開催背景

 現在、スポーツ庁が掲げる「スタジアム・アリーナ改革」構想に基づき、日本全国のスタジアム・アリーナの新設・建替計画が進んでいる。中でもB.LEAGUEの2026-2027シーズンより開始となるB.革新(新Bリーグの基準改定)により、顧客の観戦体験を重視したアリーナが公設・民設と様々な形で建設ラッシュとなっている。その中で、神戸アリーナプロジェクトは民設民営の柔軟性を活かし、開業後はB.LEAGUE「神戸ストークス」のホームアリーナをはじめ音楽コンサート、MICEなどを開催の他、自主・共催イベントの開催を予定し、50年にわたり地域に根差して運営する。 イベントのない日もにぎわいを生み出すよう、アリーナが主体的に地域活性化および持続可能な社会へ向けた社会課題解決を行う「アジアNO.1アリーナ」の創出に向けて、「新たな価値を共に生み出す協創パートナー」として参画いただいた2社と対談イベントを開催しましたので概要を報告する。

<パネリスト>
・朝日放送グループホールディングス 株式会社ベスティ 代表取締役 江﨑仁祐氏
・スカパーJSAT株式会社 メディア事業部門 経営企画部
 兼 Sol Levante Sports株式会社 代表取締役社長 森元光一氏
・神戸アリーナプロジェクト運営会社 One Bright KOBE 代表取締役社長 渋谷順氏
(以下、企業名略)

冒頭、神戸アリーナの事業戦略説明で工事進捗を公開

渋谷順氏​(以下、渋谷):アリーナ建設予定地では2025年4月開業に向けて工事を予定通り進めている。施工会社も「いいものを作りましょう!」と言っており、バトンを引き継いで素晴らしいものを運営していきたいと身が引き締まる。

神戸アリーナが目指す協創パートナーとは

渋谷:従来の広告露出に重きを置いたスポンサーシップとは異なり、民設民営ならではの柔軟性を活かして、アリーナ基点で新たな神戸の新たな魅力作り(まちづくり)や持続可能な社会の実現に向けて、共に相乗効果を発揮しながら推進したいと思っている。

今回協創パートナーとして参画いただいた2社と対談させていただく。

神戸アリーナの魅力

森元光一​氏​(以下、森元):神戸アリーナの魅力は大きく3点ある。1点目は、有料放送事業から、全世界動画配信事業にシフトしており、スカパーJSATとして第三・第四・第五の新たな事業を創る必要性を感じていた。中でも、「アリーナ・スタジアムを保有するくらいのゲームチェンジャーになる必要がある」との思いで、社内でアリーナ・スタジアムビジネスプロジェクトを立ち上げた。2点目は、民設民営の神戸アリーナの自由度の高さ「スペシャルワン」なものを創れることが魅力に感じたことだ。プロジェクトオーナーの人柄もある。3点目は、スカパーJSATが手掛ける宇宙衛星事業とのシナジーだ。大規模災害発生時において、通信衛星を用いて通信回線を災害対応医療従事者向けに提供するなど、また民設民営の大規模アリーナ施設のBCPの在り方・持続可能な社会貢献についての可能性も感じている。

江﨑仁祐氏​​(以下、江﨑):娯楽のグローバル化、視聴スタイルの変化の中、朝日放送グループとしてもスポーツやコンテンツの放映権等の権利獲得だけでなく、新しいIP(知的財産)を生み出す重要性を感じている。関西で民設民営の神戸アリーナプロジェクトという夢のある仕事に「作り手」の立場として参画できるのはこの上ない喜びと感じている。また、放送という一方向のコミュニケーションだけではなく、神戸アリーナ事業を通して行う双方向のコミュニケーションがコンテンツの価値を増大させることができると考えた。先日大阪駅周辺で開催した番組イベント「旅サラダEXPO」や万博公園での「おは朝パーク」などは数多くのお客様に来場いただいた。このようなリアルイベントでのタッチポイントこそが事業につながるのではないかと考えている。グループが持つ映像・イベント制作力、技術力・PR力を活かしてコンテンツを協創し、新しいアリーナビジネスの可能性を追求したいと思っている。

神戸アリーナで目指す世界観

渋谷:私たち自身が民間でアリーナ事業やまちづくりにリスクテイクしながらおこなうことでアリーナビジネスが成立・成長していくと思っている。神戸港はかつて世界のゲートウェイで物流拠点だったこともあり、この再開発・神戸アリーナプロジェクトで改めて世界へ発信ができればと考えるが各社いかがだろうか。

江﨑:スポーツメディアの将来のあるべき姿として、「社会的価値拡大」と「経済的価値拡大」のエコシステムの両立に向けてチャレンジしたいと思っている。具体的には、スポーツ団体や施設に出資を行うことで、バスケットボール事業や神戸アリーナを中心とした新しいまちづくりや地域と文化に貢献できるような枠組みにスポーツを通じて挑戦したいと思っている。我々だけではなく、今後さらに神戸から世界へ発信できるような神戸アリーナにしていきたいと思うので、様々な方々とご一緒できればと思う。

森元:国際都市・港町神戸で世界へ率先してつながっていくアリーナという国内でも民設民営アリーナの事例が少ない中、世界、特にアジア地域でのアリーナ・アライアンスができていくと面白いのではと思う。そういった議論を、本プロジェクトに集う皆さんとディスカッションしていきたい。