ネバーギブアップの精神が、3人の将棋に力を与え続けた。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の予選Aリーグ第3試合、チーム伊藤とチーム山根の対戦が10月23日に放送され、チーム伊藤がスコア5-3で競り勝った。これでチーム伊藤は2勝0敗、得失点差+3と文句なしの1位通過。激戦のリーグで苦しい戦いも多かった中、とにかく最後まで諦めないという姿勢を3人が貫き、決勝トーナメントへのきっぷをもぎ取った。
【動画】予選を1位で突破したチーム伊藤
数字だけ見れば堂々の1位通過だが、穏やかな戦いは1つもなかった。チームリーダーの伊藤沙恵女流三段は第1局から登場。チーム山根の和田あき女流初段に苦しみながらも、なんとか振り切り、この試合初勝利。個人戦優勝者として勢いをつけようとした。ところが再戦となった第4局では、途中から大きく崩れ完敗。「失礼しました。将棋もひどいし、いやー、ちょっと…申し訳ない」と反省しながら仲間のもとに帰ってきた。それでもなんとか気持ちを切り替えて戦った第7局の塚田恵梨花女流初段との一局は、またも苦戦とはしながらもぎりぎりで勝ちを拾い、この試合2勝目。「この内容では(フィッシャーが)得意とはとても言えないですね」と苦笑いが続いたが、それでも白星を確実に持ち帰る底力を発揮した。
チーム最年少の石本さくら女流二段も、相手のリーダー山根ことみ女流二段との相振り飛車の将棋に、悩ましい局面が続いた。第3局でぶつかり、石本女流二段の三間飛車、山根女流二段の向かい飛車となると、我慢比べのような展開から抜け出され132手で敗戦。その後、会議室で室谷由紀女流三段に「いや、もう、ちょっと山根さんと当たるの、ちょっと嫌です。相振り飛車、ちょっとしんどい…」とこぼすなど、苦手意識まで芽生えていたが、第5局でなんと再戦。なんとか接戦には持ち込んだものの、ここでも競り負け2連敗。「先輩2人になんとか助けていただいた。自分としては反省点が多かったですね」と振り返った。
苦闘が続いた2人を救ったのが、個人3連勝を果たした室谷女流三段だ。チーム里見との戦いでは思うような将棋も指せず、結果も出なかったが、この試合では第2局、第6局、第8局と、全て違う相手と戦い勝利。勝勢になってからも、持ち時間が少ないフィッシャールールで落とし穴にはまらないように、最後まで気を抜かずに確実に勝ちに近づくような慎重な指し回し。「3局指したんですけど、戦型もそれぞれで、とても充実した一日を過ごすことができました。チーム里見戦では、みなさんにだいぶ助けていただいたので、今回は少し貢献できたかなと思います」と、ホッとした笑みがこぼれた。
個人戦優勝の伊藤女流三段に、タイトル挑戦経験もある室谷女流三段、さらに勢いのある石本女流二段と、非常にバランスの取れているチーム伊藤。ただ、この超早指しでは残り数秒でいかに冷静で、辛抱強く指せるかも勝敗の大きな分かれ目となる。チーム名「ネバギバ」。ネバーギブアップの精神は、この大会に最も求められるものかもしれない。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)