今月22日から3日間行われた、フェムテックの展示会「Femtech Fes! 2021」。27カ国から157社が参加し、フェムテック市場としては世界最大級の展示会になった。
息を吹きかけるだけで生理の周期がわかるという機械のほか、経血を吸収しやすい特殊な布製の素材で作られる生理用ショーツ、更年期の女性向けに手首の温度を調節するブレスレット型の機械、授乳期にハンズフリーで搾乳できる電動ブラジャー、出産・加齢で緩みがちな骨盤底筋をトレーニングするデバイスなど、女性の悩みに寄り添った商品が多く並んだ。
フェムテック製品のメインターゲットは、若年層から高齢層までの幅広い年代の「女性」だ。世界の人口半分を対象としたこの市場は、急激な拡大を見せている。
フェムテック自体は、2016年ころから始まった新興市場。2019年には世界全体の市場規模が820億円で、2025年には5.5兆円まで拡大すると予測されている。投資額も増え続け、2019年には640億円に達している。
今回のイベントにオンラインで参加した、フェムテックに詳しいアメリカの投資家、ブリタニー・バレトさんも、市場の急成長を肌で感じているそうで、「私たちは将来の市場規模については非常に大きなものであると感じている。私たちの調査では、現在では800以上のフェムテックスタートアップができていて、これは始まりにすぎない。毎年倍になるスピードで増えていくと思われる」と話す。
また、日本国内で大きな経済効果を生む可能性もある。経済産業省によると、フェムテックが普及した場合、「PMS(=月経前症候群)」や生理への正しい知識と対策が広まり、これまで適切な治療など行ってこなかった女性が60%から30%に減少。生理に関連した症状に伴うパフォーマンス低下の損失額、約4900億円が半減すると仮定される。
さらに、不妊治療の負担も軽減され、仕事と治療の両立を諦める女性が30%から50%減少するとも考えられ、出生率が1万2000人~1万7000人増加するという見立ても。
そして、今まであまり焦点が当てられてこなかった「更年期分野」では、症状への知識が広がることで治療を受ける人が30%増え、退職や勤務形態を変更する女性が半減する可能性がある。
「生理」「妊娠、不妊」「更年期」。こうした女性の悩みがフェムテックにより解決された場合、2025年の経済効果はおよそ2兆円と推計されているのだ。
学校や会社で話題にあがらず、なんとなくタブー視されてきた「女性の悩み」。Femtech Fes! 2021に参加した女性たちに話を聞くと、イベントを通じて知識を得たことで「自分の体についてもっと早く知っておきたかった」という声が聞かれた。
「自分の体のことなのに知らないことが多いし。ハードルも下がってきて、発言ができるようになってきたので、そういう人が集まっているところで知りたいというのがあったので。それで興味がわいたし、いろいろ広めていきたいのもある」
「茶化された空気感っていうのを思春期で体感してたから、みんなちょっと話しづらい。根底にあるのは体のことなので、“体のことを笑わない”という風潮が広がれば、真剣にみんなと話し合える」
今回の展示会の総合プロデューサーを務め、日本にフェムテックを広める会社「fermata」のCCOを務める中村寛子氏は、女性の悩みが言語化できる社会への願いを口にする。
「生物学的女性の心身の課題というのは、今見えているのはまだ氷山の一角だと思っている。何かしらのモヤモヤを抱えている、言語化できてないのが現状かなと。女性特有の健康課題ということだが、今までタブー視される傾向が強く、話される機会がなかったからこそ、今注目を浴びていると思う。個々が自分の体を当たり前のようにケアできて、オーナーシップを持てる世界に進んでいくのかなと思っている」
一方で、大きな課題もある。日本では、医薬品を製造販売する事業者は薬機法という法律に基づき、厚労省などの承認を得る必要がある。しかし、薬機法や関連のルールでは「生理用品は白色で、使い捨て」など厳格な基準が定められていて、「吸水ショーツ」や「月経カップ」などのフェムテック製品は定義に当てはまらない。
結果として、「雑貨」として売るしかない現状。メーカーも具体的な効果や効能をうたうことができないため、広告が打ちにくいという。
法の規制の壁によって、必要な人に届きづらい。こうした問題を解決するため、自民党の議員連盟が今年3月に立ち上がった。普及のための法律の改善を目指していて、1年以内に解決する必要があるとしている。
この課題について、ノンフィクションライターの石戸諭氏は「人の身体や健康に関わるものに関して一定の規制をかけていくのは当然のことだ。疑似科学的な健康商品は常に出てくる。規制を緩めてなんでもかんでも市場に任せればいいというものでもない。フェムテックに関しては今後、確実に市場が拡大していくのではないか。言い換えれば、フェムテック市場からも疑似科学的な商品が出ていくリスクは当然ながらあるということ。有象無象の商品が出ることは市場が成熟していく過程で避けられないものだと備えながら、いいものを残していく。理不尽な規制は緩和、合理的な理由による規制は強化して、市場が成熟していってほしい」との見方を示した。(『ABEMAヒルズ』より)
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