29日、自民党総裁選で選出された岸田文雄前政調会長。総裁選直後の会見で、岸田氏は「年内に数十兆円規模の経済対策を策定して、国民にともに協力していただける雰囲気を作りたい。そしてその先に、経済、新しい資本主義を構築していきたい」と決意を語った。
岸田氏がスローガンとして掲げた「新しい資本主義」とは、一体どのようなものなのだろうか。みずほリサーチ&テクノロジーズ主任エコノミストの酒井才介氏はこう説明する。
「いわゆる新しい日本型資本主義、新自由主義からの転換だ。世界的にも経済格差が拡大している。いかに格差を縮小させて分配し、所得格差を縮小させ、経済を安定的なものにしていくか。この世界的な課題に対して、正面からチャレンジしていく姿勢を示されたんだと思う」
大企業と中小企業の格差、下請けいじめの解消、教育や子育ての負担の軽減などを目指している岸田氏。そのために訴えたのが「成長と分配」だ。
岸田氏は会見で「皆さんの給与所得を引き上げる。一部ではなく、できるだけ地域や分野に関わらず、幅広く給与引き上げる」と断言。昭和30年代の所得倍増論を例に、幅広く所得を引き上げることで「経済全体の消費が間違いなく喚起される」と語った。
さらに岸田氏は、看護師や介護士らの所得の引き上げに向けた公定価格の見直しについても言及。「従来から働きに比べて給与が少ないと言われている人の公的価格は、国が率先して適正に引き上げることを考えたらどうか。それが民間給与の引き上げにも呼び水となって、広がるのではないか」と訴えた。
岸田氏が打ち出した政策に酒井氏は「中長期的に人々の購買力を高めて消費を押し上げれば、ひいてはマクロ経済全体で、いわゆる経済の成長率を引き上げていくことにつながると思います」とコメント。その上で「問題は分配のための財源をどのように確保していくかだ」と指摘する。
「財源確保のために、岸田新総裁が税制にどこまでメスを入れられるのか。金融所得含め、高所得者にかかる実効的な税率が、中所得者と比べて高くなっていないといけない。これは以前から指摘されていて、金融所得に対しての課税は日本の政治財政上の重要な課題です。分配を実現するためには、高所得者に対する課税あるいは金融所得に対する課税、こういったものが必要になってくると思います。岸田新総裁には、それに対する実行力が試されることになります」
果たして、岸田新総裁は、財源の確保と分配を両立し、理想とする新しい日本型資本主義の実現ができるのだろうか。
「岸田新総裁は、成長戦略の分野でも、持論というか政策のスタンスのアイデアが明確にある方なんだろうと思う。成長戦略の分野で、それが実現に向けて具体化されて、経済全体のパイをどのように広げていくのか。どのように分配政策の原資になっていくのか、好循環を期待している。今後、示される具体的な内容に注目したい」 (『ABEMAヒルズ』より)
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