繰り返し流される京王線車内、容疑者の映像…むしろ“承認欲求”を満たし、模倣犯を招くことになっていないか?
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 衆院選の開票作業が始まり、そして街ではハロウィーンまっただ中の31日夜に発生した京王線車内での刺傷事件。

【映像】京王線“刃物男”は模倣?誤情報や手口公開など報道の問題も

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 捜査関係者などによると、殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された服部恭太容疑者(24)は「人を殺して死刑になりたかった。2人殺せば死刑になると思った」と供述しているという。さらに走行する車内での犯行については「8月に起きた小田急線の事件を参考にして、乗客が逃げられない特急電車を狙った」と説明しているといい、新たな模倣犯の出現を懸念する声は少なくない。

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 テレビ朝日平石直之アナウンサーは「ニュース番組は得られた映像を元に作っていくことになるので、今回も乗客が走って逃げる映像と容疑者の映像がセットで報じられているが、こうした映像を長く流すことでの影響も考えなければならないのではないか、今の報じ方でいいのか、という疑問も湧いてくると思う」と問題提起。

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 犯罪心理学が専門の臨床心理士の中村大輔氏は「起こったばかりの事件で、情報が少ないので分からないことが多いが、“承認されたい”というのが伺える。あの髪の毛の色や服装、しかもハロウィーンの日に、ということで、“より目立つところで”、という動機もあったと思う。ただ、そうした場合でも、とにかく自分の影響力を社会に発信するために犯罪を選んでいるということが多く、“メディアに映りたい”というところまで考えていることは少ない」と話す。

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 「例えば京アニの事件の手口のように、簡単に入手できるものについては配慮した報じ方がいいと思うし、事件の凄惨さだけでなく、どうして起こったのかという背景を皆さんに知ってもらい、どうすれば犯罪を防げるのかに注目することが大事だと思う。また、犯罪加害者と関わってきた経験からは、あることないことを報じられたことで、再起できなくなったというケースもある」。

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 カンニング竹山は「なんでこんな事件をやったのか、メディアとしてもすぐ欲しいので、昼間のワイドショーでもワーッとやっちゃうし、面白おかしく騒ぐ人も出てくる。でも裁判になってみると実は違っていたということもある。秋葉原の通り魔事件もそうだったと思う。はじめこそ単純な話をバンバン出してしまうのではなく冷静に報じ、裁判などで出てくる本当の理由や環境についても報じていかないと、昨日、今日で出された情報がみんなにインプットされてしまう危険がある」とコメント。

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 国際社会文化学者・歌人のカン・ハンナ氏は、コンテンツが犯罪の引き金になるといった言説について「もちろんコンテンツに感情移入して犯罪を起こす人の課題もある。ただ、本当に今回の事件がコンテンツの影響なのか、というところにも目を向けるべきだし、グローバルの映像配信サービスが増える中、止めるのは難しいのではないか」とした上で、韓国では“承認されたい”という欲求が満たしにくい報道だと話す。

 「人を刺した後に余裕の表情で座っている映像は、忘れられないくらいの衝撃を受けた。韓国の場合、連続殺人など社会的に大きな事件は除いて、基本的には犯罪を起こした人の顔は隠し、名前も全ては公開しないということでやっている。容疑者が注目を集めたい、主人公になりたい、と思っていても、そうはならない報道の仕方になっていると思う。どこで犯行に使われた物を買ったのかなどを詳しく報じることが似たような犯罪を起きやすくする部分もあるし、もう少し規制があってもいいのではないか」。

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 さらに元NHKアナウンサーでジャーナリストの堀潤氏は「現段階で報じられている供述というのは、取り調べ中で上がってきた情報を整理して文章にしたものなので、細かなニュアンスを知ることはできない。一方で、事件直後には報じても、公判に入る頃に少し伝えるだけで終わってしまい、事件の全容が分からないまま、当初の記憶だけが人々の中に浮遊していく。しかし、こういう報道は卒業しなきゃいけない。司法の可視化の流れの中で、取り調べの映像を公判でも活用しようとしているが、裁判員に影響を与えるという理由から使われないこともあるという。その意味でも、公判の中で何を語っていくということこそ取材され、人々に共有されていくべきことではないか」と指摘。

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 そして「なぜバットマンのジョーカーを模倣したのか、もっとゆっくり彼に聞いてみたいと思う。2019年の映画『ジョーカー』について言えば、格差や貧困、社会における居場所のなさをテーマにしていたわけで、そこに自分を重ねたということだとしたら、彼の境遇はどうだったのか。今回の犯行を肯定する意図は全くないが、単にコンテンツを規制するのではなく、背景にある社会問題を改善しなければ犯罪は減っていかないと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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