第49回衆院選が31日に行われ、12日間(※公示日を含む)の短期戦が終わった。結果、国会を安定して運営できる「絶対安定多数」の261議席を自民党が単独で獲得した。
【映像】総額300億円超の「政党給付金」 国がチェックできない理由
翌日の東京株式市場日経平均株価は、取引開始直後から600円以上の値上がりを記録。一方、与野党で閣僚経験者など大物議員の落選が相次ぐなど、波乱の選挙となった。
今回の選挙の結果について、公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「政党ごとに見てみると、他党の力を借りなくても安定した国会運営ができる“絶対安定多数”を自民党がとった。全体的には自民党が及第点(※合格基準を満たしている点数)以上の成績だ」と評価。
「野党共闘がなかったら、もっと自公が勝っただろう。しかし、議席獲得という形では野党共闘の結果は出なかったと言わざるを得ない。立憲民主党と共産党それぞれの支持者が支援し合う関係になれていなかった。結果、自民党を支持せず、非共産党の受け皿として伸ばしたのは『維新の会』だった。維新が躍進したのは、与野党が揃って給付金や再分配を提言する中、改革をアピールし、分かりやすく岸田政権との対立軸を作って見せることができたからかもしれない」(西田亮介氏)
ニュース解説YouTuberで「The HEADLINE」編集長の石田健氏も「与党に関しては西田先生と同じ意見だ。激戦区で自公が勝ちきっている」と断言。
「一方で、野党共闘は振るわなかった。自民党に不満を持っている人たちの受け皿に野党共闘がなれなかったところも重要なポイントだ。反自民党の有権者にとって立憲民主党、共産党がうまくメッセージを出せず、『維新の会』の“改革”といったメッセージのように分かりやすい対立軸はなかった。大阪で実績ある維新の会が、国政に来たときに何ができるかといった若干の疑問はあるが、自民党との対立軸が明確に打ち出されたからこそ『自民党に不満はあるけれど、どこに入れていいかわからない』と思っていた有権者層に響いた」(石田健氏)
勝敗次第で与野党の勢力図が大きく変わると見られていた今回の選挙。これからの政権運営はどのように変化していくのだろうか。
「政権にとって、総選挙の洗礼を受けることが重要だった。菅政権ではできなかったが、きちんと国民に信を問うことができた。岸田政権は、今回“絶対安定多数”の261議席を自民党が単独で獲得した。自民党にとって合格点に近い一方、自民党の大物議員の落選が相次ぎ、記者団の取材に答えた岸田総理を見ても安心して任せられるというほどではないだろう。次の参議院選挙に向けて党内をまとめる必要もある。ただし選挙で主張してきた公約の中に消えているものがある。『健康危機管理庁の設置』や『所得倍増』だ。野党からも厳しい突っ込みが入るはずだ」(西田亮介氏)
「岸田総理は総裁選で『新しい資本主義』『再分配』を掲げていたが、これらがいつの間にか後退している。キーになっていた政策が消えている。今回の“野党共闘”でうまくいかなかった部分を、野党が軌道修正してくる可能性もある。党内をまとめるだけであれば安定して運営ができるが、野党の動向をどこまで見きれるか。はたして、岸田政権はやりきる力があるのか。西田先生はどう思うか」(石田健氏)
「今後内閣改造で刷新感を強化する可能性がある。岸田総理が『令和版所得倍増計画』や『新しい資本主義』と言っても、中身は何言っているのかサッパリわからないと思った人もいるはずだし、事実中身も乏しい。『デジタル田園都市国家構想』も地方創生と何が違うのか。以前、アベヒルでも『岸田政権は“策士の内閣”だ』と指摘した。批判と向き合い、党をまとめて次の参議院選挙も勝ちきることができれば、本格政権の道が見えてくる。第2次安倍政権と構造は似ている。まさに今が正念場だ」(西田亮介氏)
(『ABEMAヒルズ』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側