“痴漢”疑われ逃走…「ごく普通のサラリーマンが多い。スイッチを入れないような生活が重要」治療の現実
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 17日、都営新宿線の神保町駅構内で、痴漢を疑われ逃走した際に際に捕まえようとして揉み合いになった20代の男性を階段から転落させた疑いで男が逮捕された。男性は一時、意識不明となり、妻がTwitterに悲痛な思いを投稿したことから大きな話題となっている。

 一方、逮捕された容疑者は取り調べに対し「もみ合いになっただけで怪我をさせたわけではない」と、痴漢行為と併せて否認している。ただ、容疑者は2007年に電車内で女性の身体を触ったとして東京都迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されており、処分保留で釈放された後、警視庁を依願退職している。事件当時、容疑者は少子化担当大臣だった高市早苗議員のSPを担当していて、高市議員は「そばでご縁をいただいた人間としては何かの間違いであって欲しい」とのコメントしていた。

 性犯罪の類型別特徴では、痴漢は盗撮と並び前科率が高く、3回以上の累犯が高いという傾向がある。こうしたことから「社会的地位を失ってもなお再犯とは。病気ではないか」「理性で止められない痴漢は依存症だ」といった声も上がっている。

“痴漢”疑われ逃走…「ごく普通のサラリーマンが多い。スイッチを入れないような生活が重要」治療の現実
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 性犯罪、依存症問題に詳しく、『男が痴漢になる理由』の著書もある精神保健福祉士の斉藤章佳氏は「バレないように繰り返す中で徐々にエスカレートしていくという特徴がある。そういう意味では捕まりづらいという特徴があるし、止めるための治療につながるまで、かなり長い時間がかかってしまう。当院のデータでは平均8年だ。その間、相当数の被害者が出ていることになる。しかし初診はほぼ100%が逮捕された後で、“逮捕されていなければ続けていましたか”と尋ねると、皆さん“はい”と答える。ただ、治療の中で出会うのは、我々が社会で出会う普通の男性たちだ。特に痴漢や盗撮は四大卒で妻子がいてサラリーマンが最も多いともいわれている。痴漢行為をする人が全員依存症というわけではない」と話す。

 斉藤氏が所属する榎本クリニックの調べ(2013年)によれば、痴漢行為中の勃起について「している」が約3割、「していない」が約5割、「どちらの場合もある」が約2割というデータもあるという。「勃起しているかどうかが男性の性欲を測る尺度にはならないが、射精を伴うかどうかも含めて、ほとんどそうでないという人が多いことが明らかになっている。痴漢といえば性的な逸脱行動で、原因は性欲であると言われることが多いが、800例以上のヒアリングの中では、“性欲が抑えきれなくてやってしまった”という人はほとんどいなかった。それよりも、自分がした行為によって相手の女性が電車に乗れなくなる、もしくは電車に乗った時に行為を思い出す、いわば支配する、人生に爪跡を残すという感覚が非常に強い」。

 そんな中、新たな痴漢防止対策も始まっている。JR東日本は今月下旬から「痴漢防止アプリ」の実証実験を埼京線でスタート。アプリのボタンを押すと乗務員に通知され、車内放送で注意喚起が行われるというものだ。

 「私も去年からJRとミーティングを重ねてきている。被害者と加害者にダイレクトなメッセージを送るという意味もあるが、痴漢の問題には第三者のサイレントマジョリティに注意喚起を促すことで、痴漢の抑止につなげていこうというのが目的だ。また、名古屋では中に大きな鏡を設置した車両もある。ただ、常習者の中には、防犯カメラなどのある環境で行為を達成することで常習化をさらにしていくと話す人もいる。つまり、監視することが問題行動を亢進させる要因になるという層もいる」。

 その上で、依存症の場合の治療について斉藤氏は「当院の場合、初診の段階でヒアリングをしっかりとる。基本的には治療にモチベーションがある方々なので、何とか止めたい人がほとんどだ。依存症は、ある特定の状況や条件下で衝動の制御ができない人なので、治療プログラムとしては、その条件、引き金を明確にし、具体的な対処行動を反復して学習することが初期の課題になる。都内に住んでいると電車を全く使わないということが難しい方もいるが、プログラムを受けている方の中には、始発に乗る、座れない場合は必ず降りる、職場近くに転居し自転車等で通勤するといった具合に、スイッチを入れないような生活スタイルを確立していく」とした。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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