コロナ禍が新卒採用にも影響…「日本型雇用」が若者の働く機会を奪っている? 解雇規制を考える
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 「新卒採用中止の連絡来た。しぬ」「挑戦すらできない身にもなれ」。コロナ禍によって解雇や雇い止めとなった人が3万人を超え、新卒採用の縮小・中止を決めた企業も相次いでいる。また、テレワークが普及する中、“働かないおじさん”問題も浮き彫りになっていることから、「働かないおじさんを解雇したほうが、新卒3人くらい余裕で雇える」との悲痛な叫びも。

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 このように、若者の雇用にしわ寄せが来てしまう理由の一つに、正社員を解雇するために高いハードルが存在する“日本型雇用”の問題がある。しかも企業の定年は年を追うごとに引き上げられており、定年延長など高齢者の雇用推進の政策を進め、70歳まで働く機会を確保することを努力義務とする法案も成立している。

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 日本において、企業が整理解雇、いわゆるリストラを行うためには(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避の努力義務、(3)被解雇者選定の合理性、(4)手続きの妥当性の4要件を満たす必要があり、労働契約法第16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めている。

 人事コンサルティング会社「Joe’s Labo」代表取締役の城繁幸氏は「これらの条件は具体的な数値ではないので、裁判をやってみなければ決着がつかない。裁判官を務めている人に“我々は大企業ほど厳しく見ている”と聞いたことがあるし、やはりリスクは冒せないということで、よほどのことがない限り整理解雇はできない」と話す。

 「戦前は比較的自由に解雇もできていたし、戦後も“ずっと雇い続けなければならない”と定めたような法律はなかったが、高度成長期以降、判例が積み上がってきて、事実上、解雇が非常に厳しいという慣習ができてしまっている。第2次安倍政権ではアベノミクスの“第3の矢”の中で労働市場改革を謳って議論をしていたが、最近では全く聞こえてこなくなった。」。

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 そこで直面した今回のコロナ禍。城氏は「アメリカに比べれば、日本の失業率はほとんど上がっていない。これも終身雇用の中で企業が従業員を守ろうとした努力の結果だ。ただ、コロナが数年単位で続き、産業構造やビジネスモデルそのものを刷新しなければならなくなった時、日本はスタートでこけてしまうことになると思う。また、当然ながら失業率を低く抑えるためのコストはタダではない。賃金は先進国も新興国も伸びてはないが、むしろ日本は減少している国だ。だから日本企業がアメリカ人を採用しようとすると、“なんでこんなに賃金水準が低いのか。なんで金融危機に備えて賃金を削られないといけないんだ”と言われて苦労する。賃金が低いことを我慢して、その代わり不況が来ても雇用が守られるという考え方と、普段からもらえるものはもらっておいて、危機がきたら政府に助けてもらうという考え方の違いだ」と話した。

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 元経産官僚の宇佐美典也氏は「日本は20代の失業率が先進国の中でダントツに低い。だから若者は長期雇用を批判して、新卒のチャンスがなくなったと言う。しかし、そのシステムに大部分の人が甘えていることも事実だ。つまり、“新卒”というものに全てがかかっているので、解雇規制をなくせば最も被害を受けるのが新卒だ」と指摘。

 お笑いタレントのパックンは「ずっとその企業にいていいのか。転職してスキルアップすることが企業のためにも個人のためになるというのがアメリカの考え方。そういう中途採用中心の国から来た僕からすれば、新卒がこんなに重宝されていることを不思議に思う。しかも大学ではほとんど勉強してないのに(笑)。ただ、アメリカにもマイナス面はある。貧富の差が激しく、セーフティーネットは“網”じゃなくて“ザル“だ。もう少し労働市場の流動化、起業しやすい環境づくりを進めた方が、勢いのいい人たちが企業に集まるはずだ」とした。

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 慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は「日本では雇用政策を企業に押し付けることによって国が楽をしてきた歴史があるし、失業保険についても、基本的に企業が解雇しないということを前提に作られている。そして、経営者も楽をしている。経営者にとって人員解雇は最も大変で、なおかつ戦略性を問われる仕事だが、日本の経営者たちはそれを忌避してきたからこそ、従業員も楽ができている。“どうせ俺のことは切れないだろう”と考えているおじさんがいる。結果、生産性は全く上がっていない」とコメント。

 「よく“会社が人を育てる”という言い方をするが、大の大人を育てられるわけがない。結局、その会社の中で生きていくための流儀とかを教えているだけのことだ。それで40歳を過ぎると給料が伸びない、仕事もない。でも行き先もない、となる。しかも労働市場では価値がないので、やっぱり居座り続けることになる。そんな人生、つまらないじゃないか。ただ、終身雇用を維持できるのも、年功序列を維持できるのも大手企業だけ。これは法人のうち2%、労働人口で言えば20%。ほとんどの人は中小企業などに勤めていて、会社がこれから50年も持つわけない、という中で働いているはずだ。必ずしも全ての人に共通する議論ではない」。

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 城氏は「メディアではよく“解雇規制緩和”言われるが、そうではなく、“解雇規制の強化”だ。つまり8割の中小零細企業に勤める人たちは、普通にクビになっている。しかし、その時のルールが明文化されてないからこそ、無法地帯になっている。全くお金が払われなかったり、払っても金一封、10万円くらいで済ませられてしまったりするケースがとても多い。だから“半年分の給料を払いなさい”といったルールを作ってしまえば、実質的には規制強化、ものすごいセーフティーネットになる。一方で、連合に加盟していて、早期退職で10年分もらえるような大企業の正社員はたまったものではない。だからこそ、全体の議論が必要だと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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