現実世界をスキャンし、“もう一つの地球”を再現「ミラーワールド」の可能性とは
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 最先端科学や未来のトレンドを紹介する雑誌「WIRED」も注目する新概念「ミラーワールド」。同誌の日本版編集長・松島倫明氏は「世界を全てスキャンし、現実の世界をデジタル化したもう一つの世界が生まれる。それがミラーワールドだ」と説明する。

・【映像】世界をスキャンして情報化 もう一つの地球"ミラーワールド"ってなに?

 つまり、実際の都市、建物、自然など、あらゆるもの24時間継続的にスキャンすることが可能になれば、現実世界と全く同じ状態の地球を再現することができるのだ。しかも、そんな夢の技術ミラーワールドの完成を後押ししたのが、皮肉にもコロナウィルスだという。

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 「パンデミックによってリアルワールドでの活動できなくなったために、ミラーワールドで何ができるのかをクリエイティブに考え始めた。そのことによって、これから2年くらいかけて実現したかもしれないことが、2カ月で実現するかもしれないというくらい、ミラーワールドの建国が一気に進んでいる」(松島氏)。

■路地までリアルに再現された「バーチャル渋谷」が登場

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 『ABEMA Prime』では、ミラーワールドの発想で作られた「バーチャル渋谷」に潜入取材を試みた。5月19日にオープンしたばかりで、アニメ『攻殻機動隊』とのコラボも行われている。

 バーチャル渋谷内の109前で待ち合わせをしたのは、企画したKDDI株式会社の繁田光平氏と、仮想空間の制作を担当したクラスター株式会社の成田暁彦氏。2人に町並みを案内してもらうと、スクランブル交差点の周辺の光景は、かなりの再現度。看板の位置や建物の並び、道の幅など、現実の町を忠実に再現されており、まさにもう一つの渋谷だ。「途中の細い道を覗いてみると、奥まで全て作ってあって、“あのお店もちゃんとあるね”と、分かるように作っている。スクランブルスクエアのビジョン広告はかなりのお気に入りだ」(成田氏)。

 一方、繁田氏は「テレビを見ていると、渋谷のスクランブル交差点が、“どれだけ人が来ていないか”を見る場所になってしまっている。こういう状況に対して何かできることはないかと考えた時に、人がどれだけ集まっても大丈夫な渋谷を作り、そこで音楽イベントなどを発信し続けることが大事ではないかということで実現に至っている」と話す。「緊急事態宣言は明けたが、一気にリアルの渋谷にお越しいただくことは難しいと思う。だからこそ、バーチャルとリアルの同時開催のイベントをやっていかなければいけない」。

■『セカンドライフ』の頃にはできなかったことができるようになった

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 VRジャーナリストの久保田瞬・株式会社Mogura VRの代表取締役は「『セカンドライフ』の頃はポリゴンむき出しですごく不自然だったし、ネットワークが遅かったり、高いPCがなければ体験できなかったりといった問題もあった。しかし今は5万円程度のPCとヘッドセットを買うだけで、VRの中でいい感じに体を動かせるようになってきた。バーチャル渋谷もそういう実験の一つだ」と話す。

 「VRはその世界に入って物に触れたり、ストーリーを体験したりという、今までにないメディアだ。5年ぐらい前から色々なデバイスが発売されているし、皆さんもプレイステーションなどで聞いたことがあると思う。ただ、市場に出始めた2016年当時は、単純にこれまでのゲームをVRにしただけだったり、ポケモンGOなどのようにゲームとして人気があるものにARの機能をおまけで入れてみたような、比較的実験的な取り組みが多かったりした。しかし今や、どういうふうにすればVRで面白いコンテンツが作れるかという開発が世界中で行われるようになってきていて、例えばGoogle ストリートビューのVR版に入ってみると、圧倒的にその場所に行った感覚が得られる。最近では焼け落ちてしまったノートルダム大聖堂が再現され、中に入ることもできる。クオリティも非常に高い。また、数人のチームで作ったVRのゲームが数十億円規模の売り上げを上げている事例もある。まさにこれから伸びていくかなというタイミングで、コロナのことがあった。一緒に何かをすることができなくなる中、例えば“VR映画館”みたいな形で友達と一緒に作品を観られるなど、VRの普及を後押しするような状況が出てきている」。

■どのようにバリューを出すかが課題

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 インタラクションデザイナーの深津貴之・THE GUILD代表は「例えばウォルマートではスタッフのトレーニングにVRを使っていて、この分野での市場は大きく広がると思うし、将来的には軍事・警察などでも使われるようになるのではないか。一方で、大衆に普及するまでにはかなりの時間がかかるのではないか」と話す。

 「インターネットの利便性は抽象化することで生まれていると思うので、それをわざわざ具体化させて、どのようにバリューを出すかが課題だと思う。つまり、右クリックでストアAからストアBに移動できることに価値があるのに、バーチャル渋谷に行って、パルコから109まで15分かけて歩くことに価値があるのか、ということが問われるということだ。また、現時点ではVRで新しく手に入る情報やコンテンツに対して、制作コストやマーケットサイズが合っていない。逆に言えば、360度全方向を見る価値があるコンテンツをどうやって見つけるかという話になる。ランニングマシーンやエアロバイクみたいなものと組み合わせて世界を走れるといったような、極端に具体性を上げてしまうことが考えられる」。

 その上で深津氏は「50年語の話」として、「最終的には1つのVR空間を皆で共有するというよりも、それぞれが全く違う世界に属しながら同じ空間にいるという方向にいくのではないかと考えている。例えば同じ看板でも、人によって違うものが見えるみたいに、世界がそれぞれにパーソナライズされるのではないか」と予想していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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