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 10・30福岡国際センターで、プロレスリング・ノア秋のビッグマッチ「LEC クリンぱっ! presents DEMOLITION STAGE 2021 in FUKUOKA」が行われた。

 GHCヘビー級とジュニアヘビー級の2大タイトルマッチが組まれた今大会。まず、GHCジュニアヘビー級タイトルマッチは、これまで4度防衛に成功し、長期政権の兆しを見せている王者HAYATAが、10・10大阪大会で原田大輔の挑戦を退けた後、自ら次期挑戦者に指名したNOSAWA論外と対戦。

 これまでの両者の対戦成績は、HAYATAの1敗2引き分け。一度も勝ったことがない論外に対し、HAYATAは苦手意識を払拭するかのように、ラフファイトという相手の土俵へと足を踏み入れていった。場外戦で論外が投げつけたパイプ椅子をキャッチすると、逆に論外の脳天に向けて振り下ろし流血させ、その傷口にナックルパンチを執拗に叩き込んでいく。いつものクールなHAYATAとは思えない攻撃だ。

 しかし、ラフな展開はやはり論外のほうが一枚上。再び場外戦に持ち込むと、本部席にあったチャンピオンベルトでHAYATAの額を殴りつけ、さらに脳天にイス攻撃。これによってHAYATAの額も割れ、今度は論外が傷口にパンチを連打。クロスフェースも額をかきむしりながら決めていく。

 流血戦の中、HAYATAのムーンサルトプレスをヒザの剣山で迎撃した論外は、超高校級ラ・マヒストラルや、レフェリーのブラインドを突いた急所攻撃からの首固めなど丸め込み技で勝負をかけるが、これをカウント2でしのいだHAYATAは、逆にレフェリーのブラインドを突き金的攻撃。そして2段式の顔面蹴りから、最後はムーンサルトプレスを完璧に決めて、3カウント。これまで一度も勝ったことがなかった論外を流血戦という相手の土俵で下し、GHCジュニアヘビー級5度目の防衛に成功した。

 試合直後、この日、“ジュニアの重鎮”日高郁人を空回弾で下した金剛ジュニアの亜烈破が、タダスケの先導でリングに登場。何も語らぬ謎のマスクマン亜烈破の代わりにタダスケが、「よう聞け、この亜烈破がお前のベルトに挑戦する! そこんとこ、よろしく」と、HAYATAに挑戦表明。

 これを受けて、大会終了後にノアが、11・13横浜武道館大会で、HAYATA vs亜烈破のGHCジュニアヘビー級タイトルマッチを正式発表。HAYATAの6度目の防衛戦は、今回とは打って変わり、大空中戦が展開されそうだ。 

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 そしてメインイベントは、10・10大阪大会で大激闘の末ついに“丸藤正道超え”を果たし、GHCヘビー級新王者となった中嶋勝彦が、田中将斗を相手に初防衛戦をおこなった。

 GHCジュニアタイトル戦と同様に、こちらも王者にとって挑戦者はこれまで一度勝ったことがない天敵。中嶋はこれまで田中と3度シングルで対戦し全敗。2連覇を達成した先の「N-1VICTORY 2021」でも唯一敗北を喫した相手であり、王者として超えなければならない壁だ。

 そんな天敵を相手に中嶋は、序盤から田中の右腕に攻撃を集中。腕を蹴り上げ、関節を極め、田中の強烈なエルボー、必殺のスライディングDが放たれる右腕を殺していく。しかし田中はその痛みに耐え、雪崩式ブレーンバスターから、スライディングD、そしてエプロンから場外へのスライディングDで反撃。

 そして試合時間が20分をすぎると、田中がスーパーフライや各種のスライディングDを完璧に決め、中嶋が強烈な蹴りからヴァーティカルスパイクを決めるなど、お互いのフィニッシャーを成功させるが、両者ともにカウント3直前でキックアウト。意地でもフォールは許さない。
 
 この激闘に終止符を打つため、田中は右ヒジのサポーターを外し、“生ヒジ”でスライディングDを叩き込もうとするが、これを阻止した中嶋が逆に切り札ダイヤモンドボムをマットに叩きつける。そして、なおも起き上がろうとする田中の顔面を蹴り上げたあと、ヴァーティカルスパイクを完璧に決め、3カウントを奪った。

 生まれ故郷の福岡でGHCヘビー級王座初防衛に成功し、田中将斗という高い壁を乗り越えた中嶋は、試合後マイクを握ると、10・10大阪大会に続き「俺がノアだ」と宣言。

 はたしてこの言葉の真意は、噂されるように“あの男”へ向けたものでもあるのか。不敵な笑みを浮かべる王者の次なる防衛戦に注目が集まる。

取材・文/堀江ガンツ
写真/プロレスリング・ノア

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