとして伊藤仁士容疑者(35)が逮捕された事件で、保護された女の子とみられる子どもが雨の中歩く様子を、通りかかった車のドライブレコーダーが捉えていた。
映像には、雨の中傘をささずに歩く子どもの姿が。靴も履いていないように見える。この女児が「男の家から逃げてきました」「もう1人女の子がいます」と証言したことをきっかけに、伊藤容疑者は逮捕された。栃木・小山市の伊藤容疑者の自宅には、茨城県内で捜索願が出されていた15歳の女子中学生がいたことも判明した。
栃木の男と大阪の女の子。2人の接点はSNSだった。伊藤容疑者は10日ごろ、SNSで女児に接触。14日~15日ごろに「半年くらい前にうちに来た女の子がいる。話し相手になってほしい。うちに来ない?」と誘い出す。そして17日、女の子の自宅近くにある公園で待ち合わせ、在来線を乗り継いで栃木県まで移動したという。
SNSが原因で事件に巻き込まれた少年・少女の数は、2018年が1811人。統計を取り始めた2008年以降では2番目に多く、近年は小学生の被害も徐々に増えているという。
なぜ女児は、伊藤容疑者とSNSで知り合って1週間という短い期間にも関わらず会いに行ってしまったのか。臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は、実際に被害に遭った子どもなどの話から「3つの要素がある」との見方を示す。
「(1)話をきちんと聞くこと(受容)、(2)褒める・認めること、(3)居場所の存在を示すこと。まず、加害者が子どもの価値観を否定せずに話を聞いてくれた、という体験を持つことが多い。また、伊藤容疑者が『半年前に来た女の子の話し相手になってほしい』と言っているのは、『あなたならできるからお願いしたい』と認め、褒めているようなもの。そして、家に来て見て欲しいものがあるとか、共通の趣味としてゲームのコミュニティがあるとか、自由に使える部屋が空いているなどと伝え、居場所があることを示す。これら3つが揃うと誘われて行ってしまいやすくなる。家庭や学校など、その子が持つ現実世界のコミュニティの中で満たされないものがあると、ついそのような話に魅かれてしまうということはあると思う」
さらに、ネットには特殊性があるといい、「SNSだと文字だけでその人を判断しなければならない。SNSに出ている情報は人の情報のほんの一部で、見えていない大部分を根拠のない想像でカバーしてしまうところがある。仮に先に挙げた3つの要素を探しているとすれば、『この人は自分の心理的・物理的ニーズを満たしてくれる人なんだ』と過度に理想化して捉えてしまうのは子どものみならず大人でも生じうる物の見方だと思う」と指摘。
では、子どもにどのようにスマホ・SNSの使い方を教えていけばいいのか。藤井氏は「年齢が上がれば上がるほど、スマホを持たせざるを得ない社会環境になってきていることは明らかであるし、スマホにはGPSがついたりしていて、親の立場からすると持たせることで安心する面はある。なので、ペアレンタルコントロールやフィルタリングなどできることはするということと、SNSは小学生ぐらいならば親が定期的にチェックしたほうがいい。大人の中には『SNSはプライベートなもの』という観念があるが、基本的には低年齢時は親と共有するものだという前提で与えた方がいいと思う。さらに理想をいえば、SNSが親子の話題に上がったり、『こういうメッセージが来ているんだけど、どう返信すればいいかな』と自分から相談してくるような関係性を目指せると、それが子供を危険から守る一つの予防策になる」と訴えた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)