「記者会見場やテレビ番組のスタジオは人がギュウギュウ詰めだ」ロンドン在住の医師が日本の現状に警鐘
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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府は26日、特別措置法に基づく「政府対策本部」を設置。また首都圏の5都県知事が、今週末の不要不急の外出について自粛するよう、相次いで要請を発表した。同日夜のAbemaTV『AbemaPrime』では、公衆衛生・感染症対策が専門で、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院に留学中の清水一紀医師に話を聞いた。

 まず清水医師は厳しい状況が続くロンドンの現状について次のように話す。

 「もともと3月12日頃には8月頃までに25万人くらいが亡くなるという推計の上で、“集団免疫”を目指して緩やかにやっていこう、という流れがあったが、科学者、あるいは国民の間に、“これは目指すべき政策ではなく、結果だ”という話が出てきて、数日で状況が一変した。16日頃にはボリス・ジョンソン政権が方針を転換した、高齢者は自宅に残り、イベントは中止し、学校は閉鎖してという流れになった。今は街中ほぼ全ての店が閉まっていて、私が滞在している寮も2人以上の集会は原則禁止という状況だ。日用品や食材を扱うスーパーマーケットだけが開いていが、やはり並ばなければならないし、品物が無くなってしまっている」。

 また、清水医師は「正直なところ、現在うまくコントロールできているのは中国の武漢くらいだ」と指摘する。

 「3月前半の段階では台湾やシンガポールが封じ込めに成功していた。しかし、どこの国も海外からの“輸入”の症例が増えてきている。また、ドイツの致死率が低い理由は、ICU、集中治療室のベッド数にある。8~9割くらいの患者さんが緊急救命病棟のベッドで亡くなっているが、ドイツでは10万人あたり29~30くらいの医療体制だからだ。それに対し、医療崩壊が起きたイタリアは10万人あたり12.5くらい。ちなみに、あまり報道されていないと思うが、日本は10万人あたり7くらいで、実はイタリアよりも少ない。それで東京があと数週間でキャパシティを超えてくるという話になる。集中治療は本当に専門性が高く、人工呼吸器に関しても管理する専門家が必要で、医師だからといって全員ができるわけではない。しかも日本の場合、普段は麻酔科や救急外来で診療をしながら、兼任で診ている方が多く、24時間専任は非常に少ない」。

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 その上で清水医師は「専門家会議のメンバーによる先日の会見でもわかる通り、専門家の方々のでき得る限りの努力によって都市封鎖を避けようとしてきた。しかし、この2、3日で東京を含めた首都圏の危険性が相当高まってきていると思われる。25日、26日の数字は、あくまでも3月15日前後に感染された方々についてのもの。K-1のイベントが行われたり、自粛ムードが解禁ムードになったりしていたので、どうしても都市封鎖のような対策を取らざるを得ない状況になりつつあると判断している。「特措法が通ったということがあるが、あくまでも自粛要請ということで、強権的なことはなかなかできないのが日本の法律だ。そういう中で市民の行動を変えていかなければならない。また、状況は毎日変わっていくので、昨日言っていたことが今日アプライできるとは限らない。政策も一週間くらいのレンジで見てはいけない、そういうスピード感を持ってどんどん変わっていくものだという意識を政策立案者と国民も共有しなければならない」と警鐘を鳴らす。

 「何とか乗り切って欲しいという思いはあるし、少しでも貢献できることがあればと思う。2点、今の日本に対してのメッセージがある。一つはバルネラブル(vulnerable)。妊婦の方や高齢者の方を守るということが社会として大事になってくる。しかしマスクなどが医療現場の前線に渡っておらず、医療関係者や患者さんが危険にさらされているということを共有していただきたい。もう一つはソーシャル・ディスタンス(social distancing)。一定の距離を保つことで、ある程度の感染は抑えられるということが分かってきている。イギリスの議会では距離を取って審議を行うようにしているが、日本では専門家会議などの会見も、テレビ番組のスタジオなども人がぎゅうぎゅう詰めになっていて、そこからパンデミックが起きかねない。そういう、できるところから変えていかなければならない」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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