プロレスリング・ノア年間最大のリーグ戦「N-1 VICTORY 2021 ~NOAH NUMBER ONE PRO-WRESTLING LEAGUE~」の優勝戦が10・3後楽園ホールで行われた。
A~D各ブロック4人、総勢16名が参加。ノアのシングルリーグ戦史上最高の豪華メンバーが揃った今大会。最終戦となるこの日は、各ブロックを勝ち上がった4人が、ワンデイトーナメントで優勝を争った。
まず準決勝第1試合は、Aブロック代表の清宮海斗とBブロック代表で2年ぶりの優勝を狙う拳王が対戦。
今年3月、武藤敬司の持つGHCヘビー級王座に挑戦するも敗れ、さらに5月にはNOSAWA論外にも大流血の末敗北。「スランプ」と言われたNOAHの超新星・清宮だったが、背水の陣で臨んだ今回のN-1では金髪だった髪の毛を黒に染め直し、黒のロングタイツ姿にリニューアル。予選リーグでは杉浦貴、征矢学を破り、これまで2戦2敗の武藤と30分時間切れの引き分け。最激戦区と言われたAブロックを勝ち抜いてみせた。
あとは決勝トーナメントを勝ち抜き、完全復活をアピールするだけ。そこに立ちはだかったのが、ノアの反体制ユニット「金剛」のリーダー、拳王だ。
試合は開始早々、清宮がクロスボディ、ジャンピングニーパット、ジャーマンスープレックスで先制。さらにインディアンデスロックなどヒザを集中的に攻める。ここからヒザへの集中攻撃が功を奏し前半は清宮ペース。拳王もヒザの痛みをこらえながら蹴りを繰り出していくが、単発に終わる。勝負と見た清宮は打点の高いドロップキックから、高角度ジャーマン。さらにタイガースープレックスを狙うが、拳王もこれだけは決めさせない。
逆に拳王は高速の投げっぱなしドラゴンスープレックスから、一気にP.F.S(ダイビングフットスタンプ)を決めるが、ヒザの痛みからカバーが遅れカウント2! 清宮は拳王のハイキックをかわすと、ジャンピングニーパットで倒し、エルボースマッシュから垂直落下式リバースDDT。そして再度タイガースープレックスを狙うが、これを拳王がこらえ、最後は清宮がジャパニーズレッグロールクラッチホールドを狙ったところ、さらにローリングバッククラッチに切り替えした拳王がピンフォール勝ち。
まずは拳王が決勝進出決定。清宮は準決勝で力尽きたものの今回のN-1では台風の目ともいえる活躍を見せ、再浮上への足掛かりを確実につかんだ。
続く準決勝の第2試合は、野獣・藤田和之との全勝対決を制しDブロック3連勝で勝ち上がってきた船木誠勝と、前年度優勝者の中嶋勝彦が対戦。
格闘技界のレジェンドでもある船木に対し、中嶋は蹴りでは互角の攻防を展開したが、グラウンドになると船木が一枚上。片足タックルからバックコントロール、そしてマウントポジションを奪うと一気に腕十字を極めるなど、何度も中嶋をロープエスケープに追い込む。
中盤、中嶋が投げっぱなしジャーマンから強烈なミドルキック。そしてヴァーティカルスパイクで勝負に出るが、船木はこれを脇固めで切り返し、さらに腕十字、三角絞めとサブミッション蟻地獄へと誘い込む。
船木はさらに掌底連打で追い込み、このまま勝負をものにするかと思われたが、中嶋は起死回生となるカウンターのハイキックでダウンを奪う。そして最後はヴァーティカルスパイクを完璧に決めてカウント3を奪取。苦しみながらも決勝進出を決めた中嶋は、倒れた船木に一礼してリングを降りた。
こうして決勝は、拳王と中嶋勝彦の金剛同士の対決に決定。拳王が勝てば、史上最多となる3度目のN-1制覇(前身のグローバル・リーグ戦を含む)。中嶋が勝てば、史上初のN-1二連覇と、どちらも記録がかかった一戦は、同門対決ながら一切の遠慮がないバチバチのシバキ合いとなった。
中嶋がハイキックから得意のコーナーでの顔面踏みつけを見せれば、すぐさま拳王も重いミドルキック連打から、中嶋のお株を奪う“逆コーナー踏みつけ”を見せる。さらに渾身のミドルキック打ち合いから、お互いハイキックを交わしての投げっぱなしジャーマン。そしてハイキックの相打ちでダブルノックダウンするなど共に一歩も引かない展開。
試合が動いたのは中盤、中嶋がカウンターのトラースキックを決め、ダウン状態の拳王に前後からサッカーボールキックの乱れ打ち。そしてついにヴァーティカルスパイクを決めるが、これはカウント2!
ピンチをしのいだ拳王は蹴りで反撃を試み、コーナー最上段からP.F.Sを決めるが、これもカウント2。お互いフィニッシュホールドを出し合ったあとは、気力と死力の勝負。果てしない全力のミドルキック合戦から、掌底で顔面をシバキ合う張り手合戦。このシバキ合いを制した中嶋が、拳王をファイヤーマンズキャリーで抱え上げると、ダイヤモンドボムでマットに叩きつけ、ついに3カウント奪取。中嶋が盟友・拳王とのすさまじい打撃戦を制し、史上初のN-1二連覇を達成した。
これによって、10・10エディオンアリーナ大阪で丸藤正道の持つGHCヘビー級王座挑戦も決定。試合後、マイクをにぎった中嶋は、後楽園バルコニーの放送席でゲスト解説をしていた丸藤をリングに呼び込むと、不適な笑みを浮かべながら「あなた、丸藤正道が持つGHCヘビー級のベルトを俺が奪いますので、それまでしっかりベルトを磨いておいてください」と宣戦布告。
これに対し丸藤も「勝彦、素直にすごいと思うよ。このリーグ戦を勝ち抜いて得た自信とモチベーション、そしてその目を木っ端微塵に打ち砕いてやるよ。お前がこのリーグ戦優勝した意味がわからないくらい打ち砕いてやる。勝負だ勝彦!」とベルトを高々と掲げた。
はたして10・10大阪での“NOAH頂上対決”を制するのは、過酷なリーグ戦を勝ち抜き自信と勢いをつけた中嶋勝彦か。それとも、NOAHの象徴的な存在であるGHCヘビー級王者・丸藤正道か。