町山智浩氏「僕も黒色スプレーをかけられた」 黒人差別への抗議行動に紛れて略奪・破壊を繰り返すアンティファ、ブラック・ブロックとは
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 複数の都市でスーパーや商店が襲撃・略奪されるなど、全米各地に暴動や混乱が広がっている。ミネソタ州で白人警官が偽札を使おうとした黒人男性・ジョージ・フロイドさんの首を膝で押さえつけ死亡させた事件への抗議活動が、当初とは異なる様相を呈しているのだ。ジャーナリストの堀潤氏は「“黒人が悪い”という短絡的な議論になりがちで、メディア発信も問われている」と懸念を示す。

・【映像】"アンティファ"ってどんな人たち? デモの実像

 カリフォルニア州在住のコラムニスト・町山智浩氏が撮影した映像には、警官隊の目の前に跪き、黒人差別に抗議の声を上げる白人女性の姿があった一方、略奪を行い、警官隊と衝突する人たちの姿も収められている。

■「リーダーもいなければ、会員になるというようなこともない」

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 1日の『ABEMA Prime』に出演した町山氏は「年齢や人種が完全に入り混じっているが、大きく分けて3種類の人たちがいる」と話す。

 「一つ目は“プロテスター”(protesters)と呼ばれる、黒人への暴力に抗議する人たちで、僕の映像に出てくる、警察に訴えかけている女性がそうだ。多くはプラカードを持ち、警察署に行って意思を伝えようとしている。二つ目が“ルーター”(looters)と呼ばれる、略奪すること自体が目的の人たちだ。はっきりした政治的主張があるわけではないし、警察署ではなく商店などに行く。例えばオークランドではスーパーや家電量販店が襲われたが、むしろ略奪を止めようとしたのは黒人たちだったようだ。そして三つ目が“ヴァンダリズム”(vandalism)といわれる、破壊しに来る人たちだ。商店から物を奪う、銀行でお金を奪うというよりも、連邦政府の建物やスターバックスなどのグローバル企業、その店舗を襲撃する。そもそもアメリカではワールドシリーズやスーパーボウルなどの大きいスポーツの試合、あるいは政治的なデモが行われる時に現れて、略奪や破壊をし、街をめちゃくちゃにしたり、警官に石を投げたりして、状況をカオスにしようとする」。

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 その上で町山氏は、今回の暴動で注目を集めている「アンティファ(Antifa)」と呼ばれる人たちについて次のように説明する。

 「アンチ・ファシズム(Anti-Fascism)の運動から派生して出てきた人たちで、トランプ大統領を支持する右翼や白人至上主義者に対抗、集会に現れて物を投げたり、殴り合いをしたりしてきた。それがさらに精鋭化したのが、最近出てきた全身黒ずくめの“ブラック・ブロック”(BLACK BLOC)だ。もはやアンチ・ファシズムでもなく、反資本主義・無政府主義(アナキズム)なので、大統領就任式で放火事件を起こしたり、民主党に対しても攻撃をする僕が連邦政府のビルが破壊される様子を撮っていたら、ブラック・ブロックに黒のスプレーをかけられ、ビデオカメラがこの通りになった」

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 こうした状況を受け、トランプ大統領は30日、「暴力と破壊行為は“アンティファ”と他の左翼急進グループが主導している」と発言、翌日には「アメリカはアンティファをテロ組織と認定する」とツイートしている。

 しかし町山氏は「アンティファとブラック・ブロックが興味深いのは、組織ではないというところだ。リーダーもいなければ、会員になるというようなこともない。お互いを知れば組織になってしまうし、誰かが捕まって証言すれば共謀したとされてしまうので、集まってもお互いに話もしないのがルールだといわれている。だから呼び掛けすらほとんどなく、“何月何日何時にどこで”というSNSの投稿を見て、リツイートなどもせずにパッと集まって、パッと解散する。“フラッシュモブ”のような感じに近い。また、ブラック・ブロックがやるのはせいぜい車に火を付ける程度だし、持ち物もスケボーくらいで、凶器準備罪にも当たらない。だからトランプ大統領が“組織”と呼んだが、彼らをテロリストに認定をしても無駄だ」と指摘した。

■カギは給付の第2弾や、家賃の免除、そして警察の謝罪か

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 また、ここまで暴動が拡大している背景について、町山氏は「コロナによる経済危機が根本にある」との見方を示す。「1930年の大恐慌もリーマショックも、金融の問題、バブルの問題だった。しかし今回は実体経済の縮小というかつてない問題だ。戦争が起きれば大量生産・大量消費が起きるので特需になるが、それとは逆。おそらくアメリカにとって初の経験ではないか。しかもロックダウン状態が3カ月も続き、失業者は4000万人を超えている」。

 「実は4月の段階ではアメリカの犯罪発生率は史上最低だった。みんなが家に皆いたこと、トランプ大統領が全国民に対し5月頭に13万円ずつを支給すると約束、その後も失業者に毎週6万5000円ずつを支給していた。だから支持率も政権史上最高の49%を記録した。しかし、アメリカの家賃は今とんでもなく高騰をしていて、ニューヨークの下町の貧しい人たちが住んでいるブルックリンでも、60平方メートルの平均家賃が30万円に達している。さすがにロックダウン状態が3カ月になると貯金も底をつき、家賃も払えなくなる。やはり限界がきてしまったということだろう。つまり、この事態を収束させるためには、給付の第2弾や、家賃の免除が考えられる。民主党もそのことを訴えている」。

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 加えて町山氏が強調するのが、警察による謝罪の必要性だ。「トランプ大統領は黒人の側につくと整合性が取れなくなってしまうので、今も警官側について黒人側を批判し続けている。NFLのコリン・キャパニック選手が抗議活動を支持し、跪いて追悼の意を表したら、“あんなやつはNFLをクビにしろ”と言った。しかし各地の警官たちはキャパニックのように跪いて詫びることを始めている」。

 その上で町山氏は「そもそも大統領として“調査をし、法に基づいて処罰をするので暴動は起こさないでほしい”と訴え、人々の対立を解くべきところを、逆に“暴動を起こしたらぶっ殺すぞ”というメッセージを出して煽ってしまうなど、完全にハンドリングを間違えていると思う。一方、対抗する民主党の大統領候補は非常に弱く、第一の候補とみられているバイデン元副大統領もベテランの主流派ではあるが、党内や貧困層、マイノリティ、若年層の支持を全く受けていない。トランプに人気がないから、無党派層は“しょうがないからバイデンに入れる”という支持になってしまっている」と話していた(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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