「駅アナウンスを聞いて走ってきた人から足を触られた」「上司の言葉を信じてしまいレイプ被害に」…障害を抱える女性たちが訴える性被害
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 駅のホームでよく耳にする、車椅子ユーザーの乗降を知らせる業務連絡のアナウンス。しかし、この情報を痴漢行為に悪用する者もいるという。

【映像】駅アナウンスを悪用...障害者に性暴力"人を信じやすい"発達障害でレイプ被害も

 「隣の車両にいらっしゃった方で、酔っ払っていたからかもしれないが、こちらに走ってきて、“ここだ、ここだ、この人だ”と言って私の手を持ち上げてみたり、“どれだけ歩けないのか”と言って足の先を触られたことがあった」。そう話すのは、電動車椅子を利用している石川さんだ。

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 駅を出た後も付きまとわれたことがある。「電車を降りてからもずっと付いてこられたことがあった。明るいアーケードの方に向かったが、それでも付いてきてしまった。走って逃げるということもできず、凄く困った」。コンビニのトイレに避難すると、男性は諦めたのか、去っていったという。
 
 石川さんは、やはり乗車や降車についてのアナウンスが背景にあると考えている。「何号車に乗るかも言われてしまうので、“同じ駅だから、家まで送っていってあげるよ。困るでしょ、危ないでしょ”と言われ、家まで付いて来られてしまったこともあった。困って家の前を通りすぎて、近所のスーパーのトイレに入って逃げたという経験もある。その人は親切心だったのかもしれないが、家まで来てもらうと困ってしまう」。

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 NPO法人「DPI日本会議」の調査(2021年)によれば、車椅子ユーザーが「“ここだ!”とスーツ姿の男性が乗ってきた。下着の色を聞かれ、ひわいなことを繰り返された」という事例、また、“いた!手伝ってあげようと思って走ってきたよ”と言いながら“かわいそうに”と繰り返し足をさすられた」といった報告が寄せられているという。

 こうした被害を受け、JR東日本もアナウンスをしない対応を検討しているという。「私はアナウンスをしない鉄道会社の沿線に引っ越した。また、アナウンスするかどうか聞かれる路線もあるが、“しないで下さい”と言った場合、降車駅でちゃんとスロープを出してもらえるのか不安になることもある。アナウンスを廃止するのであれば、システムを整備してほしい」。

 同じ「DPI日本会議」の2012年の調査では、87人の障害のある女性のうち、31人が何らかの性的被害経験があると回答したという。

 石川さんは「知人からの話も踏まえると、比率としてはもっと多いのではないか。つまり、障害者ゆえに何とも微妙な痴漢行為があるということだ。視覚障害者の場合、1人で白杖を持ってホームを歩いていると、“危ないから案内してあげるよ”と腕を掴まれ、肘で胸をツンツンされたり、“支えてあげる”と言っていきなり腰に手を回されてお尻を触られたりする。問題は、それが偶然なのかどうか判断がつきにくいので、“やめて下さい”とも言いづらい。仮にそれらの全てが痴漢行為だったとすれば、さらに数字は大きくなると思う」と指摘する。

 「高齢者の方に席を譲るとき、声を掛けて断られたら恥ずかしいとか、傷ついてしまう方も多い。それと同じだが、困っていそうな人を見かけたら声を掛けるのは、人と人の関係では当たり前だと思うし、聞いていただけるのは有り難い。そこは“何か手伝うことはありますか”と言ってもらえれば、手伝うことがあれば“お願いします”と答えられる。ただ、電車に乗っている間はあまり困ることはないので、“今は結構です。ありがとうございます”と言われても、気にしないでほしい」。

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 障害者の性暴力やDV被害について調査・研究をしている東洋大学社会学部の岩田千亜紀助教は「性被害というのは誰もいない密室、あるいは夜に起きると思われている方もいるかもしれないが、家庭内や病院でも非常に多くの被害が報告されているし、最近はSNSなども含め、いろんなところで起こっている。また、多くの方が障害者の方が狙われること自体をご存知ないと思う。そういった方がいても気にされない。やはり障害を抱えている方の場合、走って逃げるといったことが難しい場合が多いし、中には声を出せない障害を持った方もいる。そのような、抵抗できない、逃げられない、声を上げられないという人をターゲットにした加害行為が存在しているということだ」と話す。

