首都カブールの掌握以降、イスラム主義勢力タリバンが影響を強めるアフガニスタン。混乱が続く中、現地から日本に向けたあるSOSが届いていた。受け取ったのは東京農工大学の大川泰一郎教授だ。
「元留学生の方からメールが届いたんです。ちょうど8月の下旬、カブールの空港で混乱があったときです。23日にメールが届きまして、内容が『日本に救出をお願いしたい』という内容でした」
【映像】「親族も殺された」元留学生から来たメールの内容(1分ごろ〜)
大川教授に助けを求めたのは、1年半ほど前まで日本で稲の研究をしていた元留学生だという。元留学生は、母国・アフガニスタンの食糧問題を解決すべく、5年間大川教授のもとで学び、カブール大学に教員として就職した。
「アフガニスタン食糧危機の問題は以前からありまして、温暖化で砂漠化が進んでいます。元々食料が厳しいところなのですが、そこに拍車をかけて、今回のようなタリバンによる占領が起こると、さらにその問題が深刻化します。現在もカブール市内で食糧不足の問題が深刻化していることもあり、食糧不足の問題を早く解決したい、農業を発展させていきたいと、夢と希望をもって日本で学んだあと、母国に戻った矢先でした」
元留学生のメールには、カブール市内が混乱し、危険な状態になっていることなどが書かれていた。他の大学に勤める親族が殺害され、元留学生自身も身の安全を守るため自宅から離れた。今は友人・知人の家を転々とする日々を送っている。給料も2~3カ月前から滞り、現在も支払われていない状況だという。
農工大の他の教授にも、かつての教え子から救出を求める声が届き、その数は20人を超えた。
「人道的な問題だと思っています。せっかく日本で長い年月をかけて学ばれて、アフガニスタンに戻った。救いの手を求めてきているので、できるだけそれに対して応えたいんです。また、救出したあと日本での生活、それから仕事の面でサポート、国でなんとかサポートに動けないかと考えています。なかなか個人ベースでは非常に難しい問題がありまして、できるだけ国のサポート得られないかと要望していています」
大川教授らは現在、署名サイトで教え子の早期救出と支援に向けた賛同者を呼びかけ。今後は集めた署名と共に、外務省、政府、文部科学省など関連する機関に救出の要望を出していきたいと大川さんは話す。
「復興のために日本へ留学し、日本の支援で学んできた人材ですので、一時的にでも日本が救出をして、国際協力という形で育ててきたアフガニスタンの方たちと日本で一緒に何か仕事ができればうれしいです。今そうした仕組みを作りたいと考えています」
大川教授らが立ち上げた署名プロジェクトの賛同者は間もなく3万人になり、応援のコメントも多く寄せられている。
大川教授らの活動について、『コロナ危機の社会学』の著者で東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「日本で学んだ留学生を日本で保護する。そうあるべきだ」とコメント。その上で「(大川教授に連絡した元留学生は)自力で国外脱出は大変難しい状況にあるのだろう。しかし、救出するために現地で自衛隊が活動することになれば、受け入れ国の同意が必要になる。アフガニスタンの政権を掌握したタリバンからその許可が得られるのか、とても難しいところだ」と言及する。
「情勢悪化が続くミャンマーでも同じような問題を抱えている。私の研究室に来たいと言ってくれたミャンマーの学生から『国内事情が厳しくて出国できない』と連絡が来た。日本は今まで難民問題に深く向き合ってこなかった。海外から来た留学生たちが、日本に留学して良かった、支援してもらえて良かったと思ってくれるような環境を作る必要がある」 (『ABEMAヒルズ』)
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