「公の議論がなかった」香川“ゲーム規制条例”採決傍聴の弁護士に聞く
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 18日、香川県議会で全国初となる「ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」が可決された。18歳未満の子どものゲーム時間を平日1日60分/休日90分までとする。

 香川県は採決前日の17日、「県民の多様な意見を聴取する機会の確保」として実施したパブリックコメントを公表した。内訳は「賛成」が2269、「反対」が401、「その他」が16。県民の意見では84%が賛成で、事業者側の意見は94%が反対となった。一方、90ページにわたる資料のうち、反対意見が80ページに及ぶ中、賛成意見はたったの1ページだった。

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 今日の討論でも反対意見が相次ぐ中、賛成多数で可決した本条例。この議会を傍聴した田岡・佐藤法律事務所の佐藤倫子弁護士は、採決について「すぐ終わってしまったという印象」と話す。

 また、パブリックコメントで県民から賛成の声が多数寄せられたことについては、「県民の84%が賛成ということだが、賛成といっても中身のないような定型的な書式に名前を書いてほしいという話もあったと聞いている。動員がなければ、この2000という数字ほど自ら情熱を傾けて賛成の意見はなさらなかったんじゃないか」との見方を示した。

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 今回の条例の問題点として、佐藤弁護士は「公の議論がなかったこと」をあげる。

 「検討委員会は7回開かれて、初めて素案が出たのが1月の第5回。そのあたりの議事録は作成されていないし傍聴もできないということで、どういうことが議論されていたか全くわからなかった。素案に対して各所から批判があったが、それを受けた第6回、第7回も非公開で、もちろん議事録も作られていない。批判があったにも関わらず、改善や公開がなされないままここまで来てしまった」

 一方でこの条例に強制力はなく、実効性は不透明だ。「もともとはインターネット利用に対する形だったものが、批判を受けてゲームだけになった。はじめは『基準』としていたものも『目安』に緩めて、あくまでも家庭で話し合ってルールづくりをしてもらうためのもの、制限ではないんだというイメージにしている」と佐藤弁護士。

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 さらに、条例では県や学校等の責務のほか、保護者の責務として「保護者は子どもをネット・ゲーム依存症から守る第一義的責任を有することを自覚しなければならない」「保護者は、乳幼児期から、子どもと向かう時間を大切にし、子どもの安心感を守り、安定した愛着を育むとともに、学校等と連携して、子どもがネット・ゲーム依存症にならないよう努めなければならない」と明記している。

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 では、裏を返せば愛情が足りないと依存症になるのか。慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は、「ゲーム依存は“行為の依存”の分野に入るらしいが、行為の依存はその行為によるものではなくて、『自分に自信が持てない』『友達とうまくいかない』『親や先生に褒めてもらえない』といった時の不安や孤独から逃げるために、別のものに依存してしまうということが多いらしい。つまり、ゲームをする時間が長からといってゲームに依存するというわけでないようだ。子どもを依存から守るためには、学校の勉強やスポーツだけでなく、なにか自信を持てるような場面・機会をつくってあげることが大切なのに、ゲームという行為そのものを制限しようとしているのは残念だと思う」との考えを述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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