チーム一丸で戦うことの思いが、涙となって表に出た。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の予選Bリーグ第2試合、チーム西山とチーム加藤の対戦が11月6日に放送された。チーム西山の山口恵梨子女流二段は2局戦い、1勝1敗。チーム初戦となった開幕局で完敗しつつ、第6局ではタイトル経験者・加藤桃子女流三段に快勝。団体戦のプレッシャーと、仲間の優しさから「私の涙腺は緩んでます」と涙するシーンに、ファンも「えりりん最高！！」「いいものを見た」と称えることとなった。
山口女流二段は、その明るさと軽快なトークから、放送対局の聞き手、イベントの進行役、さらには自身のYouTubeチャンネルなどで人気となっている女流棋士。激しい攻めを特徴とする振り飛車党で「攻める大和撫子」という異名も持っている。チームリーダー西山朋佳女流三冠から、本人も予想外のドラフト指名を受けて今大会に参戦したが、大会前に収録したチーム動画でも、そのトーク力でチームを盛り上げていた。
ところが、いざチームの開幕戦でもある第1局を任されると「楽しく指します」と言ったものの表情は硬く、対局の時間が迫るにつれて「ちょっと緊張してきた」「手が震えてるんですよ…」と緊張がMAXに。すると18歳の新鋭・野原未蘭女流初段の奇策をまともにくらい、序盤で劣勢に。なんとか巻き返そうとしたものの挽回がきかずに敗れると「申し訳ない。本番は全然緊張が違います」とうなだれた。
完敗の直後、カラフルなタンバリンを手に待ち構えていた西山女流三冠、上田初美女流四段の様子に「陽気な気分になりました。ありがとうございます！」と明るく答えると、その後は仲間の戦いに勇気づけられた。直後の第2局、上田女流四段が相手のリーダー加藤女流三段を撃破すると「勝ったー！本当によかった。素晴らしい！」と大喜び。さらに第3局、第4局と西山女流三冠が連勝すると「かっこいいよー。チームメイトがかっこいいよー！」と、感極まった様子だった。
そして迎えた2度目の出番は第6局。棋力では格上の加藤女流三段との対戦となったが「練習したから、やっていたやつをやる。頑張る」と自らに言い聞かせると、加藤女流三段の居飛車に、中飛車からの穴熊で対抗。序盤、大きく持ち時間で離され苦戦かと思われたが、じっくりと耐えしのぎチャンスを待ち、加藤女流三段に焦りが見えたところで逆襲。132手で勝利した。監督を務めた藤井猛九段からも「途中からは絶妙な指し回しで涙が出そうです」と、その踏ん張りを絶賛した。
第1局の完敗から、仲間に勇気をもらって第6局での快勝に、本人もさらに目元が緩んだ。「藤井先生に『負けていいから』という風に言われて、すごく気が楽になりました。勝負どころで西山さんが連投で勝たれて、自分が負けた後も上田さんに助けてもらった。本当にチームメイトのおかげです」と振り返ると「1局指す度に泣きそうなんですよ、私。今、涙腺が壊れてるので」。また、チームメイトの元に戻り仲間たちから「感動しました！」と声をかけられると、ついに目から涙がこぼれ始めた。
スコア5-2でチームの勝利を収めた後にも山口女流二段は「チームメイトと戦うのは本当に幸せ。私の涙腺はずっと緩んでます。（涙が）止まらないので、これ以上しゃべると泣いちゃう」とコメント。普段は明るく、はっちゃけたキャラクターが印象的なだけに、ファンからは「えりりん泣いてるじゃん」といった驚きの声とともに「感動しました」「みんな涙」と、その熱い思いを称える声が大量に寄せられていた。
◆第2回女流ABEMAトーナメント 第1回は個人戦として開催され、第2回から団体戦に。ドラフト会議で6人のリーダー棋士が2人ずつ指名し、3人1組のチームを作る。各チームには監督棋士がつき、対局の合間にアドバイスをもらうことができる。3チームずつ2つのリーグに分かれ総当たり戦を行い、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。チームの対戦は予選、本戦通じて、5本先取の9本勝負で行われる。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
