19日、衆院選が公示を迎え、選挙戦に突入した。投開票は今月31日に行われ、解散から投開票まで17日間の短期決戦となる。
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依然として“投票率”の低さの課題が残されたままになっている日本の選挙。原因の根幹はどこにあるのだろうか。公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「問題は若者だけではない」と話す。
「日本の低投票率はたびたび指摘されるが、問題は若者だけではない。今や国政選挙で40代でも50%の投票率を割り込むようになり、地方選挙でも増えている。また総務省が出している衆院選投票率の推移データを見ると、2017年の投票率は20代で33.85%だった。ここで1970年代にさかのぼって見てみると、当時の20代も全体平均よりは低い投票率だったことが分かる。にも関わらず、当時の20代の投票率は60%を上回る。今の20代と比べて倍以上の投票率。ここに問題があるのではないか」
「選挙制度の違いから一概に諸外国との比較はできないが、日本は投票へ行かなくても罰則はない。一方で、投票率が高い国には、投票に行かなかったことによる罰金や公民権の部分的停止などがあることもある。罰則があって投票率が高い国と、罰則はないけれど投票率が低い国、どちらがいいのか。必ずしも明確ではない。投票率を上げたいからといって、直ちに罰則制度を導入すればいいのかというと、それもちょっと違うでしょう。世界と比べるよりも、『投票に行かない』が“当たり前”になりつつある中、『投票に行く』を基本的な前提として作られていることを思い出しつつ、日本の選挙制度とその前提や環境を見直す必要がある」
1970年代、全体で約70%を記録した国政選挙の投票率。2017年は全体で53.68%と、下げ止まりが続いている。その上で、西田氏は投票率を上げるために「政治教育の見直し」と「被選挙権の引き下げ」に言及する。
「まずは、学校の政治教育の課題だ。体質改善という考え方に近く、慎重にだが、教育を受ける段階で政治的主体を育む必要があることにも注目すべきだ。中立であることは大事だが、そこに今は重きが置かれすぎているのではないか。もっと現実の政治問題や価値に関する問題を学校で議論したり、それぞれが好きな政党を考えたり、そういったことを慎重に教育の中で取り入れるべきではないか。推しのアイドルを作るように、推しの政治家や政党があればきっと投票にも行くだろう。こうした積極的に政治に関心を持つような工夫が十分されていない。今の若者たちは真面目だから『政治が分からないのに投票に行っていいのか?』と考えてしまう人もいる。『自分はこの政治家が好き』『この政党が好きだ』と考える中で、政策の内容を知って『おかしいな?』と思えばそこで態度を変えればよいのではないか」
「本来、国会議員は全国民の代表だ。だが、同世代の議員がいれば、どのような活動をしているのか気になったり、応援したくなったりするのではないか。日本では衆議院議員は満25歳以上、参議院議員は満30歳以上でないと立候補できない。本当にそうあるべきか、また投票率の問題を真剣に考えるなら、投票年齢と立候補できる年齢を統一してもよいかもしれない」
今回の衆院選について、会見で「未来選択選挙」と述べた岸田総理。選挙の勝敗には、政策が大きく関わってくるが、西田氏は「有権者には政党の主張の違いがわかりにくくなっている。与野党がそれぞれの政策のロードマップを示し、他党との違いを明確に説明するべきだ」と語る。
「たとえば『分配』『積極財政』といった言葉は、最近では多くの政党もキーワードに掲げている。とにかく競争とコスト削減ありきだったこれまでと比べると良い傾向だが、政策が似てきている。主張が似てくると、国民がどの政党を選ぶべきか分からなくなってしまう。財源はどのように確保するのか。国債を『財源にしていい』と考えている政党とそうではない政党もあるはずだ。コロナ対策なども、掲げた政策をどのように実現するのか。そのほかにも、気候変動問題、LGBTQ+といった多様性への考え方、選択的夫婦別姓など、政党間の違いをよりはっきり示し、国民に届ける必要がある」
今回の選挙戦では約1050人(※18日夜の時点)が立候補していて、各政党、各候補が全国465の議席を争う。(『ABEMAヒルズ』より)
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