「世界に誇る日本の収集システムの可能性を知ってほしい」“日本一ごみ収集現場を知る大学教員”が訴え
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 「はいオーライ!」。正規の職員に混じり、慣れた手つきで収集所のごみを捌く清掃作業員。地方自治を専門に研究している、大東文化大学の藤井誠一郎准教授だ。

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 「行政の最先端となる職員さんが活躍しておられて、地域を熟知しながら収集を行われている。一方、重要な仕事を担われている割には、社会からそれほど評価をされていない。そうした点から、ごみ収集の現場に着目するようになった。ごみを一つ見れば、その地域のことが分かる感じがする。ごみ収集は自治に結びつく」。

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 週に一度のペースで現場に通ううち、地理や道路事情、治安情報、コミュニティの様子が分かってきたという。また、マナーの悪いエリアに出くわしたり、住民とコミュニケーションを図ったりすることで、行政サービスのニーズなども見えてきたという。そうして足掛け5年にわたって現場に通い続けた成果を先月、『ごみ収集とまちづくり 清掃の現場から考える地方自治(朝日選書)』にまとめた。

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 「ちょっとした軽い挨拶からコミュニケーションが始まり、“今こういうことで困っているんだ”というお話まで聞ける。それを本庁に伝え、政策立案に活かしていく。まさに行政のフロント、アンテナ、そういう機能がごみ収集にはあると私は思う」。

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 東京・練馬区の清掃職員として20年以上にわたり現場を担当してきた坂部貴之さんも「現場に出ることでまちの状況、地理、人々の暮らしが分かってくる」と話す。

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 「自分で集積所まで持っていくことが困難な高齢者の方もいらっしゃるので、その場合は玄関の前まで取りに行くという住民サービスも行っているし、ハザードマップに掲載されているような緊急避難場所も把握することができる。収集中に子どもが1人で歩いていたり、家から泣き声が聞こえてきたりすると気になるし、場合によっては児童相談所と連携することで、トラブルを未然に防ぐといったところにも繋げられるのではないか。私も大先輩から仕事のノウハウを教わったし、それらを次の世代である若い職員にもどんどん繋げていき、住民の方にも一緒に考えていただいて、清掃事業を広げていく取り組みに繋げられたら嬉しい」。

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 一方、ごみ収集、あるいはそれを担う清掃職員への差別や偏見の問題も横たわっているという。

 「私も経験したことだが、鼻をつまんだり、“くせえな”と言いながら、収集している私たちの傍を通り過ぎていくということはよくある。子どもたちの学習に参加し、資源について興味や関心を持ってもらいながら、“くさい”ということは言わないでね、と率直に伝えたりもしている」(坂部さん)。

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 清掃職員をめぐる課題はそれだけではない。藤井准教授によると、行政改革に伴う“公務員減らし”により、ごみ収集を担う人員も減少傾向にあるのだという。

 「一番きつかったのが小泉内閣の時の行政改革だが、やはり“民間でもできるだろう”“委託化してしまえ”ということになりやすく、3〜4割ぐらいしか公務員がいないという状況になっている。実際、東京23区にお住まいの方は、ユニフォームの色の違いというのに気づかれると思う。それが区の職員さんと委託業者さんの違いだ。あるいは23という数字が入っているのが委託の車で、実は全体の8割くらいを占めている。

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 例えば私も収集を体験させていただいた東京都北区では高齢化が進み、体力的にも担える業務量が減っていくので、新規に職員採用をするようになった。ただ、23区の中には一切採らずに減らし続けている区もある。そういう中で、公務員の側も、いかに仕事に付加価値を付けていくのかも問われていると思う」(藤井准教授)。

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 こうした状況を踏まえ、ごみ収集をまちづくりに活用する自治体も現れ始めた。神奈川県座間市では、小田急電鉄と共同で収集車の動きをデジタル化して効率化を図るとともに、清掃職員が現場で集めた情報をデータベースで管理し役所全体で共有、道路などの行政サービスに活用している。また、福岡県福岡市では粗大ごみの回収依頼や分別ルールに関する質疑応答などがLINEで行えるようになっている。

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 藤井准教授は「デジタル化によって浮いてきた人材を新たなサービスや既存の業務改善化に振り向ける取り組みも始まっている。ごみ収集のデジタル化が、新たなまちづくりにも繋がっていくと思う」と期待を示す。

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 坂部さんや藤井准教授の話を受け、ジャーナリストの堀潤氏が「2019年の暮れから2020年の年始にかけてスーダンの首都ハルツームに取材に行ったが、現地ではJICAが日本のごみ収集システムを稼働させ、日本から送られた収集車両や技術指導に入ったチームによって、ごみで溢れたまちがきれいになった。『キャプテン翼』が人気だということで収集車にステッカーを貼ったところ、子どもたちがごみを持って集まってくるということもあった。こうしたことにより衛生意識、さらには治安の問題も改善されていった。日本のごみ収集システムがスーダンのまちを支えているというのは誇らしい。

 また、『日中ジャーナリスト会議』に参加した時には、中国のジャーナリストや政府機関の人たちが日本で視察したいところに一つに、ごみ収集の現場があると聞いた。こうしたことも、やはり現場を支えてこられた方々がいらっしゃったからこそ輸出できるのだということを知って欲しい」と訴えると、藤井准教授は「その通りだ。韓国の方が清掃労働組合に日本の清掃技術を学びに来られるということもある」と応じていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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