医師「出版社や新聞広告も対応しなければまずい」規制に踏み出すプラットフォーマー、YouTubeもワクチン誤情報を削除へ
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 緊急事態宣言の解除を前に、国民の7割が1回目のワクチン接種を終え、6割が2回目を終えた日本。未接種の人へ接種や、3回目の接種の必要性が議論される中、YouTubeがワクチン全般に関して誤った情報を含む動画を削除することを明らかにしたことが話題を呼んでいる。

【映像】木下医師に聞く

 YouTubeはこれまでワクチンに関して問題のある情報を含む動画を13万本以上削除してきたと発表。今後もガンや糖尿病、慢性的な病気を引き起こす、あるいは成分表に記載されている以外の成分が含まれている、遺伝子構造を変えるなどと主張する動画を削除するという。

■「プラットフォーム側の努力が必要だ」

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 この決定に対し、加藤官房長官は「個人が自らの意見を表明する機会は表現の自由として尊重されるべきではあるが、当該企業が利用者全体の利益、適正かつ持続的な活動のために一定の制約を利用規約などにおいて設ける場合はあり得るのではないか」とコメントしている。

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 ITジャーナリストの篠原修司氏は「ユーザーが通報した動画も含め、喋っている内容をAIがテキスト化、それをもとに判断して削除していく。おそらく、特定の言葉が入っていたら単純にはじくということではないのではないか。判定にミスがあった場合は投稿者の異議申し立てとガイドラインに基づき、人が判断することになると思うが、それはプラットフォーマーというよりはメディアの仕事に近く、高度な知識が必要になると思う」と説明する。

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 「新型コロナワクチン公共情報タスクフォース」副代表理事で、「COV-Navi」副代表も務める木下喬弘医師は「日本の場合、接種を受けるかどうかは個人が決めることになるが、それは科学的に正確な情報を元に判断されなければならない」と話す。

 「公衆衛生学的にも表現の自由を軽視すべきではない。しかし誤情報による弊害があることも事実で、例えば1990年代のイギリスでは、ある医師がMMRワクチンの接種が自閉症を引き起こすという主張を流布したせいで接種率が10%も下がり、はしかになる子どもが年間ゼロに近かったのが約2000人にまで増えてしまった。やはり人々の健康を守るためは、明らかに誤った情報については規制する必要があると思う」。

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 “明らかに誤った情報”や“陰謀論”はともかく、正しい情報や経験談を元にした“懸念”“疑問”、あるいは“反ワクチン”の扱いについてはどうなるのだろうか。

 木下医師は「“YouTube側が何となく気になったコンテンツを削除しているだけではないか”といった疑念を抱かれないためにも透明性が重要になる。だからこそ、ガイドライン作りからして簡単な仕事ではない。WHOなど国際的な公衆衛生の専門機関が出している情報や、それぞれの地域での状況を踏まえ、各国での運用を決める必要がある。そこはプラットフォーム側の努力だ。

 その点、YouTubeはどのような情報の発信が対象になるかを明確にしている。一方で、誤情報規制の中で“ミスリーディング”の判断は非常に難しく、例えば“不妊になる”と明確には言わないものの、それらしいことを匂わせるような表現の仕方まで削除されているわけではないし、科学的な事実を元にして“ワクチンを打ちたくない”と宣言しているような動画も削除の対象にはならない。その意味では皆さんが思っている以上にYouTubeは慎重な対応を取っていると思うし、逆に言えば抜け道を作られてしまう可能性もある」との見方を示す。

■Amazonの書籍ランキング、大手紙の広告欄にも…

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 こうしたことを実現するため、YouTubeでは貢献度の高い個人やNGO、政府機関などにツールを提供、効率的に対処できるプログラムも用意している。しかしプラットフォーマーと呼ばれていた企業が、あたかもメディアであるかのように掲載する情報の取捨選択をしなければならない時代になってきたことで、プラットフォームとしての場が狭まるといった副作用はないのだろうか。

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 この点について、東洋経済新報社・会社四季報センター長の山田俊浩氏は「もちろん、“見る人が判断すればいいじゃん。変なのがあってもいいじゃん”という考え方もあるが、対策をしている、安心な場なんだという姿勢を見せることは、メディアやプラットフォーマーのビジネス上、広告主へのアピールにもなる。それは大手の企業を中心にトラストワーシー、つまり信頼されるメディアやプラットフォームにしか広告を出さないぞ、という動きが強まっている。やはり問題のあるコンテンツに自社の広告が表示されてしまうと、自分たちがそれを支持しているかのように見えてしまうからだ」と説明。

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 木下医師も「デジタルヘイト対策センター(CCDH)というNGOの調査によれば、SNSで氾濫している誤情報のうち、3分の2ぐらいが12のアカウントが発端だったとか、そういう人たちが年間で40億円ぐらい“反ワクチン”で稼いでいるとされている。しかしプラットフォーム側がそうしたコンテンツで稼いでいる額は1000億円以上になるとも言われている。そこはプラットフォームが努力すべき問題だということがわかるのではないか」と理解を求めた。

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 また、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「本当は自分で情報を判断できればいいのだろうが、YouTubeはレコメンド機能も強力なので、一つ誤った情報が含まれているコンテンツを見てしまうと、それに関連するコンテンツを次々と見てしまうことも想像できる。命に関わる問題でもあるし、正しいコンテンツをセットで見ることができる仕組みも必要なのではないか」と指摘した。

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 こうした問題はネットだけにとどまらない。不安を煽る情報は、記事や書籍、広告などにも溢れている。

 木下医師は「YouTubeが広告を外しても、カリスマ的存在であればセミナーを開催するなどしていくらでも儲けられる。だから広告を剥がすことで儲からせないようにしようと方法も、実はメチャクチャ難しいということだ。そして、実はネット以上に規制が緩くなっているのが出版業界だと思っている。明らかに誤った情報が入っている書籍が出版され、しかもベストセラーになっている。かつ大手新聞にもその広告が掲載されている。もういい加減、少し規制をしていかないとまずいじゃないですかと言いたい」と提言。

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 山田氏も「Amazonのランキングを見るとびっくりするのが、ベスト100冊のうち10〜20冊くらいは“反ワクチン本”やワクチンを疑うような本だ。悪貨が良貨を駆逐し、出版社が儲かっている状況がある。また、読んでみると“反ワクチン“風に煽っているように見せて中身は両論併記にしてみたり、微妙な線をついている本も多い。やはり何が正しいのか分からないと感じている人が多いからこそ売れるのだろうし、人々が情報に飢えているという点では、良い本、いかにワクチンが重要か、という本も併せて出していかないといけないんだろうなと思う」と話していた。

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 YouTubeの対応について、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥で、反ワクチン活動家としても知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏は米CNNに対し「検閲が民主主義や公衆衛生に有益だった例は、歴史上存在しない」と批判。ネット上には「やはり隠したいことがあるとしか思えない」と訴えるアカウントも存在する。他のプラットフォーマーの対応も含め、動向が注目される。(『ABEMA Prime』より)

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