戦いながら、また強くなりたい。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」のドラフト会議が10月2日に放送された。西山朋佳女流三冠は、1巡目に上田初美女流四段、2巡目に山口恵梨子女流二段を指名した。名前だけ見ると、なかなか結びつきが見えない顔触れだが、指名した理由はなんと「1回も勝っていない人」。里見香奈女流四冠と、女流タイトルを二分する実力者は、この団体戦でも楽しみながらさらに力をつけようとしている。
【動画】第2回女流ABEMAトーナメント ドラフト会議
大阪府出身の西山女流三冠。女流棋士になったのも今年の4月ということもあり、他の女流棋士との関係も想像しにくいところではあったが、上田女流四段と山口女流二段は、対戦成績から選んだ。「(指名には)いろいろな方針があると思いました。チーム構成を考えた時に共通点が見つかったのが、1回も勝っていない人。公式戦で0勝という方がお二人だったので、いい理由だなと思い一番の優先プランになりました」。奨励会に所属しながら女流棋戦にも参加していたが、西山女流三冠が敗れた女流棋士は数えるほど。そして勝ったことがないのが、まさにこの2人だった。「上田さんは実力のある方ですし、勉強になるかなと思いました。山口さんは将棋界のために普及にも尽力されていて、将棋もすごく鋭い。フィッシャールールにも適性があると考えました」と指名理由を明かした。
実はアプローチもされていた。「売り込みですか。あ・り・ま・し・た、ね(笑)。某女流が、私に選ばれるのが一番幸せだと思うと言ってきたんです。でもその子には、今回は接点のない方でいこうと、伝え…におわせました(苦笑)」。男性棋士の大会でも、交流のある中から選ぶと、いろいろと気を使うという理由から、一切交流がなかった棋士を指名したという例もある。人間関係にも配慮しながら、かつ自分に刺激を与えてくれる女流棋士を選んだ。
男性棋士による「第4回ABEMAトーナメント」でも、よく学んだ。「すごくクオリティーが高いんですよね。早指しに特化した戦いになるかと思ったら、全然そんなことはなくて、持久戦模様や、重厚な将棋を指されていた」と、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算という超早指しでも、長時間対局に匹敵する濃い内容の将棋を見続けた。「これを真似できるかというのは結構不安ですね。時間の使い方もすごく難しくて、練習でやった限り、壊滅的に向いていないことがわかっています(苦笑)。練習もやるほどに自信をなくす気がして…。秒読みで負けた経験が蓄積されることもあるので(練習するか)悩んでいます」と、女流棋界で圧倒的な強さを誇る西山女流三冠にしては、珍しく弱気な言葉も続いた。だからこそ、自分が勝ったことがないチームメイトは、実に心強い。
最後にチームの今後のコンセプト。指名理由が対戦成績だったため、これといったものが思いつかなかった。「全然共通点がないんですよね。今のところ『チーム不協和音』が一番しっくりくるのかな」と周囲を笑わせた。勝利、優勝というシンプルな目標に向かって集まる3人。頂点に立つころには、この不協和音こそが実に心地よく聞こえてくる。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)






