東京・歌舞伎町にある「新宿東宝ビル」。その傍にある「シネシティ広場」(旧コマ劇場前広場)周辺にたむろしていることから“トー横キッズ”と呼ばれる若者たちがいる。
【映像】兼近大樹と学ぶ「トー横キッズ」の実態...未成年の居場所とは?病みカルチャーも
15歳頃から歌舞伎町に足を運ぶようになり、大学入学後は「トー横」などについて研究、ライターとしても活動している佐々木チワワさんは「ハッシュタグをつけて自撮り写真を上げる人たちがオフ会をしたりするときに待ち合わせ場所として使われるようになったのが始まりだと思う」と説明する。
「歌舞伎町にいるキャッチやホストなど色々な大人が、集まっている子たちを“東宝キッズ”とか“トー横キッズ”と呼ぶようになっていった。そして次第に未成年でホストクラブに行けないという子たちの飲みの場所、たまり場にもなり、去年ごろからはコミュニティ化、組織化し、“トー横の王”を自称する子も出てきた」。
当初は18、19歳くらいの人が多かったというが、地方にまで認知度が高まってきたことも受け、さらに多くの人が集まってくるようになり、低年齢化も顕著になってきているという。佐々木さんは12歳の中学生にも出会ったことがあるといい、家庭環境に問題を抱えた10代も非常に多いという。
「コロナ禍のリモートワークでお父さんがずっと家にいるようになった結果、余計に家庭環境が悪化したとか、貧困やネグレクトだけでなく、過保護という問題を抱えた子もいる。そういう子たちがトー横で楽しそうにしている様子をTikTokなどで見て、“ここなら私の話を分かってくれる子がいるかもしれない”“同じような服装を着てるから友達ができるかもしれない”と、東京郊外や地方から集まってきている印象だ」。
『ABEMA Prime』が6月からトー横に来るようになったという10代の女の子に話を聞いたところ、匿名を条件に次の様に話した。「束縛がひどくて、暴力を振るわれたこともあって、家には居場所がない。トー横に行けば同じような悩みを抱えている子がいっぱいで気持ち分かってくれるし、メンケア(メンタルケア)しあえるし、とにかく楽しくて。みんなで飲んだり話したり、SNSに投稿する動画を撮ったり」。
■犯罪に巻き込まれたり、メンタルを病んでしまったりする「ぴえん系女子」も
佐々木さんによると、そうした若者の中には、一般的には「悲しい、嬉しい」など感情を表す言葉として使われる「ぴえん」を冠した“ぴえん系女子”と呼ばれる女の子もいるのだという。
「意味としては(芸能事務所の)マセキっぽいね、吉本っぽいね、みたいな感覚で、“地雷系”“量産型”と呼ばれるファッションをしている子を指すことが多い言葉だ。だからファッションが可愛い、憧れるからと格好だけ真似たり、同じコミュニティの中の“推し”に貢いだりと、ある意味で刹那的に生きているような子もいるし、そういう様子がファッション誌で“地雷系・量産型特集”として組まれるくらい、カルチャーとしても全国に広がりつつある。
しかしトー横ではストロング缶にストローを差して“推ししか勝たん!”とか“ぴえん”と言ってみたり、路上に座り込んでみたり、そういう行動も含め、“お前、今のそれはぴえんだよ”とか、ホストが“この前、道にぴえんが転がっててさ”みたいな感じで喋ったりしている。表現としては、そういうイメージだ。加えて、身を削ってでも推すという文化、“病みカルチャー”が、18歳になった瞬間にバーで働いたりしてしまったり、本当に病んでしまったりということまで起きている」。
中には16歳の子がホストクラブで違法に働いていたというケースもあったといい、難しい家庭環境の中、犯罪と隣り合わせの状況にいる女の子さえいるようだ。
「コンセプトカフェやバーには高校生も多いので、ホストが17歳の女の子を捕まえて、18歳になったらお金を使わせるように仕向けたり、大人が助けると言いながら犯罪っぽいことに巻き込んだり。12歳の女の子が同じトー横界隈の男の子に“会いたいです。好きです”って送ったら“じゃあPayPayで5万円貢いでよ”と言われたので、Twitterで援交相手を募集し、稼いだお金を渡したという話も聞いた。
管理売春が行われているということもまことしやかに囁かれているし、20歳の男の子が13歳の女の子をホテルに連れ込んで誘拐事件で逮捕されたとか、トー横で知り合った16歳と14歳の男女が市販薬を大量に飲んだ状態で無理心中したといった話も聞いた」。
■警察が取り締まり強化も…「コミュニティを奪うだけでは意味がない」
佐々木さんによると、こうした状況を受けて警察が取り締まりを強化、NPOなどによるサポートも行われているというが、問題は簡単には解決しないと指摘する。
「19日にも警察の取り締まりがあったが、こうした状況が報じられるようになった結果、この数カ月、女の子たちが強制的に家に帰らされたるようなケースが増えた。ただ、そもそも16歳の子が親の許可を取ってホテルに泊まっていたりする場合もあるので、ただ警察が摘発して家に返すだけじゃなくて買春をする大人を取り締まったり、行政を挟んだりといった取り組みもしなければならないと思う。“帰らされた。ありえない”とか、あとは“ごめん、お母さんに携帯取り上げられたから会えない”という投稿が最後に消えてる子もいる」と訴えた。
実際、『ABEMA Prime」が取材した女の子も、警察に補導されて自宅へ戻ったが、家庭内での問題はいまだ解決していないと話している。
一方で佐々木さんは、サードプレイスとしてのトー横や、推し文化そのものを無くしてしまうことには否定的のようだ。
「ここで初めて友達ができたとか、相談したことで学校に行けるようになったという子もいる。横に缶チューハイは転がってはいるんだけど、プリントを広げて勉強している子たちもいたりと、けっこうほのぼのとした空間でもある。そういうコミュニティ、居場所としては、本当に放課後の教室みたいだなと思うこともある。推し文化についても、憧れる対象、推される対象がモデルロールとして良くない人物というケースがある。SNSでフォロワーが1000人残れば誰でも推される立場になれる社会だからこそ、改めて“推し”についてみんなで考える機会というのも重要なんじゃないか」。
EXITの兼近大樹は「こういう、子どもたちだけが集まれる溜まり場やコミュニティって昔からずっとあるものだし、これからもあっていいと思う。大人がそういうのを見て“ろくな大人にならない、危ない”と言うのもわかるが、ろくな大人にならないのは、悪い方向へ引っ張り込む大人たちがいるからだ。そして、問題を抱えてるからこそみんなで集まっているのに、そこに大人たちが介入して、ただ家に帰すだけでケアをしなければ意味がない。居場所をただなくすだけでは、より危険なことになるんじゃないかな」とコメント。
「変な話。俺もそういう界隈で育ったので、大人になって思うのは、そういう後輩たちを救ってあげなきゃっていうこと。でも、知識がないまま大人になると、それこそ悪い方向に導いてお金を稼がせてあげる以外、救う方法が分からない。そしてそういう子たちが、また次の世代に同じことを教えてしまう。どっちかと言うと、僕はできなかった側の人間だが、誰かが介入して、こういう仕事だってあるよ、こういう方法があるよって導いて上げないといけない」。(『ABEMA Prime』より)
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