被害に遭ったVTuberが明かす著作権の“虚偽申請” 弁護士は「YouTube側の限界」を指摘
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 YouTubeでは楽曲をカバーして投稿しても、JASRACなどの権利団体と包括契約しているため、投稿者が個別に申請する必要はない。しかし、権利を主張する謎の団体が投稿者に連絡し、収益をかすめ取るケースが増えている。実際に被害にあったVTuberが実体験を語った。

【映像】被害に遭ったVTuberが明かす“虚偽申請”

 「テレビアニメ『ひぐらしのなく頃に』という作品があるんですが、そのエンディングをカバーした動画をYouTubeにアップして、3分後くらいに6団体くらいから『その曲の権利はこちらにあります』というメールが届きまして」

 こう話すのは、VTuberとして活躍する「朝ノ姉妹ぷろじぇくと」の朝ノ瑠璃さん。歌った曲はJASRACがYouTubeと利用許諾締結を結んでいるため、朝ノ瑠璃さんが個別に利用許諾を得る必要はないはずだ。

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 「JASRACさんが管理しているというのは、『歌ってみた』動画をあげる時は必ず権利名を確認しているので、絶対におかしいということに気づきましたね」

 朝ノ瑠璃さんはすぐにYouTubeの運営に「虚偽の申請をされている」と異議を申し立てたことで、動画の収益がこの団体に流れることを防いだ。しかし、虚偽申請を放置した場合は収益が分配されてしまうという。さらに、異議を申し立てること自体を迷う人も少なくないそうだ。

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 「異議申し立てをすればそういう詐欺団体にお金がいかないようにはなるんですけど、それにすら気づいていない人が多いのかなとは思っています。異議申し立てをする時に注意文があるんですけど、“異議申し立てをしすぎるとチャンネル自体を消すこともある”という文章が出てくるんです。その文章を見て怖くなってしまって、投稿した動画自体を消した人もいましたね」

 楽曲のカバーをアップロードする際は、原曲へのリスペクトを込めて権利がどこにあるのかをきちんと確認してから投稿している朝ノ瑠璃さん。虚偽申請への憤りと同時に、他のYouTuberやVTuberへも注意を呼びかけた。

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 「抜け穴を見つけて、そこをおいしくいただくと考えている方もいるのでこういうことが起きるのかなと。JASRACなどが管理している曲であれば、YouTubeにアップしてもその団体にお金がいく仕組みで、横から詐欺団体がお金を持っていっちゃうことが問題なので、いろんな方に知ってもらえたらなと思っています」

 なぜこのような“虚偽申請”が横行するのか。自身もYouTubeチャンネルを開設している藤吉弁護士は、「YouTube側の限界」を指摘する。

 「YouTubeも大量のコンテンツがあって、その中で結局人ができるオペレーションというのも限界がある。そういったオペレーションの限界をつくというのは以前からよくあることで、例えばTwitterのアカウントが大量に削除されたりとか、その辺もシステムに頼っているがゆえに、オペレーションの限界でそういったミスも起きる。人気が出れば出るほど対応が難しいのではないか」

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 一方で、藤吉弁護士は今回のケースは「詐欺罪」にあたると話した。

 「(罪に)問える。“三角詐欺”の詐欺なので。使用している音楽とかが『自分の著作権だ』と不正な申請をして収益を横取りするということなので、やっていることとしては詐欺行為と一緒」

 また、『ラブひな』などが代表作の漫画家で日本漫画家協会常務理事の赤松健氏によると、「著作権を使った手口は非常に強力」だという。

 「私は電子書籍サイト『マンガ図書館Z』を運営しているが、そこも含めていくつかの電子書籍ストアがGoogleの検索結果に一切出なくなったことがあった。誰か悪意を持った人物が『これらの電子書籍サイトは自分の著作権を侵害している』とGoogleに申し立てただけで、Googleとしては真偽はともかく、まず一旦検索結果から落とさざるを得ない。その結果、ネットは嫌がらせ天国もしくは広告詐欺天国になっているのが現状だ。またYouTubeではAIを使って、例えば違法コピーの動画がアップロードされた際に、本来の権利者に対して自動的に『あなたが権利を持つ動画ですよね?』『削除しますか、それとも広告収益を取りますか?』と通知する機能がある。これも、少し画面構成を変えたりピッチを変えたりすると、AIが欺かれてしまう。著作権関係は、いたちごっこが続いていて難しい」

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 では、クリエーターを守るためにはどうすればいいのだろうか。

 「これをシステムだけで取り締まるのは非常に困難だ。じゃあどうすればいいかというと、目に余る悪徳団体や個人に対して裁判を起こし、莫大な賠償金を取ることで、他の人たちを萎縮させる形しかないのではないか」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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