「こども庁」創設アピールは選挙対策、人気取りか…“子ども問題”は“大人問題”だ
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 菅総理がデジタル庁と並んで創設を打ち出していた、児童虐待や不登校、教育格差など、子どもに関わる政策を担当する「こども庁」。政府の有識者会議では年末までに創設に向けた基本方針を取りまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。

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 任期中の実現には至らなかったものの、自民党総裁選に立候補している河野行革担当相、岸田前政調会長は前向きな姿勢を示しているほか、野田幹事長代行は「こどもまんなか庁」設立に強い意欲を示している。一方、高市前総務相は19日、「高齢者庁もつくってほしいだとか、障害をお持ちの方のための役所を作ってほしいと、様々な声も実は寄せられている」とし、早期の創設には慎重な姿勢を示している。

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 元財務官僚で明治大学公共政策大学院教授の田中秀明氏は「新たな組織を作ることが問題だというつもりはないが、現状では子どもを使った人気取り、選挙対策のようにも見える」と指摘する。

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 「子ども関連する政策を担っているのは主に内閣府、文部科学省、厚生労働省、さらには法務省も関係している。政治家の皆さんの話を聞く限りでは、新しい組織を作り、それぞれが持っている政策を取り上げて一つの省庁に集めるイメージで、内閣官房にあったIT本部という組織の看板を付け替えた形のデジタル庁の場合とは異なっている。

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 組織というのは、あくまでも政策を推進するための手段だ。よく“縦割り”が問題だと言われるが、分担して仕事をするということは官でも民でも効率化のために必要なことだ。問題は、それらの組織を、まさに総理大臣がリーダーシップを発揮して調整できるかどうかで、同じところに集めたことで組織が大きくなれば、むしろ非効率になりかねない。例えば現状ではそれぞれの省庁が住民と直に接している地方自治体に指示を出しているわけだが、自治体の中でもそれぞれの部局が厚生労働省、文部科学省と別々につながっているので、それを解きほぐす必要がある。その意味でも、こども庁が自治体と一元的にコミュニケーションをとり、政策の号令をかけていくのは難しいと思う。

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 また、なかなか報道では紹介されないが、貧困対策、いじめ対策などの様々な課題については、法律に基づいて内閣府の中にそれぞれの対策本部が設置されていて、基本的には総理大臣が議長を務めている。こども庁を作った場合、それらを全て集めるのか。あるいは事務局を全て集めるのか。そう考えると、本当に実現性があるのかと思う。仮に一元化するにしても、組織というのは作るときに手間と時間がかかるし、民間企業みたいにはいかない。例えば厚生労働省の下にこども庁という別組織を作るということも十分にあり得る。新たに独立した組織を作らなくても既存の省庁の中に持ってくる方法も考えられると思う」。

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 実際、長らく「幼保一元化」の議論が行われてきたものの、結果として保育所は厚生労働省、認定こども園は内閣府、幼稚園は文部科学省が所管する格好になっている。

 田中氏は「幼稚園、保育園にはそれぞれ“業界”がある。どう教育・保育するのかという哲学の違いもあるし、極端にいえば“水と油”のような、振っても戻ってしまうみたいな、笑えない実態がある。また、政治家には応援団がいて、幼稚園教諭や保育士を巻き込んだ戦いもある。他の国は統合できたが、保育園は足りない、幼稚園は余っているにも関わらず、日本が残念ながら統合できずに3番目の“認定こども園”を作ったのは、そういう背景がある。つまりこれは役所の縦割りだけの問題ではないし、役人では調整もできない。

 そこでは政治家がやる気、根性で関係業界を説得し、調整するという意思を示さない限りはできないだろう。確かに幼稚園と保育園では理念や預かる時間などは違うが、指導要領は同じだ。だから早く一元化すればいい。そして午前中しかやらない、あるいは夕方まで、あるいは夜もやるとか、運営状況に合わせて必要な財源を手当てすればいいのであって、どちらかの予算を取り上げるという話ではない。そういうことを政治がちゃんと説得し、本当の意味で統合できるというのなら、こども庁を作る意味はあると思う」。

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 小籔千豊は「票が入ろうが入るまいが、日本にはこれが必要だと思うんならやったらいい。みんなから“えー、それあんまり”と言われても、メッチャ考えたら、これから必要になると説明してくれる奴の方が信頼できる。顔色見て、“これやるわ、ワー。これやるわ、シーン。じゃあやめとこうか”というのは、ポピュリズム中のポピュリズムだ。また、もちろん貧困や虐待、いじめの問題は解決してほしいが、こども庁ができたからといって全て解決すると考えるのも大きな間違いだ。一発で世の中を変えられる人間なんて一人もいない。我々も長い目で見て、優しく批判していかないといけないと思う」とコメント。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「“子ども問題”と括っていること自体、ポピュリズムの匂いがする。“子どもの貧困”というのはスローガンに過ぎず、本当は親の世代の格差の問題だ。それは虐待の問題も同じだし、いじめも学校の先生や教育委員会などの大人の問題だ。そういうふうに言い換えて見ていったほうがいいと思う」と指摘していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
 

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