悪意が悪意を呼ぶ連鎖も…木村花さんの死と誹謗中傷に心理学専門家「まだ人類には使いこなせないツール」
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 フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラー木村花さんが23日に亡くなった。22歳だった。23日未明、木村さんは都内の自宅から心肺停止で救急搬送された。死因はわかっていないが、関係者によると、現場では硫化水素が検知されたという。木村さんが亡くなったことを受け、番組は25日深夜の放送を休止。Netflixも明日26日、6月2日の配信を休止するとしている。

▶【動画】SNSにおける禁止事項5つ

 「お母さん産んでくれてありがとう 愛されたかった人生でした そばで支えてくれたみんなありがとう。大好きです。弱い私でごめんさない」

 「愛してる、楽しく長生きしてね。ごめんね。さようなら。」

 Instagramにこう残して亡くなった木村さん。所属事務所は「突然のことでファンの皆様、関係者の皆様には深いご心配と、哀しみとなり、大変申し訳ございません。詳細につきましては、いまだ把握出来ていない部分もあり、引き続き関係者間の調査に協力して参ります」とコメントを出している。

 SNS上では、テラスハウス内での木村さんの言動などに対して誹謗中傷するような投稿がされていた。木村さんのTwitterにも「毎日100件近くの率直な意見 死ね、気持ち悪い、消えろ、今までずっと私が1番私に思ってました」と綴られていた。

 木村さんの死は世界にも波紋を広げている。BBCは、「木村さんは、テラスハウスのファンなどから毎日数百もの中傷ツイートを送られていたとされる。訃報を受け、ファンやプロレス業界は、ネット上でのいじめやメンタルヘルスへの影響について声をあげ始めている」と報じている。

 また芸能界からも「知らない顔も見えない人に心無いことを言われ 知らない顔も見えない人に殺害予告されたり 人間が一番怖い生き物だよ。ルールもないし 罰則にもならないからなくならない 耐える 我慢 気にしない 方法はそれだけなのかなって悲しくなります」(藤田ニコル)、「誹謗中傷を気にするな なんて難しいよ 芸能人だって1人の人間だよ 忘れないで」(きゃりーぱみゅぱみゅ)、「個人的には特定して法の下で裁きを受けてほしい」(田村淳)といった声が相次いだ。

 SNSにおける匿名での激しい中傷について、レイ法律事務所の山本健太弁護士は「損害賠償請求というところ民事上の責任追及は当然この後検討される可能性がある。仮に脅迫的な内容が含まれていた場合は、それを根拠に脅迫ということころの刑事上の責任を取らされる可能性はある」と指摘。その一方で、木村さんが亡くなった後、匿名で誹謗中傷した人たちは次々とアカウントを削除しているが、今度はそのアカウントを特定し、暴言を吐き、名前や住所を晒す私的な「制裁行為」も散見される。悪意が悪意を呼ぶ連鎖は、今も続いている。

悪意が悪意を呼ぶ連鎖も…木村花さんの死と誹謗中傷に心理学専門家「まだ人類には使いこなせないツール」
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 番組出演者に向けられた心ない誹謗中傷が招いた悲しい出来事について、臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏「またこういうことが起こってしまったなという、残念で愕然とする。本当に悲しい」とコメント。「木村さんが亡くなったことに関して、いろいろと考えられるポイントはある。番組の在り方も含めてだが、特にSNSについては、まだ人類にはうまく使いこなせないツールなんだなということが、改めて感じられた」と指摘した。

 SNSは今や世界中で使われているツールではあるが「思っている以上に精神的にぎりぎりの人がいる」状況でもあり、「誹謗中傷されたら無視をすればいいという意見もあるが、有名人の方であれば、SNSが仕事場になっている方も多く、仮にアカウントを削除してしまえばファンも失うことになる。無視することが基本的にはできない」と、一概に「無視」という選択だけではクリアにならない問題だと語った。

 藤井氏は、SNSを使う上で5つの禁止事項を提案している。感情論(感情は自分で処理)、

粘着質(1回言えば分かる)、人格否定(批判するなら行動について)、死ね(生死は誰にも決められない)、扇動(1人で何もできないなら言わない)というものだ。どれもが「わきまえている人にはなんでもない当たり前のこと」ではあるものの、感情的な発散の場にしているユーザーも多く、また「ある時は批判、ある時は擁護というように言動が一致しない人も多い」のが実情だ。

 また、行動ではなく人格そのものを否定するような言葉について「死ねと言っていけないのは、小学生でもわかること」だが、「消えろ」「お前なんかいらない」というような言葉を、粘着的に繰り返し言うことで、相手の精神を追い込んでしまうケースも珍しくない。さらには、1人の発言では弱いものでも、周囲を扇動することで、大きな力になってしまうこともある。「(誹謗中傷を)受ける人にとっては多勢に無勢で、そのインパクトは計り知れない」と、攻撃を受ける側が自分だけで対応できることではないとも解説した。

悪意が悪意を呼ぶ連鎖も…木村花さんの死と誹謗中傷に心理学専門家「まだ人類には使いこなせないツール」
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 誹謗中傷を受けた人が泣き寝入りする状況を打開するためには、加害者に対する大きなペナルティを課すべきという意見もある。藤井氏の見解としては「厳罰化も必要。ただ、厳罰化や誹謗中傷をした個人が特定されやすくなるというのは、一定の抑止効果があるものの、人間の行動心理からすると、罰を加えるだけでは限界がある。罰で全てが解決するなら、多くの犯罪は既に無くなっているはず」と冷静だ。「なぜ人を攻撃してしまいたくなるのかという根本的な部分を考えて、どう他の行動に置き換えるかとか、衝動があった時にどう解消するかまで、セットで考えないといけない」と、誹謗中傷に対する罰と同時に、その行動自体を解消することの模索も求めた。

ABEMA/『けやきヒルズ』より)

▶【動画】SNSにおける禁止事項5つ

粘着質NG…SNS<5つの禁止事項>
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