31億5000万円を詐取の疑いで詐欺グループの男ら逮捕 “M資金”に大企業の経営者たちが騙される理由は?
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 6月、東証一部上場の大手飲食チェーンの経営者に架空の資金提供を申し出て金銭をだまし取った疑いで、無職の男ら3人が再逮捕された。

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 男らは経営者に「旧日本軍の秘密資金、『M資金』を動かせる人物を紹介できる」と架空の話を持ち掛け、その費用として預託金等の名目で31億5000万円を騙し取ったとされている。M資金とは、GHQが旧日本軍や日銀から接収した財宝や資産を基に極秘運用していたという秘密資金のことだ。頭文字のMは、GHQの経済科学局長だったマーカット少将に由来するという。ただ、これまでに誰も見たことがない、いわゆる都市伝説の類だとされており、小説・漫画・映画の題材にもなってきた。

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 『ABEMA Prime』では、逮捕された詐欺グループの1人が代表を務める会社の登記情報を入手、その住所を訪ねてみた。するとそこは都内一等地にある皇居を望むことができるビルだった。

 一部報道では、男らは被害者に「ここは自社ビルだ」と話し、一流企業の応接室のような立派な会議室に案内、融資話を持ち掛けていたという。しかし自社ビルというのは虚偽で、実際はレンタルオフィスの一画だった。

 こうした詐欺行為に対しては、財務省も「様々な名称を用いて、財政法第44条に基づく特別の資金が秘密裏に存在しており、それを引き出すためと称して資金の提供を求める行為」として注意を呼び掛けている。調べればすぐに分かる嘘、そして昭和から平成、令和と時代を超えて何度も詐欺事件が起きてきたM資金という都市伝説に、なぜ大企業の経営者が騙されてしまったのだろうか。

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 かつてM資金の取材をしたこともあるというジャーナリストの佐々木俊尚氏は「陸軍隠退蔵物資事件といって、戦時中に庶民から巻き上げた貴金属類を戦後になって軍関係者が持ち出して売り飛ばし、財を成した人がいる。有名なところで言えば、海軍が中国大陸で大量に購入していた貴金属や鉱物が戦後、宙に浮いた。それを持ち帰ったのが、中国で海軍の諜報機関にいた児玉誉士夫だ。その後、彼は日本の大物フィクサーだった。本当のところは分からないが、そういう話もある」と話す。

 「M資金詐欺に騙される人は会社の有名経営者が結構多い。やっぱり偉くなればなるほど、“俺しか知らない情報が世の中にはあるはずだ”と思い込む。標準医療ではなくて代替医療をやりたがるのも同様だと思う。そして何十億というお金を手にすると、それを投資したくなる。成功した起業家の多くが、ゴルフ場で“なんかいい出資話ないの?”と(笑)。そういうところが端緒になって、M資金のような話が入ってくるのだと思う。すると、“ついに俺のところにも話が来たか”となる」。

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 東京商工リサーチ株式会社の松永伸也情報部長は「良く考えてみるとお金を貸す代わりにその前に保証金をよこせとか、本来そういう話、バッグからお金を騙し取るようなことはしないはずだ。後は多額の資金を持っているならば、自らが運用すれば済む話だ。他に貸して利潤を得ようなんていう考えはないはずだ。そういうところに矛盾があると思う。答えとしては“M資金はない”と言い切れると思うが、1946年に、旧日本軍が東京湾に隠匿した金の延べ板など大量の貴金属類がアメリカ軍によって発見されたことがあった。嘘の中に、そのような本当のことが紛れていると、信じてしまうことがあると思う」と話す。

 「しかし、“選ばれし人”というのがミソだと思う。経営者の中には、“自分は特別な人間だ”と思っている方もいらっしゃる。そういう人の自尊心をくすぐるのも彼らの手口だと思う。“あなただけにこの話をお持ちしました”と言われると、“嘘かな。怪しいな”と思っていても、乗ってしまうケースが結構あるようだ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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