11月6日、5年ぶりに開催された『VTJ 2021』には、今だからこその明確なテーマがあった。“対世界”だ。

 緊急事態宣言が解除され、新型コロナウイルスの感染者数が減っている中、プロスポーツの世界も新たなフェイズに入ろうとしている。今大会では関係者の懸命な活動により、久々に外国人選手の招聘が可能に。メインイベントで21歳の修斗世界フライ級王者、平良達郎がチリのチャンピオンであるアルフレド・ムアイアドと対戦している。

 平良はTHEパラエストラ沖縄に所属し、デビュー以来9戦全勝。清水清隆、前田吉朗というベテランにも勝利。10連勝をかけたムアイアドとの初の国際戦は「日本で無敵の超新星は“世界”に通用するのか」という試金石だった。

 そういう重要な意味を持つ試合で、平良は期待以上と言っていい闘いぶりを見せた。強烈なボディブローをもらう場面もあったが、それは想定済み。左ハイキックの直後に右フックを放つ高速コンビネーションでムアイアドが崩れる。そこに右ストレートを打ち下ろし、すかさず首を取る。リアネイキッドチョークでムアイアドはタップ。1ラウンド4分12秒、鮮烈という言葉がふさわしい一本勝ちだ。

 外国人選手は頑丈でパワフルだと、選手の多くは言う。特にムアイアドは後半になるほど強さを発揮するタイプだと平良自身も分析していた。そんな相手に対して、1ラウンドでパンチを効かせてフィニッシュ。今後に大きな期待を抱かせる1勝だった。

「もともと世界で闘えるとは思ってます。今回の試合で自信が確信に変わったわけではないですけど、自信になりました」

 打撃から流れるように絞め技へ。修斗のコンセプトである“打・投・極”の向上を感じられたとも語った平良。

 目標は「UFCフライ級のベルト」。単にUFCに出るだけでなく、チャンピオンになることまで見据えている。インタビュースペースでは大晦日の大会に興味はあるかという質問もあったが、答えは「周りから行けと言われれば」。あくまで目標は世界最高峰だ。

「最短でUFCに出たいです」

 ムアイアド戦は、夢を現実にするための大きな一歩だった。やはりVTJを“今”やる意味があったのだ。

文/橋本宗洋