ボーナス減、キャッシュレスポイント終了…日本経済は下り坂?来年夏頃にはさらに厳しく?
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 13日、経済の動向を図る日銀短観(「全国企業短期経済観測調査」)が発表された。これは日銀が全国1万社の企業を対象に行う4半期ごとの統計調査で、大企業・製造業が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた数値を意味する指標DI(業況判断指数)は前回(9月)の調査に比べ5ポイント悪化の「0」となった。この指数の下落は4四半期連続、つまり1年を通じて下がっていったことになり、6年9カ月ぶりの低い水準だ。

 主な原因は米中貿易摩擦による海外経済の減速で、自動車などの輸出関連の業種で景況感が悪化したことが関係しているという。日銀短観だけでなく、中小業況も合わせて見ると、製造業では16業種のうち11業種で悪化したのは3業種だけだった。とくに自動車は消費増税の影響か、13ポイントも下落している。

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 元日銀マンでエコノミストの鈴木卓実氏は「今回の日銀短観は、まさに自動車業の悪化が目立っている。自動車には鉄、ガラス、アルミ、そしてタイヤにはゴムも使われている。また、今の自動車はほとんど電子製品の塊なので、半導体も含めれば、かなりの業界に波及する。最近の数字を見ると新興国で日本車の売り上げが落ちているし、米中貿易摩擦で中国の景気が悪くなっているので、世界的に日本車の伸びがちょっと良くない。どこかで自動車に盛り返してもらわないと、なかなか悪い局面を抜け出せないと思う」と話す。

 「自動車否定論者もいるが、私はまだ期待している部分がある。最近“モビリティ・アズ・ア・サービス”ということが言われているように、公共サービスも含めて最後のワンマイルは自動車で物を運ばないことにはどうしようもない。電気自動車や自動運転など、新しい技術が一気にできてきているので、世界と戦っていけるかどうかが試されている」。

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 また、鉄鋼は東京五輪特需も一服か、9ポイント下落し、業務用機械も16ポイント下落となっている。「鉄については、中国が景気回復のために設備投資などをかなり頑張っているせいで鉄鉱石の値段が上がっており、それで日本の鉄鋼メーカーの収益が厳しくなっている。また、台風の被災も影響もある。他に気になるのは業務用機械だが、研究開発に使うような機械の調子があまり良くないということで、将来の利益の種をうまく掴めているのかが少し心配だ」とも話した。

 さらに非製造業でも、12業種のうち小売業、卸売業、建設業、サービス業など6業種で指標が悪化。小売は消費増税の影響か、7ポイントも下落。ただ、不動産は5ポイント下落も引き続き好況で、建設も4ポイント下落してはいるが、引き続き好況のようだ。また、中小企業庁が全国で行う「中小企業業況調査」でも景況感を示す指数が4期連続で悪化。東京23区の中小企業調査(東京商工会議所)の調査では、景況感の指数が3カ月前に比べ大幅に下落、東日本大震災のあった2011年以来の下げ幅となっている。

 「駆け込み需要の反動減がしっかり出ているので、消費税増税の影響だ。また、台風の影響は大したことがないという意見もあるが、実際には工場が止まっていて生産のサプライチェーンに被害が出ているところもあるので、これらがどれだけ回復していくかも見極めなけなければいけない時期だと思う」。

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 10月の消費増税で、個人消費が落ち込み小売業も悪化。来年にはオリンピックも控えてはいるが、それ以降の大規模イベントは2025年の大阪万博のみだ。今後の見通しについて鈴木氏は、米中貿易摩擦の行方と所得に注目する。

 「当初は米中貿易摩擦がこんなに長引くと思っていなかった。来年のアメリカ大統領選挙が終わるまでは中国相手に駆け引きをするのがトランプ大統領の戦略だろう。だからしばらくは睨み合い、我慢が続くと思う。もう一つは、雇用が全く回復してないことが懸念材料だ。日経新聞の調査では、今年の冬のボーナスは前年よりも悪いそうだ。経団連の調査もクリスマス前後に数字が出くるが、これもおそらく下がっているだろう。今年は4月に働き方改革が始まって、来年には同一労働同一賃金が始まるが、おそらく正社員の待遇を下げて非正規に合わせるという方向に行くと思う。やはり春闘が一つの試金石で、そこでボーナスの方向が見えてくる。そして6月にはキャッシュレスポイントの還元期限も切れる。悪い状況が夏前後に重なりそうだ。結局、祭りで盛り上げたとしても構造的に賃金は良くならない。厳しい局面になってくるが、スキルアップの時代でもあるので、個人がかなり頑張らなければいけなくなるだろう」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:日本の景気は悪化傾向?元日銀マン解説

日本の景気は悪化傾向?元日銀マン解説
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