14日、ドコモのネットワークで大規模な通信障害が発生した。異変が起こったのは同日午後5時ごろ。音声通話やインターネットのデータ通信が繋がりにくい状態になり、全国で少なくとも200万ユーザーに影響が出た。
障害は日付が変わっても続き、4Gと5Gについては15日午前5時過ぎに復旧。3Gを含む通信障害が全て復旧したのは、15日深夜だった。こうした状況に、Twitterなどでは損害賠償を求める声も寄せられている。
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スマートフォンの所持が当たり前になった今、通信障害に備えて消費者はどのような行動を取ればいいのだろうか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、専門家と共に議論を行った。
今回のドコモのネットワーク障害について、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「既存のインフラが止まることは定期的にある」とコメント。
「今月8日にあった地震でJR線が止まって文句を言っていた人もいたが、インフラが止まるのは定期的にあるもの。もし本当に起きないようにちゃんとやろうとすると、料金がかなり高くなる。そうなると、利用者も困るのではないか。今回、約8000万件の契約があって、たった200万人困っただけ。大した規模の話ではないと思う。(ネットワークの)工事で事故ったら『そんなもんだよね』というだけ」
その上で、ひろゆき氏は「連絡が取れなくなったといっても、都内にいる人はだいたいWi-Fiが通じている。Wi-Fiが通じていれば、ドコモ側の回線があろうがなかろうが、スマホは使える」と指摘。
「そもそも電波という不安定なものを使っている。それに完全に依存しておいて『障害で困った』という方がよくない。土地勘がない場所で困ったら周りの人に聞けばいい。システムではなく、人間の問題だ」
一方、スマホジャーナリストの石川温氏は「200万の数字は『200万人が音声通話やデータ通信をできなかった』という数ではない」とコメント。
「今回ドコモは『200万件の位置情報がとれなくなった』と説明していて『200万人が音声通話、データ通信をできなくなった』とは言っていない。おそらく200万以上のユーザーが使えなくなったのではないか。なかなか具体的に言えないところで、ドコモ自体も数は分かっていないと思うが、きっと200万以上の人が困っていただろう」
また、今回の障害では、通話や通信だけでなくQR決済などにも影響が及んだ。一部のタクシー会社ではオンライン決済ができず、現金のみの対応になった。これに石川氏は「タクシーに乗せられた端末は位置情報を持っていて、それを常にサーバーにあげている」と説明。
「今回はネットワークの工事をしているときにトラブルがあった。古い設備から新しい設備に切り替えようとしたが、新しい設備でうまくいかなかった経緯があって、古い設備に戻すタイミングで、街中にあるタクシーの決済端末やIoT機器から大量に通信が発生した。約20万台のIoT機器がサーバーにあげた位置情報によって、どんどんネットワークが混雑して、ドコモユーザーのデータ通信や音声通話に影響が出た。家にいてWi-Fi環境があれば問題なかったかもしれないが、外にいる人は非常に困ったと思う」
さらに、ドコモが復旧を発表した後、再び通信障害が起こった理由について、石川氏はこう解説する。
「通信障害が発生し始めたのが午後5時頃。ドコモは午後5時37分にいったん全ての回線に制限をかけた。これを2時間半かけて徐々にコントロールを解除していって、午後7時57分に完全に解除した。これでドコモは『完全復旧した』と発表したが、メディアがそれをアナウンスした途端、ユーザーが一斉にデータ通信や音声通話をし始めた。それで再度混雑が始まって、朝方まで障害が続いた」
「今回、ドコモのネットワークの工事は、実際14日の午前0時からスタートしている。深夜からスタートしたにも関わらず、なぜ長引いてしまったのかという問題が一つ。あと、対応の台数で言うと『20万台を工事で動かした』と言っていた。おそらくドコモとしては、それ以上のIoT回線があると思う。本来であれば、一時的にそうしたサービスをすべて停止して、その間に移行ができれば一番いいが、やはりタクシーの決済端末や自動販売機の回線など、24時間稼働しているものに対して、回線を切ることは、なかなかやれないのだと思う」
ドコモのアナウンス方法に問題はなかったのだろうか。石川氏は「ドコモはSNS(の活用)も頑張っている」と評価し、「ただ、今回はあまりにも早く『復旧した』と言ってしまった。それが第2のトラブルを起こした部分もある。ネットワークが回復したときの広報の仕方は、これから研究する必要があるだろう」と述べた。
実際に障害の影響を受けたという実業家のハヤカワ五味氏も、復旧のアナウンスについて「腑に落ちなかった」と苦言。
「ahamoというドコモ系列の格安SIMを使っている。私の場合は、昨日(14日)の20時から23時くらいまで、3G含めて一切通信ができなかった。ネットに繋がらないからどういった状態か分からないし、電話もできないし、何もできない状態。その日、私は仕事の都合で鎌倉にいた。無料・有料問わず、Wi-Fiがどこにあるか分からない、自分の知らない土地で通信ができなくて、けっこう大変だった」
ハヤカワ氏は「障害自体はあっていい」とした上で「最初にドコモの『復旧した』という発表があった時間も、そのとき私の携帯は一切復旧していなかった。『これはどういうこと?』って思った。一番それが腑に落ちなかったし、ドコモが謝罪している内容と実態の乖離が気になる」と疑問を呈した。
ハヤカワ氏の疑問に、タレントでソフトウェアエンジニアの池澤あやか氏は「システム移行はかなり難しい」と、技術者として難易度に言及。
「事前にテスト環境でテストしていたり、手動でも確認していると思う。移行の手順も念入りに確認しているはず。でも、新しい本番環境はテスト環境と違う部分もあって、移行したときに予期せぬトラブルが起こる。これを完全に防ぐとなるとけっこう難しい。後戻りできるが、その切り返しも普段やっていないオペレーションになるので、何かしらのミスが発生しやすい。大量かつ一斉にアクセスされるなどの外的要因も発生する。予期してないものに対応しなければいけない難しさがある」
また、今回の障害に池澤氏は「ドコモだけの話ではないと思う」とコメント。
「システムも最近は複合化、複雑化している。トラブルを起こさないことが逆に難しい。例えばAWS(※Amazon Web Services)というクラウドコンピューティングサービスがあるが、AWSで何かトラブルがあると、それを使っているあらゆるWebサービスが止まる。最近は外部決済サービスも他社のサーバー会社に任せているケースもある。システムトラブルはあるものとして生活しなければいけない」
今や使えて当たり前になった携帯電話やインターネットのインフラ。何かしらのトラブルが起きるものとして、消費者の意識も変える必要があるのかもしれない。(『ABEMA Prime』より)
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