宿題に担任、クラス、修学旅行、運動会も不要? 心理学的原則で考えるwithコロナの新しい教育
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 「小学1年生は学習の習慣づけの大事な時期。それが全く始まらなかった。家でやらせないといけない、家庭で全部を見なきゃいけない、というのは結構なプレッシャーでもある」

【映像】担任不要? “withコロナ時代”の教育は

 こう話すのは、都内在住の小学1年生の子どもを持つ保護者。子どもの教育環境を充実させるため、3月上旬に行かせたい学校の側に引っ越したという。しかし、長引く休校など学びの形が変わってしまった“コロナ禍”で、学校現場の現状に不安を抱えている。

 「(違う学校に通わせている保護者の)話を聞くと、全くノータッチらしい。1年生に上がっているはずなのに『すべてそれぞれの家庭にお任せします』という形だそうで、うちみたいな共働きだとどうしても保護者負担が大きくなりすぎてしまう」

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 教育に熱心な学校とそうではない学校で広がる格差。この問題は以前からあったが、休校措置により学校に通えなくなった今、オンライン授業を受けられる子どもとそうではない子どもたちの間で“デジタル格差”の問題が新たに浮上しているという。

 「どこが悪いと言っているわけではないが、プリントが郵送されてきて、マルを付けてもらうために返送するということをする学校も結構あると聞いている。それだと先生も大変だし、子どもも時間のギャップがある。双方向という感じもないし、友達がいるという感覚も感じられないかもしれない。オンラインででもなんとなく繋がれるのはありがたいと思う一方、格差は出てきてしまうのかなと思う」

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 こうした状況を懸念し、自治体なども対策を進めている。東京・渋谷区では、区立の小中学校26校のすべての児童に、日本マイクロソフトの最新タブレットを今後1万2500台導入していくという。また、愛知県はすべての県立高校と特別支援学校で、生徒と教師14万人が6月から個人用のスマホや学校のパソコン教室で民間のオンライン学習支援サービスを利用できるようにするとしている。

 しかし、こうした取り組みはまだまだ全国的には広がっていない。朝日新聞によると、文部科学省の4月16日時点の調査では、休校中または休校予定の1213自治体のうち、デジタル教材を使うのは29%で、双方向型のオンライン指導をするのはわずか5%だったという。

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 オンライン教育が広がっていない背景には、教育現場でのICT(情報通信技術)配備の遅れや、教育用PC1台当たりの生徒数が5.4人と多いことがあるとされている(2019年3月時点、全国平均)。また、現場からは「全生徒が参加できないと不公平になる」「他の先生には使いこなせない」といった声もあがっているということだ。

 こうした現状に、臨床心理士でスクールカウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は「小中学校や高校に関していえば、特に公立学校はあまり進んでいない印象だ。現場から『全生徒が参加できないと不公平』という声があるが、パソコンがそれなり普及している中で、ない家庭には学校のものを貸し出したり、さしあたりスマホも活用するなどすればいい。『他の先生には使いこなせない』というのも、何もプログラミングをやれと言っている訳ではないので、教職に就く能力があるのなら例えばビデオチャットツールを使うぐらいはできるはず。これらの声は本気で進めていく気持ちがないと捉えられても仕方ないと思う。国あるいは自治体から指示がなければ現場が動けないというのはそのとおりだが、とはいえ学校の裁量でやれることもやれていないのでは。未だにメールでの発信さえしていない学校は多くある」との見方を示す。

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 また、デジタル格差が生まれる背景に、『全て対面授業が前提』『子どもや保護者の受け身姿勢』『大人のITアレルギー』の3つがあると指摘。「大人のITアレルギーというのは保護者にも言えて、パソコンがなくてもスマホは持っていたりするが、オンライン対応となると『私そういうの詳しくないので』とアレルギーを示してしまう人がいる。また、コロナ禍の休校で、子どもや保護者がいかに教育に関して受け身だったかということが浮き彫りになった。言葉を変えれば、いかに子どもの教育が学校頼みだったかということ」と述べた。

 withコロナ時代の新しい教育を考える上で、藤井氏はこれからの学校教育に宿題や担任、クラス、修学旅行、教科書、運動会などは不要または見直しが必要で、履修主義から修得主義に変えていくことが重要だとの考えを示す。

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 「この機会をポジティブに捉えて、オンライン化だけでなくいろいろなことを見直していけるといいなと思う。そもそも大きな問題だと思っているのは、子どもたちの自己決定に基づかない教育があまりにも多いこと。宿題はある程度の選択肢の中から選ぶようにしたり、担任も大学のゼミみたいに逆指名制でもいいのではないか。そうするとよい意味で学校にも担任にも緊張感が生まれるし、子どもたちも『自分で選んだことだから』と最後まで納得して活動ができる確率が高まる。“やらされてる”は高い確率で“やりたくない”につながるのが人間心理の原則だ。

 また、集団活動を通じて狙っている教育効果も、旅行や運動でなければ得られないということではない。そもそも一定以上の人数で集まることがリスクになる中で、マイナーチェンジはありながらも、数十年根幹は変わっていない活動の多様性を考える柔軟性がなければ、それが思考停止につながり、今回のコロナ禍のような状況で、必要なことを考えられなくなる」

 また、「子どもの能力は大人の想像を超えることがあるので、自分で選んで学び始めた子どもたちの可能性を生かすためにも自己決定は大事だ」とし、「どれくらいの時間で何に参加したかという『履修主義』から、何を学び、目標に達したかを基準にする『修得主義』をベースに考えていくべきでは」と付け加えた。

ABEMA/『けやきヒルズ』より)

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