2年間のブランク、網膜剥離を克服して臨んだ復帰戦で相手の意識を根こそぎ刈り取る衝撃の一撃KO葬だった。フルスイングのフックに対戦相手が吹っ飛び、最後は目を完全に泳がせて立ったままダウンを宣告される劇的な幕切れに放送席も思わず絶句。「あぁ…目が飛んでる」「完全に意識が飛んでいる」など驚きの声が上がった。
10月30日に後楽園ホールで開催された「Krush.130」で、林勇汰(FLYSKY GYM)と水津空良(優弥道場)が対戦。1ラウンド中盤に豪打をまとめた林が、ラウンド終了間際に渾身の左フックで水津を失神KO。立ったままの対戦相手がスタンディングダウンを宣告され、グニャリと崩れ落ちるダウンシーンに戦慄が走った。
ともに再始動となった重要な一戦。兄である将多や健太の活躍のなか、網膜剥離の治療のため2年間のブランクを経て復帰戦に臨んだ林。一方、Krushではデビュー戦の引き分けを挟んで4連勝と好調だった水津も2021年に入って初の敗戦を喫するなど、この一戦にかける思いは強い。
オーソドックスの林とサウスポーの水津。序盤ローの蹴り合いから、水津がローブローを貰うアクシデントが。試合再開後も再び林の蹴りが水津の下腹部を捉えるなど、思うように噛み合わない立ち上がりだ。
それでも再開後、水津はヒザを放つなど攻めの姿勢を崩さない。両者真っ向からパンチを打ち合うアグレッシブな展開へ。水津がミドルを連続で放つと、林も負けじと得意とするパンチで応戦していく。
ラウンド中盤。リーチの差を克服すべく一気に距離を縮める林は、水津の跳びヒザ、高速のバックブローをかいくぐり、ロープ際でパンチの連打を浴びせる。さらに大きなモーションからの右フックを皮切りに左右のフックの連打をまとめると、水津は吹っ飛ぶような格好で転がりながらダウンを喫した。
すぐに立ち上がった水津だが、足もとはフラフラ…目は完全に泳いだ状態だ。なんとかダメージから復帰しようと歩きはじめるが、明らかに挙動がおかしい。目を強く見開いて再び試合に戻るが、林が再びパンチの連打を浴びせていく。
ラウンド終了まで残り15秒、林がロープ際でボディ、左フックと強いパンチをまとめると、ここで水津の脳がぐらり。危険を察知したレフェリーが割って入り、スタンディングダウンを宣告して試合を止めた。その後、リプレイでとどめを刺した左フックが映し出されると、ABEMAで解説を務めた石川直生が「あぁ…目が飛んでる」と林のパンチ力、衝撃の結末にしばし絶句した。
マイクを手にしてファンに語りかけた林は「押忍、応援ありがとうございました」と感謝を述べるとすぐに涙を浮かべて嗚咽。温かい拍手と歓声、少しの笑い声が漏れる中で「怪我で長い間できなかったんですが、勝ててよかったです。これから頑張っていくので応援よろしくお願いします」と言葉を絞り出し、深々と頭を下げた。なお、リングサイドにはセコンドを務めた兄・健太の姿が。リング上の弟・勇汰の姿に拍手を送る兄もまた、目に薄っすらと涙を浮かべていた。