 「トイレ介助や入浴介助が必要な障害のある方もいらっしゃるが、ヘルパーさんの人手が足りないということで、男性が担当することもある。そういう状況に対し、嫌だと思っても、サービスが受けられなくなるのではないかという心配から相談ができないという状態になってしまうケースもある。やはり電車内はもちろん、周囲の方には“困っているのかな”ということを気にしていただきたい。もちろん、石川さんがおっしゃったように、声を掛けられてびっくりすることもあると思うし、勘違いされてしまうこともある。それでも、周りが気にしているというだけで加害行為はしにくくなる。電車に関しても、アナウンスをなくせばいいというだけではなく、周囲が痴漢行為は絶対に許されないことだという意識を持つことが必要だ」。

■嫌なことでも断りづらいと感じることが多く…

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 こうした性的被害に遭うのは身体障害を抱えた女性だけではない。心の病気や、発達障害などの特性のある女性もまた、被害に遭いやすいとされている。ADHDとアスペルガー症候群を抱えているハマダさんは19歳の時、一回り以上も年上の上司の男性からレイプ被害を受けた。

 一緒に外出した際、「家に忘れ物をしたため付いてきて欲しい」と言われ、断ったものの、「書類を取るだけだから何もしない。心配しなくていいよ」との言葉を信じてしまった。すると男性は「もう家に入ったんだし、いいよね」と、ハマダさんを押し倒したのだという。「怖くて固まってしまって、途中からは拒絶すらできなくなってしまった」。

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 相手の言葉を素直に受け止めやすく、信じやすい傾向にあるハマダさん。男性のことも「色々とお世話をしてくれていたので、信頼していた部分もあった。まだ19歳の大学生だったので、悪い大人がいるということ自体、考えもしなかった。難しい」と振り返る。嫌なことでも断りづらいと感じることが多く、その後も別の知人からレイプ未遂の被害に遭ってしまったという。

 他の性暴力被害同様、ハマダさんもまた、声を挙げたり、問題視したりすることによる2次被害や、友達や親から怒られてしまうのではないか、といった気持ちの方が大きく、誰にも相談でいない時期が続いた。それでも今回、あえて顔を出して生出演したことについて、次のように語った。

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 「“1階で待ってる、繁華街の近くだから、その辺で待っている”と、もうちょっと強く言えれば良かったな、玄関先でちょっと様子がおかしかったとき、助けを呼べたんじゃないかと思ってしまう。でも、“近所迷惑だから早く中に入れ”と、急に大きな声で怒鳴られるとパニックになってしまって、そのまま家の中に入ってしまった。そうやって自分を責める気持ちが強かったこともあったし、彼氏も含め人とのトラブルの時に誤解をされることも多く、すごい悩んでいた。

 しかし最近はMeToo運動などもある。体験を話すことで自分のことを知ってもらったり、PTSDの改善にもつながればと思い、取材を受けてみようという気持ちになった。顔出しされる方は少ないので、どういう状態で苦しんでいるのかを知ってもらえたらいいなと思って決めた。自分の身は自分で守るしかないので、夜に一人で出歩かないなど、基本的なことは気をつけているが、声をあげることで社会が変わっていけばいいと思う。1回、2回と拒否してダメでも、3回、4回と、何度でも拒否していいんだということは女性の皆さんに分かってもらえたら嬉しいし、“嫌よ嫌よも好きのうち”ということはないんだと、男性には知ってもらいたい」。

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 前出の岩田氏は「発達障害の方には、人の言ったことをそのまま信じたり、裏の意味を勘ぐったりしないといったところがある。また、小さい頃にニコニコしていなさいとか、嫌って言っちゃダメよと言われたことをそのまま信じていて、大きくなっても強く言えないということもある。そういう部分を悪用し、犯罪に及ぶケースが多い」と説明。

 「ハマダさんは本当にお辛い気持ちで出演して頂いていると思うし、自分を責めてしまうとおっしゃっていたが、被害者は全く悪くない。悪いのは加害者だということは言いたい。また、裁判では、いつどこでどういうことがあったのかを正確に表現することが求められたり、証拠を求められたりする。しかし発達障害に限らず、やはりパニックになってしまったり、恐怖感で言えなかったりして、証言に信頼性・信憑性がないとみなされ、起訴さえされないということもある。ハマダさんが“自衛しかできない”とおっしゃったのは、まさにその点だ。今年9月、法務大臣が性犯罪に関する法制審議会を立ち上げ、刑法をどう変えていくかの審議が始まるところだが、障害者の方に対する聴取には難しさがあるということで、そこに配慮した形も試行段階だが始まっている。今の刑法を変えなければいけないということで、ぜひ支援へつなげていければと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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