16日、中国商務省は「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への正式な加入申請手続きを行った」と発表した。
知的財産権や国有企業の規律など、細やかなルールが設けられているTPP。“対中包囲網”とまで言われた協定に、なぜ中国は加入申請を行ったのだろうか。今回、ニュース番組『ABEMA Prime』では専門家と共に議論を行った。
【映像】麻生財務大臣、中国のTPP加入申請に「中国がこのルール通りやる? 本当に?」(2分ごろ〜)
中国情勢に詳しい戦略科学者・中川コージ氏は「実際のところ、チャイナがどれくらいの本気度で国際的なTPPの基準を持ってやるのか。今のところ不明だ」と語る。その上で「やはりチャイナの意図として『TPPに入る』といったコメントを出す、公表することに一つの目的があると思う」と見解を述べる。
現在TPPには、日本やオーストラリアなど、11カ国が加入。太平洋圏内を一つの経済圏と捉え、自由貿易による経済圏の強化を狙った協定だが、もともとはアメリカ主導による「対中包囲網」として動き出した経緯がある。
しかし、2017年、アメリカのトランプ大統領(当時)はTPPから脱退を表明。2018年にTPPはアメリカ抜きの11カ国で開始したが、その直後から中国は加入の意思を示し始めていた。
TPP加入を希望する中国の狙いについて、中川氏は「短中期と長期に分けて考えるべきだ」と語る。
「チャイナの長期的な狙いは、もしTPPに入れたら、太平洋地域において人民元を使うことができる。不確実性も高いのでまだ分からないが、アメリカは脱退してもういないし、要は商圏を広げていくことができる。一方で、短中期、14次5カ年計画(2021〜2025年)の間における狙いは、知財意識、人権意識を高めましょうと。知財意識が低い国有企業は、外圧を使った方が改革しやすい。彼らは巨大すぎて、しかも政治力がある。習近平さんにしても、政治的な内政の統制ツールとして、TPPに参画をしたい。内向きに発信する用のメッセージとしても使えると考えているだろう」
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「例えばアメリカは、アメリカとメキシコとカナダで経済同盟を組んでいる」と他国の事例を紹介。
「アメリカの自動車は関税ゼロでメキシコやカナダに輸出できる。なので、メキシコやカナダの人は“アメリカ車は安い”と言って買って、他の国の車はあまり買わない。TPPは太平洋の周りの国々でやるが、アメリカが抜けた今、自動車や電気製品を作っている国は日本ぐらいしかない。だから、日本の電化製品や自動車がオーストラリア、ベトナム、シンガポール、チリなど南米にまでバーッと関税ゼロで売れるようになる。これはメチャクチャおいしいので『ちゃんと進めたほうがいいよね』というところだ。しかし、TPPに中国が入ってくると、このあたりがうやむやになってしまうと思う。中国を入れない形で、やった方がいいんじゃないか」
その上で、ひろゆき氏は中国が加盟しているWTO(世界貿易機関)に言及。「WTOに加盟していても中国は著作権違反をしまくっているし、コピー商品も作りまくっている」と指摘し、「でも、WTOに加盟している欧米の国が中国に制裁を与えられるかというと、やっぱりできない。実質的にTPPの加入のハードルが高いといっても、参加国が『いいよ』と言ってしまえば、入ってしまうと僕は思う。そこまで加入のハードル高くないのではないか」と意見を述べた。
前述の中川氏は「確かに今までチャイナは知財に関しては模倣、コピー・パクリ天国だ」とコメント。
「だが、化学分野、化学製品でいうと、シノケムとケムチャイナ、2社の大きい国営企業がスイスのシンジェンタという会社を買収している。化学業界においてもチャイナが一気に国際的な買収を仕掛けて大きくなった。化学は、まさに知財の分野が大きく関わってくる。農業分野、アグリテックに関しても同じことが言える。例えば、種苗も開発するのに長い年月の蓄積が必要だ。そういった意味では、今度は知財を守る側に今後なりたいはずだ。どの分野でといった問題もあるが、もし彼らがTPPに入ってくるのであれば、より利益率の高い知財を日本がチャイナの市場に対して売ることができる。これは日本のメリットに今後なっていくと思う」
中川氏の見解を聞いたひろゆき氏は「TPPに入って、TPPの枠組みの中に入っても、中国に(知財の)チェックは機能しないのではないか。日本の種苗をかっぱらって『これは中国のオリジナルだ』と主張されているケースもある」と指摘。
「さっきの表(TPPメリット・デメリット)にあったデメリットの項目は間違っていると思う。安いものを買いたい人は安く入ってきた他国の農産物を買えばいいし、『日本の野菜が食べたい』と思う人は日本産の野菜を買えばいいだけだ。選択肢が増える話なので、デメリットではない。もしデメリットがあるとすると、消費者ではなく農業に携わっている会社、農協などの組織が困る。これをデメリットにしてしまうのは僕は間違いだと思う。国民にとっては選択肢が増えるだけだ」
TPP加盟国は、中国の加入申請をどのように受け止めるべきなのだろうか。今後の動きに注目が集まっている。 (『ABEMA Prime』より)
【映像】自民党総裁選、4候補の対中政策は? (一覧表あり)※26分ごろ〜
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